サイバー脅威
CNAPPの成熟度は、今どの段階ですか?
複雑で管理が難しいクラウドセキュリティのポイントソリューションに代わり、クラウドネイティブ・アプリケーション・プロテクション・プラットフォーム(CNAPP)を選択する企業が増えています。自社が CNAPP 成熟度のどの段階にあるのかを把握し、その歩みを確認してみてください。
クラウドネイティブ・アプリケーション・プロテクション・プラットフォーム(CNAPP: Cloud-native Application Protection Platform)への移行は、多くの企業にとって一夜で完了するものではありません。それでも、クラウドセキュリティを強化する手段として、CNAPP導入に向けた取り組みを進める組織は着実に増えています。本稿では、その移行が進んでいる背景を整理するとともに、CNAPP成熟度の観点から、自社の現在地を見極めるためのシンプルなロードマップを紹介します。
長年にわたり、ポイントソリューションを組み合わせてクラウドセキュリティを維持してきた結果、分断されたダッシュボード、鳴り止まないアラート、そして視界の外に潜むリスクへの不安に、多くのセキュリティチームが疲弊しています。
調査機関Gartnerは、「多くのフォーチュン500企業が、サイロ化された複数ツールのセキュリティ構成から、クラウドネイティブ・アプリケーション・プロテクション・プラットフォーム(CNAPP)へと移行しつつある」と指摘しています。また、2025年6月には セキュリティ関連の調査機関KuppingerColeが、生成AIや機械学習の企業利用拡大により CNAPPの採用がさらに加速し、AIセキュリティポスチャ管理が重要な要素になっていくと述べています。
CNAPPは、クラウド環境の監視、レポーティング、脅威検知を単一のプラットフォームに統合し、リスクの可視性を高めると同時に、脅威や侵害への迅速な対応を可能にします。この統合による利点は明確ですが、CNAPPへの移行は単純な切り替え作業ではありません。組織ごとの出発点を踏まえた計画と準備が求められます。本稿では、CNAPP 成熟度を構成する4つの主要なステージを紹介し、現在の位置と、次に取るべき最も合理的なステップを明らかにします。
なぜCNAPPが重要なのか
現在、多くの組織は単一のクラウドプロバイダーに依存していません。オンプレミス基盤とパブリッククラウド、プライベートクラウドを組み合わせた、ハイブリッドおよびマルチクラウド環境の設計に取り組んでいます。この動きは単なる技術的な変化ではなく、俊敏性、回復力、そしてイノベーションを引き出すための戦略的な選択でもあります。
そのように多様で分散した環境は、構造が複雑になりやすく、セキュリティ確保が難しくなります。セキュリティチームにとって大きな課題の一つが、環境全体を横断した完全で統合された可視性を持てないことです。CNAPPは「すべてのクラウド」を単一のプラットフォームで可視化することで、セキュリティチームがクラウドリスクを評価し、優先順位を付け、対処する作業を大幅に容易にし、スケールとスピードの両立に向けて自動化を活用できるようにします。
包括的な可視性に加え、フル機能のCNAPPはクラウド資産に対するエンドツーエンドの保護を提供し、セキュリティプロセスを自動化するだけでなく、全体として統合的に制御します。統合プラットフォームを採用することで、セキュリティポリシーやコンプライアンス管理といった機能が整理され、クラウドセキュリティのスケーラビリティも高まります。理想的には、既存のインフラストラクチャと連携することで冗長性を回避し、コスト管理にも寄与します。
複雑なマルチクラウド環境におけるセキュリティに確信を持てるようになることで、組織はクラウドの俊敏性と拡張性を最大限に活用し、摩擦を最小限に抑えながらイノベーションを進め、AIの進展から得られる価値を着実に取り込めるようになります。
一方で、現時点においてCNAPP成熟度の最終段階に到達している組織は多くありません。多くの組織は、いまなおその道の途中に位置しています。
CNAPP 成熟度を評価する
ステージ1:サイロ化(SILOS)
ここ数年でCNAPPへの関心が高まっている一方、多くの組織はいまもこの段階にとどまり、クラウドセキュリティの要件ごとに複数のポイントツールを使い分けています。長年にわたりこれらのツールに投資してきた背景があり、扱いにくさはあっても、運用チームが使い方を理解しているという点では無理のない状況とも言えます。
一方で、リスク全体の状況やその変化を包括的に把握できない状態は、クラウドの複雑性が増すにつれて持続が難しくなります。統合が進まないままでは、セキュリティチームが対応に追われて疲弊するか、組織全体のセキュリティ態勢が許容できない水準まで低下する可能性があります。
ステージ2:部分的な統合(PARTIAL INTEGRATION)
ツールのサイロ化から抜け出す最初の取り組みは、既存のセキュリティソリューション同士を部分的に連携させるための、個別に設計された統合作業から始まることが一般的です。社内リソースの状況や外部支援の有無によっては、時間やコストが大きくかかる場合もあります。一定の統合がもたらす効果は確かにありますが、この段階ではクラウド環境全体にわたる可視性には抜けが残り、リスクの全体像は依然として不完全なままです。
ステージ3:統合ダッシュボード(UNIFIED DASHBOARDS)
部分的な統合の次の段階では、連携している複数のツールが検出した情報を、単一の画面に集約して把握できるようになります。これにより分析のスピードは大きく向上し、脆弱性や脅威に対する手動での優先順位付けも可能になります。ただし、自動化が十分でないため、セキュリティチームの作業負荷は依然として高く、対応スピードにも限界があります。
ステージ4:CNAPP
CNAPPは、統合と可視性によって得られた成果を土台に、さらに一段高いレベルへ引き上げます。プラットフォームとして設計されているため、必要なツールやセキュリティ機能があらかじめ組み込まれており、クラウド環境全体を網羅する真に包括的で完全に統合された視点を提供します。これによりツールの乱立はほぼ解消され、インテリジェンスと自動化を活用して、より迅速かつ精度の高い優先順位付けが可能になり、先回りしたセキュリティ対策の実装につながります。
同様に重要なのが、CNAPPが組織内のサイロを解消する点です。セキュリティ、DevOps、クラウド運用の各チームがリスクを共通の視点で把握できるようになり、連携が深まり、意思決定の迅速化と対応の整合性が促進されます。
CNAPP 分野をリードするトレンドマイクロ
トレンドマイクロは、長年にわたりサイバーセキュリティにおけるプラットフォームアプローチを提唱してきました。Gartner、IDC、Forresterはいずれも、Trend Vision One™ Cloud Security を、プロアクティブなクラウドセキュリティを実現する CNAPPの代表的なソリューションとして評価しています。AIを活用した脅威予測とリアルタイムな対応力により、CNAPPの可能性を最大限に引き出し、進化し続けるリスクに先回りできるようセキュリティチームを支援しています。
CNAPP市場の価値は 2024 年に 34 億米ドルを超え、今後も成長が続くと見込まれています。市場の拡大とともにクラウドセキュリティの要件が変化する中で、トレンドマイクロは、企業や組織がCNAPP成熟度の歩みを着実に進め、クラウドセキュリティに対して確かな信頼を持てる段階へ到達できるよう支援し続けます。
包括的かつ先回りしたクラウドセキュリティが、組織にもたらす価値をぜひご確認ください。Trend Vision One™ Cloud Security 製品 が、その実現を支えます。
参考記事:
What’s your CNAPP maturity?
By: Trend Micro
翻訳:与那城 務(Platform Marketing, Trend Micro™ Research)