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2019/10/31

『サステナビリティ』と『セキュリティ』~アジア最大のインダストリー4.0専門展示会 ITAP 2019 イベントレポート~

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10月22日から24日にかけて、アジア最大のインダストリー4.0専門展示会である「Industrial Transformation ASIA-PACIFIC Hannover Messe Event (ITAP)」がシンガポールで開催されました。今回は現地視察の結果を踏まえて、IoTセキュリティの観点からITAPのイベントレポートをお届けします。

■"Start, Scale, Sustain"

本イベントはアジア最大のインダストリー4.0専門展示会で、今回で2回目の開催となります。昨年は2ホールでの開催でしたが、今年は3ホールに拡大しており、昨年よりも大規模かつ熱気にあふれたイベントとなりました。展示ゾーンには世界30か国以上から350社が出展し、それぞれのソリューションを紹介していました。また、およそ120の自由参加型セッションおよびワークショップが開催されました。

第1ホールではファクトリーオートメーションやイントラロジスティクス系のハードウェアを中心とした展示が行われており、第2ホールでは工場のデジタル化に関連したソリューション群が、第3ホールにはスマートシティやエネルギー関連の展示が多くみられました。

初日のオープニングセレモニーでは、シンガポール副首相兼財務大臣のHeng Swee Keat氏が登壇し、インダストリー4.0をエンジンとしたアジア全体の経済成長への期待と実現性を語りました。また、大会主催者であるSingEx HoldingsのCEO Aloysius Arlando氏は『今回のフォーカスはインダストリー4.0を実装することだ』と宣言し、インダストリー4.0がすでにコンセプトだけに留まらないものであることを強調しました。加えて、Arlando氏は『インダストリー4.0を Start, Scale, Sustain していくことが重要』と説き、デジタル化はもはや特別な要素ではなく、ビジネスを支える前提になっていることを示唆しました。

<図1> 展示会場の入口付近「Gateway to Industry 4.0」ゾーンに設置されたパネル<図1> 展示会場の入口付近「Gateway to Industry 4.0」ゾーンに設置されたパネル

■展示の変化

展示ゾーンの第1ホールに入り、まず目に飛び込んできたのは『Gateway to Industry 4.0』と呼ばれる特設エリアでした。このエリアにはインダストリー4.0に至るまでの歴史的変遷や各国の施策、現代におけるキーワードがわかりやすく説明されており、インダストリー4.0の取り組みをより身近なものにしようという意図が読み取れます。『学びの場』としての意義を持つITAPならではの展示と言えるでしょう。また、インダストリー4.0を支えるテクノロジーとして紹介されていたのは、Additive Manufacturing(3Dプリンティングなどの付加製造)、Artificial Intelligence(人工知能)、Blockchain(ブロックチェーン)、Cyber-Physical System(サイバーフィジカルシステム)、Sensor Network(センサーネットワーク)でした。

<図2> インダストリー4.0までの変遷を解説した展示パネル<図2> インダストリー4.0までの変遷を解説した展示パネル

第2ホールの展示で目に付いたのは、ソフトウェア展示の多さです。ロボットや設備系の展示が多くを占める中、Microsoft, Oracle, SAPなどの大手ソフトウェア/クラウドベンダーも巨大なブースを構え、多くの来場者が展示ブースを訪れていました。機器のオープン化とIoTデバイスの普及に伴い、工場設備に関わる担当者もクラウドやソフトウェアの動向に無関心ではいられない時代になってきていると言えるでしょう。

ソリューションとしては、特にManagement(管理)を標榜する企業ブースが多く見受けられ、IoTを中心としたテクノロジーで生産状況や品質状態などの可視化を実現するソリューションの展示が行われていました。インダストリー4.0の実装に向けて、展示側も何から始めるべきか・何なら始められるかに力点を置いていました。予算や資産状況などの現実を踏まえたコミュニケーションが求められている現状が感じられました。

サイバーセキュリティに関わる展示は「デジタルファクトリー」のカテゴリーに含まれていましたが、「Security」を標榜する展示は筆者が確認したかぎりでは片手で数えられるほどでした。また、セキュリティ関連のセッションおよびワークショップは7つで、多くはインダストリー4.0におけるセキュリティの重要性の理解を促す内容でした。インダストリー4.0に関わる担当者にとって、サイバーセキュリティは目新しい領域であると思われます。

■『サステナビリティ』のためのサイバーセキュリティ

インダストリー4.0は、コンセプトを超えて現実解の提供フェーズへと移行しています。今年のITAPでは約15,000ものソリューションが展示され、導入事例も多く紹介されました。しかしながら、今年のITAP参加者にとって、セキュリティはいまだに新鮮なトピックに位置付けられるでしょう。

この現状について、ITAPの主催者であるSingEXのプロジェクトリードを担うHenry Chua氏は次のように言及しました。「インダストリー4.0の実装が始まりました。そして、これからはインダストリー4.0の拡大・持続が重要になってきます。今の時点では、大半のユーザーにとってセキュリティは担当外の話に聞こえるか、単純なコストとして認識されているかもしれませんが、セキュリティはインダストリー4.0のベースとなります。デジタル環境を持続させるためにはセキュリティが重要な要素となります。」加えてHenry氏は、次のITAPのキーワードは『Sustainability』だと言及しました。

Sustainability(サステナビリティ)とは「持続可能性」とも訳される単語で、業界を問わず世界規模でキーワードになっている言葉です。どんなに先進的な技術を取り入れたとしても、それが刹那的なイベントで終わってしまってはいけない。それはインダストリー4.0にも当てはまります。ネットワークに接続された工場は、サイバー攻撃という新たな脅威にさらされます。その脅威から工場を守ることがサイバーセキュリティの役割です。スマート工場のサステナビリティにはサイバーセキュリティが欠かせない。そんな認識が近く浸透していくことになるのではないでしょうか。来年のITAPでは、セキュリティをテーマにした展示やセッションの変化に注目です。

石原 陽平  YOHEI ISHIHARA

石原 陽平(いしはら ようへい)

トレンドマイクロ株式会社

マーケティングコミュニケーションマネージャー

カリフォルニア州立大学フレズノ校 犯罪学部卒業。台湾ハードウェアメーカーおよび国内SIerでのセールス・マーケティング経験を経て、トレンドマイクロに入社。世界各地のリサーチャーと連携し、IoT関連の脅威情報の提供やセキュリティ問題の啓発にあたる。

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