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2016/07/27

スマートホームへようこそ: IoTセキュリティの責任は誰が負うべきか

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いつか、あらゆるデバイスからボタンがなくなるでしょう。テレビをつけるためにリモコンを手にしたり、明かりを消すためにスイッチを押したりする必要はなくなります。ユーザが手で操作をしなくても、これらのデバイスはそれぞれが担う役割を自主的に勝手に果たすようになります。手をたたいたり、声で命じたり、手ぶりで示してデバイスを作動させることもありません。デバイスは、ある程度の自主性を獲得し、人の介入を必要としなくなります。これは、ごく近い将来に必然的に現実のものとなるでしょう。その立役者がスマートテクノロジであり、スマートテクノロジはますますスマートになっています。

スマートテクノロジやIoT(モノのインターネット)はしばしば話題となりますが、「スマート」が名前につくデバイスやインフラストラクチャの唯一の基準は自動化にあると言わんばかりの論調が多くみられます。しかし、それだけではありません。

まず、IoTに分類されるデバイスには、本来の基本機能を超えた機能が必要とされます。パソコンが通常行っている方法で、デジタル情報を受信、処理、送信できなければなりません。そのためには、接続性という第2の要件を満たす必要があります。インターネットに接続する機能、さらには近くのスマートデバイスと通信する機能が求められます。

例えば次のように考えてみます。自動開閉ブラインドを設置したスマートホームでは、太陽が昇ると同時にブラインドが開きます。それに伴い、室内のスマート電球が消灯します。このリレー動作によって、太陽光が取り込まれて室内を明るくし、電気代の節約をもたらします。デバイスが相互に通信するもう1つの例として、電話が鳴るとスマートテレビの音が小さくなることが挙げられます。これにより、ユーザは電話の着信に気付きやすくなります。

自動化と接続性はともにIoTの推進に寄与してきましたが、それと同時に抑制の要因にもなってきました。私たちを取り巻くあらゆるモノがネットにつながるIoT(アイ・オー・ティー:Internet of Things、モノのインターネット)の世界がいよいよ現実になってきました。

スマートホームの拡大は必然の流れ

長年にわたり、IoTの大規模導入は足踏み状態にありました。スマートデバイスがユーザにとって実用的ではなかったのです。こうした1個限りのデバイスの製造にはコストがかかるため、結果的に価格の上昇を招きました。したがって、数年前には、これらのデバイスは必需品というより贅沢品とみなされていました。また、インターネットへのアクセスに必要なインフラは、世界中のすべての国が擁しているわけではありません。IoTを初期段階で活用しようとするのは、高価なIoTデバイスを購入できる資金があり、それをフルに活用できる地域を拠点とする熱心なユーザに限られていました。

しかし、今や市場は変わりました。人々は、日常生活を快適にする、あるいは自分の楽しみの源泉となる、よりスマートな「モノ」を求めるようになりました。そして業界はこうした動きに注目しています。

シリコンバレーの数十億ドル規模の企業は、イノベーションにおいて相手より一歩先を行くことに重点を置き、実に様々な一般向けのIoTデバイスを提供しています。この変化を進んで受け入れようとしない企業は、その規模を問わず、時代に取り残されることになります。ここで思い浮かぶのは、スマートフォンの消費者需要の変化に対応しなかった携帯電話の大手企業です。最終的に、こうした企業は市場から姿を消しました。

ITアドバイザリ会社のガートナーは、次のように予測しています。

  • ・ガートナーによると、2015年から39%増加し、2016年までにスマートシティで16億のネットにつながるデバイスが使用されると予想(ガートナーでは、スマートシティを各地区固有の情報間で共通するコンテキストなリアルタイム情報の分析と運用化された技術システムを通じ、持続可能な効果を達成するために協同する複数の地区によって構成される都市部と定義)

  • ・スマートホームは2016年スマートシティにおけるIoT利用全体の21%を占め、今後5年にわたり高推移すると予想

出典:Gartner Press Release “Gartner Says Smart Cities Will Use 1.6 Billion Connected Things in 2016” December 7, 2015 http://www.gartner.com/newsroom/id/3175418

日本とドイツは、都市部においてすでにスマートホームが浸透しはじめている国の例です。こうした場所では、必需品と言えるほどIoTが人々の生活に根付いています。

通勤が大きな負担となる日本の都市圏では、ホームオートメーションにより、職場から自宅への長い移動時間で時間と労力を節約できます。例えば、スマート調理器具を設置したマンションでは、住人の帰宅時までに食事を用意しておくことができます。

高齢者が人口のかなりの部分を占めるドイツでは、多くの人々がスマートヘルスモニタリングデバイスを使用しています。心臓発作などの緊急時には、このデバイスを通じて緊急支援が要請されます。こうしたモニターによって人命が救われるのです。

スマートホームにおけるIoTセキュリティの責任は誰が負うべきか

スマートホームの普及率の上昇は、市場の関連企業の競争を促進します。しかし、IoTデバイスの製造元に機能やセキュリティの統一基準を規制する機関が現時点では存在しないため、長期的に見ると、こうした競争の促進はいくつかのセキュリティの問題を引き起こす可能性があります。

IoTにおけるセキュリティの責任は、いったい誰が負うべきなのでしょうか。

責任を負うのはIoTのユーザでしょうか。今のところ、そのように思われます。ユーザは、自宅に導入するIoTデバイスを自分で決めることができます。ユーザは、スマートホームエンターテイメントシステムを使用するたびに、デバイスの製造元にどのような情報が送信されるのか承知のうえで、そのシステムを自宅に設置することを選択します。これは継続的なトレードオフであり、ユーザは、個人のプライバシーと安全性か、自分の楽しみや満足感かいずれを重視するかが強いられます。

とはいえ、IoTを取り巻く状況は進化し続けています。IoTが自宅から都市全体へと範囲を広げた場合、ユーザはかなり無力な存在となります。

防犯カメラや緊急センサーなどのIoTデバイスをあらかじめ装備した新しいマンションはその一例です。この建物の入居者に選択の余地はなく、その監視レベルを受け入れざるを得ません。民間、公共を問わず、こうしたIoTデバイスの設置が将来すべてのビル開発で必須となることを想像してみてください。

公共の建物や移動手段でスマートテクノロジが広く使用されるようになると、ユーザは個人でプライバシーやセキュリティを制御できなくなります。最終的に、責任の矛先はユーザからIoTの製造元へ移ります。自社の組織とユーザを最悪の事態から守るために製造元が予見すべきリスクは何でしょうか。

この点については、本連載の次回で詳しく説明します。

MARTIN ROSLER

MARTIN RÖSLER

Senior Director Forward-Looking Threat Research

Trend Micro

6年以上にわたり、トレンドマイクロの最先端脅威研究組織である「Forward-looking Threat Research」を率いる。主に未知の脅威予測について研究を行う彼のチームでは、最新テクノロジやソーシャルの動向だけでなく、アンダーグラウンドの調査やグローバルの法執行機関と協力してのサイバー犯罪調査に取り組み、日本や欧米、中東、アフリカなど各地でサイバー犯罪の撲滅に貢献している。スマートホームテクノロジについての調査も2年半以上継続しており、先日自宅のスマートホーム化を終えたところである。

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