Agentic SOARとは、AIを活用して脅威を自律的に評価し、的確な意思決定のもと、人の介入を介さずリアルタイムに対応を実行するSOAR(Security Orchestration, Automation and Response)テクノロジーです。
目次
従来のSOARは、SOC(Security Operations Center)の作業負荷を軽減するために設計されました。SIEM(Security Information and Event Management)やエンドポイントセキュリティ、その他のセキュリティソリューションと連携し、自動化によって事前構築されたプレイブックに基づいて対応を開始します。SOARによる自動化は効率性を高めましたが、同時にセキュリティチームに以下の課題も生み出しました:
Agentic SOARは、従来のSOARをさらに進化させたソリューションです。組織は静的なプレイブックに依存する体制から、コンテキスト(文脈)理解に基づきインテリジェントな意思決定を行う動的かつ自律的なシステムへと移行が可能になります。脅威の調査やトリアージ、最適な封じ込め策の選択に至るまで、人の介入を必要とせず自律的な実行を実現します。
前述の通り、従来のSOARの限界は静的なプレイブックに依存している点にあり、進化し続ける新たな脅威へ対応するためには手動での更新が不可欠でした。そのため、高度な推論や判断を要する複雑な攻撃シナリオにおいて、従来のSOARでは十分な有効性を発揮できないケースがあります。従来のSOARを運用する場合でも、調査やトリアージ、例外的な事象への対応には、依然としてアナリストの介入が避けられません。
Agentic SOARは、推論駆動型の調査手法を用いることで、脅威の分析からトリアージ、意思決定までを人の手を介さず自律的に適応させます。検知されたアラートは、まずアナリストではなくAIエージェントに集約されます。AIエージェントは、LLM(大規模言語モデル)や過去の行動コンテキスト、脅威インテリジェンス、各種検証プロセスを駆使してアラートの重大度を正確に分類します。
その後、調査結果と推論プロセスは読みやすい詳細なレポートとして自動作成されます。アナリストはこのレポートを確認するだけで、迅速な状況把握が可能となります。場合によっては、人の介入を一切必要とせずにAgentic SOARが直接修復アクションを完結させることも可能です。
Agentic SOARの中核的な特徴は、その自律性と高度な推論能力にあります。主な機能構成は以下の通りです。
従来のSOARはSOC運用を大きく前進させましたが、依然としていくつかの制約がありました。対してAgentic SOARには、以下のようなメリットがあります。
新たなテクノロジーの導入には、いくつかの障壁が想定されます。AIが自律的に判断・行動するため、ガバナンスや監視体制、信頼性の確保といった特有の課題が生じます。また、AIが膨大な機密データにアクセスすることから、セキュリティとプライバシー保護の徹底が求められます。さらに、既存のレガシーシステムとの統合プロセスを適切に管理することも重要です。これらの点を踏まえ、Agentic SOARを効果的に導入するためのベストプラクティスを提案します。
攻撃者がAIを悪用して巧妙な攻撃を仕掛ける昨今、SOC運用においてもAIエージェントの力を最大限に活用することが不可欠です。Agentic SOARは、脅威検知精度の向上、迅速な封じ込め、運用負荷の軽減を通じて、セキュリティ運用に抜本的な変革をもたらします。アナリストは、脅威ハンティングやリスク動向分析、組織を横断したスキル向上といった、より戦略的な活動に注力できるようになります。
ただし、AIか人かという二者択一で考えるべきではありません。最も成果を上げるのは、AIでイベント管理を強化しつつ、重要な局面では人がレビューと最終判断を行う「ハイブリッドアプローチ」を採用する組織です。
Trend Vision One™ Agentic SOARは、静的なプレイブックの限界を超え、AI主導でリアルタイムな調査・トリアージ・対応を実現する次世代のSOC運用を提供します。AIによる調査の自動化とシームレスなエコシステム連携により、アナリストを膨大なアラートから解放し、戦略的な優先事項への集中を支援します。
Jayce Chang
プロダクトマネジメント担当バイスプレジデント
Jayce Changはプロダクトマネジメント担当バイスプレジデントとして、セキュリティ運用、XDR、およびAgentic SIEM/SOARに戦略的に注力しています。
Agenticは「主体性」や「行動力」を意味する「Agency」に由来しています。Agentic SOARは、自律的に判断・行動する機能を備えたSOARソリューションを指します。
エージェントの動作とは、AIシステムが人の介入を必要とせず、自ら判断を下し、状況の変化に応じて適切な行動をとる能力のことです。
SOAR(Security Orchestration, Automation and Response)とは、セキュリティツールの統合とワークフローの自動化を通じて、セキュリティ運用の効率化を実現するソリューションです。
SOARは「Security Orchestration, Automation and Response」の頭文字をとった略称です。
エージェント動作の具体例としては、ユーザーの指示を待たずにデジタルアシスタントがスケジュールを管理することや、自動運転車による最適なルート選択、システムによるネットワークトラフィックの自動経路変更などが挙げられます。
エージェント学習の一例は、仮想アシスタントがユーザーの行動パターンや会議、場所の情報を学習し、必要に応じて自動的にアラートを設定するようなケースが該当します。
代表的なものとして、Microsoft AutoGen、CrewAI、LangGraphの3つが広く知られています。
AIエージェントが人の介在なしに自律的に情報を収集し、最適な選択肢を判断してタスクを遂行する一連のプロセスを指します。
エージェントワークフローの具体例は、サイバーセキュリティにおいては、AIエージェントがアラートを自律的に調査し、多様なソースのデータを相関分析した上で、最適な封じ込め策を自ら選択・実行する流れがその一例です。
通常のワークフローがあらかじめ定義されたタスクの順次実行であるのに対し、エージェントシステムは自律型AIが状況を判断し、その都度最適なアクションを選択・実行する点が異なります。