SD-WAN(ソフトウェア定義広域ネットワーク)とは?

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SD-WANは、ソフトウェアを用いてトラフィックルートをリアルタイムに管理するネットワークアーキテクチャです。

昨今の法人組織は単一の拠点に留まらず、広範囲に事業を展開しています。ハイブリッドワークの導入や事業拡大に伴い、組織の「職場」はクラウドのように境界のないものへと進化しています。

従業員と本社の距離に関わらず、組織には安定した接続の維持が求められます。さらに、運用負荷を最小限に抑えることも不可欠です。これを実現するには、ネットワークシステム自体がクラウドのように柔軟な存在である必要があります。

SD-WANを活用することで、拠点間接続を最適化できます。従来のWAN(広域ネットワーク)はハードウェアによる制約がありましたが、SD-WANは高い柔軟性を提供し、硬直化したシステムに代わる俊敏で費用対効果の高い手段となります。IT管理者は経路選択を自動化し、より重要な課題に注力できるようになります。

SD-WANは従来のWANと同様、複数拠点のデバイスやサーバ、データセンターを接続します。大きく異なる点は、ポリシーに基づきデータの最適ルートを動的に決定できる点です。パフォーマンス向上やビジネスの優先順位に合わせ、ミリ秒単位で最適な経路へ切り替えが可能です。

SD-WANを例えるなら、センサを備えたスマートな信号機です。従来の信号機は設定された時間通りに動作するだけでしたが、センサと組み合わせることで、交差点の交通量を監視し、流れを動的に調整できます。リアルタイムの判断により、交通はスムーズになり、管理の負担も軽減されます。

SD-WANの仕組み

SD-WANは、制御レイヤとハードウェアレイヤを分離します。各拠点のルータを手動設定する代わりに、ソフトウェア定義のポリシーに基づいてトラフィックを制御します。混雑状況や遅延などのリアルタイムな状況に基づき、インターネット、MPLS、LTEなどから最適な経路を選択します。

SD-WANの真価は、従来手動で行っていた意思決定を自動化できる点にあります。これにより設定ミスを削減し、迅速な問題解決を実現することで、情報システム部門の負担を大幅に軽減します。

SD-WAN アーキテクチャの概要

一般的なSD-WANは、主に4つのコンポーネントで構成されます。

  1. ブランチ:エントリポイントとエンドポイントを含むこれらのデバイスは、ネットワーク間のブリッジとして機能し、ブランチオフィス、データセンター、またはクラウドプラットフォームに設置されます

  2. データセンター:ITチームが複数拠点にわたるポリシーを定義・管理する中核拠点です。

  3. オーケストレーター/管理:構成、ポリシー設定、分析を一元化するITチーム向けの管理コンソールです。

  4. 基盤ネットワーク:「WANトランスポート」とも呼ばれ、MPLSやインターネット、LTE/5Gなどを接続する暗号化トンネルです。SD-WANでは、すべてのリンクが抽象化され、単一の仮想ネットワークとして扱われます。

すべてをまとめると、エッジデバイスがトラフィックを検出し、最適なWANリンクで送信します。コントローラは、特定の通信をブロードバンド経由にするなどのポリシー遵守を確認し、オーケストレータはパフォーマンスを監視して可視性を提供します。通信は暗号化され、多くの場合、データセンターを経由せず直接クラウドへ安全にルーティングされます。

SD-WANとは?

SD-WANが機能する仕組み

SD-WANはリアルタイムにトラフィックを監視し、パスを自動調整してパフォーマンスを最適化します。通信速度や信頼性が低下した際も、ユーザ体験を損なうことなく、また管理者の手を介さずにトラフィックを自動的に再ルーティングします。

これは、ビデオ会議やクラウドサービスなど、低遅延が求められる重要アプリに極めて有効です。高度なアルゴリズムがジッタやパケットロス、帯域幅を考慮してルートを決定し、通信を維持するための最適な経路を自動的に特定します。

この自動化により、ITチームは煩雑な個別管理から解放され、高いサービス品質を維持できます。また、拠点間で負荷の高いアプリケーションやサービスを安定して運用することが可能になります。

業界別のSD-WAN活用事例

SD-WANの用途は多岐にわたり、小売業から教育機関まで、あらゆる業界において重要な役割を果たしています。

複数拠点の運用支援

多数の店舗や支店を持つ小売業や金融機関は、SD-WANによる集中管理を通じて、コスト削減と新規拠点の迅速な展開を実現できます。

導入スピードとポリシーの統一が求められる成長企業にとって、SD-WANは不可欠です。現地での複雑な設定作業を排除し、業務を止めることなく迅速に拠点を立ち上げることが可能です。

リモートワークおよびハイブリッドワークの推進

ハイブリッドクラウドセキュリティニーズに応えるSD-WANは、場所を問わずアプリケーションへの安全かつ一貫したアクセスを可能にします。

リモートワーカーはアプリ認識ルーティングと高度なセキュリティの恩恵を享受でき、ITスタッフは全ユーザのトラフィックを可視化・制御できます。これは分散した労働環境の安全性と利便性を両立させる鍵となります。

教育現場のデジタル化支援

教育機関では、デジタル教室やリモート試験の安全な運用のために安定した通信環境が不可欠です。SD-WANは、学習用アプリの優先順位付けや、広大なキャンパス内での帯域最適化を支援します。

ネイティブなセキュリティ機能により、学生データの保護や有害コンテンツの遮断を実現します。デジタル学習を推進する組織にとって、複雑なネットワーク下でも高い信頼性と容易な導入を提供します。

医療ネットワークの高度化

医療機関には、電子カルテや遠隔医療サービスへの迅速かつ安全なアクセスが求められます。SD-WANは暗号化と高可用性を提供し、医療従事者がリアルタイムで患者情報にアクセスできる環境を支えます。

ネットワークセグメンテーションとポリシーの一元管理により、医療データの保護規制への準拠も容易にします。分散した拠点間で機密情報を扱う医療現場において極めて有効なソリューションです。

SD-WANのテクノロジーとセキュリティ機能

SD-WANの主眼はパフォーマンス向上にありますが、最新プラットフォームはネットワークセキュリティの重要要素でもあります。脅威保護やアクセス制御を直接組み込むことで、セキュリティの死角を排除します。

SD-WANのセキュリティ機能

最新のSD-WANプラットフォームには、以下の機能が標準で組み込まれています。

  • NGFW(次世代ファイアウォール)
  • IPS(侵入防御システム)
  • URLフィルタリング
  • エンドツーエンド暗号化
  • セキュアVPNおよびエンドポイント認証

これらにより、インターネット経由の通信であっても、データ保護、ネットワークセグメンテーション、不正アクセスの遮断を確実に実行できます。

SD-WANとゼロトラストの統合

SD-WANは、ZTNA(ゼロトラストネットワークアクセス)などのアイデンティティ主導のセキュリティと共存し、SASE(セキュアアクセスサービスエッジ)アーキテクチャの基盤となります。

ゼロトラストでは、あらゆるデバイスやユーザを疑います。SD-WANとZTNAを組み合わせることで、認可前のユーザ認証を厳格化し、脅威アクターによるラテラルムーブメント(水平移動)のリスクを低減します。

ランサムウェアおよび脅威への対策

SD-WANは、適切なセグメンテーションと詳細なトラフィック制御により、被害の拡大を最小限に抑えます。ランサムウェア攻撃やAPT(高度な持続的脅威)に対する強力な防御手段として機能します。

高度なソリューションは脅威インテリジェンスを統合し、悪意ある通信をリアルタイムに遮断します。EDR(Endpoint Detection and Response)と組み合わせることで、ネットワーク全体で能動的な防御が可能になります。

現代の組織におけるSD-WAN導入のメリット

SD-WANは単なる接続手段ではなく、DX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させる戦略的推進役です。その導入効果は、運用効率、コスト、ユーザ体験など広範にわたります。

SD-WANの導入によって得られる主なメリットを紹介します。

  • パフォーマンスと可用性:動的な経路選択と高速フェイルオーバーにより、アプリの品質を向上させ、障害時でも重要サービスの継続稼働を支えます。

  • コスト効率:高価な専用線への依存を減らし、ブロードバンドやLTE/5Gを組み合わせることで、MPLS(マルチプロトコルラベルスイッチング)と同等の品質を低コストで実現します。

  • 管理の簡素化:単一コンソールから、数千拠点のポリシー設定やアップデートを一括実行でき、管理工数を劇的に削減します。

コンプライアンスの強化:詳細な制御とセグメンテーションによりデータアクセスを制限し、GDPRなどの各種規制への対応を支援します。

SD-WAN導入における検討事項

SD-WANの導入を成功させるには、既存インフラやビジネスニーズ、運用体制の綿密な評価が不可欠です。

導入モデルの選定

導入には以下のパターンがあります。

  • 自社構築・運用(DIY型)

  • マネージドサービスプロバイダ(MSP)への委託

  • クラウドネイティブなプラットフォームの活用

各モデルにより、制御の柔軟性や導入スピード、カスタマイズ性が異なります。

既存環境との互換性

SD-WANは、以下の既存アーキテクチャと円滑に統合できる必要があります。

  • レガシーネットワーク機器

  • クラウドサービスおよびマルチクラウド環境

相互運用性が鍵となります。オープンスタンダードやAPIをサポートするプラットフォームを検討してください。

計画立案の重要ポイント

導入前にトラフィックとアプリケーションを精査し、ボトルネックを特定して重要サービスの優先順位を明確にすることが推奨されます。

その他の検討事項:

  • 帯域幅のキャパシティプランニング

  • アプリケーションの優先順位付け

  • ITスキルの再習得を含めたスキルセット

  • セキュリティおよびコンプライアンス要件

従来のWANとSD-WANの比較

DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展に伴い、従来のWANモデルの限界を評価する必要があります。SD-WANは、旧来の構成では困難な多くのメリットを提供します。

WANとSD-WAN

SD-WANはクラウドやハイブリッドITに最適化されており、拠点の新設やリモートワーク移行、新たな脅威への対応を迅速化します。

SD-WANとSASEの親和性

SASE(セキュアアクセスサービスエッジ)は、ネットワークとセキュリティをクラウドモデルへ統合します。その中核を成すのがSD-WANです。

SASEの目的は、あらゆる場所から安全でシームレスなアクセスを提供することです。SD-WANは、通信をデータセンターに集中させず、インテリジェントにクラウドセキュリティへ誘導することで、このモデルを支えます。

最適なSD-WANソリューションの選定

最適なソリューション選定には、現在の環境への適合性と将来の拡張性の両面を考慮する必要があります。

選定時のチェックポイント

SD-WAN選定時に不可欠な主要機能を紹介します。

  • リアルタイム分析とパフォーマンス監視

  • ビルトインのセキュリティ(FW、IPS、ゼロトラスト対応など)

  • ユーザビリティの高い一元管理コンソール

  • 強固なSLA(サービスレベル合意)と迅速なサポート体制

柔軟性の維持とベンダロックインの回避

重要なのは柔軟性です。特定のベンダに依存しないソリューションを選定してください。ベンダニュートラルなSD-WANは、多様なISPやクラウド、セキュリティツールと連携でき、DXの進展に合わせて柔軟に拡張可能です。

現代のネットワーク戦略にSD-WANが不可欠な理由

SD-WANは単なるアップグレードではなく、現代のニーズに合わせたネットワークの再構築です。組織の成長に合わせ、デジタル時代に勝ち残るためのパフォーマンスと俊敏性を提供します。

クラウドシフト、ハイブリッドワーク、セキュリティ強化を支えるIT戦略の柱として、SD-WANはSASE(セキュアアクセスサービスエッジ)の不可欠な要素となっています。

SD-WANセキュリティの相談窓口

脅威の高度化により、SD-WAN単体では不十分な場合があります。そこで有効なのがTrend Vision One™です。SD-WANとのネイティブ統合に加え、XDR(Extended Detection and Response)によってIT環境全体を保護します。

Trend Vision Oneは、高度な脅威検知、ゼロトラスト、スマートなルーティングを融合し、一元的な可視性と自動応答を実現する、ハイブリッド環境に最適なスケーラブルなプラットフォームを提供します。

Joe Lee氏

プロダクトマネジメント担当バイスプレジデント

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Joe Leeはトレンドマイクロのプロダクトマネジメント担当バイスプレジデントとして、エンタープライズ向けEメールおよびネットワークセキュリティソリューションのグローバル戦略と製品開発を統括しています。

ゼロトラスト

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