API(Application Programming Interface)セキュリティとは?

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APIセキュリティは、データ侵害や不正アクセス、その他の脅威からAPIを保護するためのプロトコル、プロセス、ベストプラクティスを包含するサイバーセキュリティの一分野です。

APIセキュリティは、複数のツールを組み合わせることで、組織がAPIの脆弱性を悪用した攻撃から防御できるよう支援します。これにより、機密情報の保護はもちろん、Webアプリケーション、モバイルアプリケーション、クラウドサービス、さらにはIoTデバイスの安全性を確保することが可能になります。

APIとは

API(Application Programming Interface)は、異なるソフトウェアアプリケーション同士が通信し、データを共有するためのコードベースのルールやプロトコルです。

APIは、アプリケーション間でのデータ交換を可能にする一方で、攻撃者にとってはアプリケーション本体、実行環境、そして取り扱うデータへのアクセス手段となる可能性があります。そのため、APIはセキュリティ対策の重要な対象となります。

APIセキュリティの仕組み

APIセキュリティでは、認証と承認、プロアクティブなアクセス制御、データ暗号化技術、TDRなどのツールを使用して、次のような偶発的または悪意のあるさまざまな脅威からAPIを保護します。

  • データ侵害
  • データの盗難または不正使用
  • DDoS(分散型サービス拒否)攻撃
  • ハッキングやその他の不正アクセスの試み
  • 脆弱性攻撃
  • インジェクション攻撃
  • アカウント乗っ取りのための認証ベースの攻撃
  • アクセス制御の不備による攻撃
  • MITM(Man-In-The-Middle)攻撃
APIセキュリティの仕組み

APIの主なプロトコル

APIにはさまざまな種類があります。一般的なAPIには、以下などが挙げられます。

  • REST(Representational State Transfer)API:Web APIアーキテクチャの原則に基づき、アプリ間でHTTP(Hypertext Transfer Protocol)リクエストを介してデータやその他のリソースを共有できます。現在、APIの大部分はRESTに基づいています。
  • SOAP(Simple Object Access Protocol)API:エンドポイントがXMLメッセージに基づいて安全にデータを送受信および共有できるようにします。決済処理などのエンタープライズアプリケーションでは、より厳格な通信規格のため、SOAPが使用されることが多くあります。
  • GraphQL API:オンデマンドクエリを通じてより高速かつ正確なデータ取得を実現するため、このプロトコルは、大量の製品、ユーザ、注文データが取引される電子商取引アプリケーションなど、膨大な量のデータクエリを必要とするアプリケーションに適しています。
  • RPC(Remote Procedure Call)API:リモートサーバ上でプログラムをローカルマシンのように実行できます。一部のユースケースでは、RESTやgRPC(RPCの最新実装)がRPCに取って代わりつつあります。RPCは、リモートサーバ上で不正行為を特定するためのAIアルゴリズムの実行など、別のサーバ上で複雑な計算を行うのに最適です。

APIには基本的に、ソフトウェア開発者がさまざまなアプリケーションのデータや機能にアクセスして独自のアプリに統合できるようにするプログラミングインターフェースが含まれます。

APIの利点は、開発者がすべての機能をゼロから開発する必要がない点にあります。既存のアプリケーションから機能を呼び出すだけで、独自のソフトウェアを改良することができます。

APIセキュリティが重要な理由

APIセキュリティは、組織がAPIの整合性を維持し、機密情報をサイバー攻撃から守ることで、企業の評判やパートナー・お客さまからの信頼を保つために不可欠です。

その背景には、組織が製品・サービス・情報を、モバイルアプリ、クラウドネイティブおよびクラウドベースのアプリケーション、Webアプリケーション、SaaS(Software as a Service)など、複数のプラットフォームやデバイスに安全かつ確実に提供するために、APIへの依存度を高めているという現状があります。

これらのアプリケーションが扱うデータは、企業にとって極めて重要な資産であり、ビジネスの根幹を支える要素です。APIはそのデータの入り口であり、通信の要となるため、侵害された場合には、生産性や収益性、ブランド価値に深刻な影響を及ぼす可能性があります。その結果、多額の罰金、長期的な業務停止、法的措置などのリスクが生じることもあります。

こうした理由から、APIは攻撃者にとって魅力的な攻撃ベクトルとなっており、強固なAPIセキュリティ対策が求められています。

さらに、APIセキュリティは、GDPR(一般データ保護規則)やCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)など、各国・各地域のデータプライバシー関連法規制への準拠を支援するうえでも重要な役割を果たします。

主なAPIセキュリティリスク

APIの利用が拡大するにつれ、サイバー攻撃やAPIセキュリティに対するその他のリスクの数、頻度、そして巧妙さも増加しています。APIセキュリティに対する最大かつ最も危険なリスクには、以下などが挙げられます。

  • 認証と認可の不備:サイバー犯罪者が適切な認証なしにAPIにアクセスでき、本来アクセスすべきでない機能や機密データにアクセスできてしまう状況を指します。また、認証情報、APIキー、APIトークンを盗み、アカウント乗っ取りを実行することも可能になります。
  • 不適切な設定:攻撃者が脆弱性を悪用してAPIを攻撃するケースを指します。例えば、適切なレート制限がされていないAPIに対して、DoS(サービス拒否)攻撃やDDoS攻撃を仕掛けられる可能性があります。
  • 暗号化の問題:攻撃者が暗号化されていないAPI通信を傍受しようとします。
  • シャドーAPIとゾンビAPI:開発者が多数のAPIを作成するAPIスプロール化により、公開されているものの監視されていない、忘れ去られたレガシーAPIが存在する可能性があります。これらのAPIはセキュリティ対策が不十分で、攻撃者の格好の標と的なります。
  • 異常なAPIリクエスト:攻撃者が無害なリクエストを装っている場合でも、API攻撃の兆候は存在します。これにはSQLインジェクション攻撃やコマンドインジェクション攻撃が含まれます。
APIへの攻撃は、企業規模を問わず広がっており、ホンダ、Dell、T-Mobileなど、世界的な大企業でさえAPIの侵害を受けています。

2024年には、脆弱性を突いた攻撃により、LinkedIn、Facebook、Snapchat、Duolingo、X(旧Twitter)などのサービスにおいて、数億人規模のユーザーのプライベートアカウントが侵害されました。

OWASPのAPIセキュリティリスク トップ10

2023年、OWASP(Open Web Application Security Project)は、企業がAPIセキュリティに対する最も危険な脅威を特定、理解し、保護するための支援として、「APIセキュリティリスク トップ10」の最新リストを公開しました。リストには以下の内容が含まれています。

  1. オブジェクトレベルの承認の不備により、オブジェクト識別子を処理するエンドポイントが公開されている状態。

  2. 認証メカニズムの不備により、攻撃者が認証トークンを盗んだり、他のユーザのIDを偽装したりすることが可能になる状態。

  3. オブジェクトプロパティレベルでの不適切または不十分な検証の結果として、オブジェクトプロパティレベルの承認が侵害される状態。

  4. DDoS攻撃やその他の攻撃による、ネットワーク帯域幅、メモリ、ストレージ、CPUなどリソースの無制限な消費

  5. 機能レベルの認証の不備により、アクセスと認証の欠陥が生じ、サイバー犯罪者に悪用される可能性がある状態。

  6. オンラインでの購入やソーシャルメディアへのコメント投稿など、ビジネス機能を実行するために使用されるAPIの自動的な利用から生じる、機密ビジネスフローへの無制限のアクセス

  7. SSRF(サーバサイドリクエストフォージェリ)の脆弱性により、攻撃者はファイアウォールやVPN(仮想プライベートネットワーク)を回避し、リモートリソースを取得するAPIを侵害することが可能になる状態。

  8. セキュリティの設定不備により、APIとそのサポートシステムが悪意のある侵入や攻撃に対して脆弱になる状態。

  9. 不適切なインベントリ管理に起因する、APIにおけるエンドポイントの意図しない公開。

  10. 安全でないAPIの使用により、攻撃者がサードパーティのデータやサービスを標的としてAPIに侵入できるようになる状態。

APIセキュリティで使用されるツール

APIセキュリティソリューションは、設計、コーディング、実装、保守に至るまで、ライフサイクルのあらゆる段階でAPIを保護するために、さまざまなツール、テクノロジー、ベストプラクティスを組み合わせます。これには以下が含まれます。

  • データの流れを保護、管理、制御するAPIゲートウェイ
  • データの盗難、侵害、不正使用から保護するための暗号化プロトコル
  • アクセス認証を管理するためのAPIキーまたはトークン
  • 転送中のデータを保護するためのTLS(トランスポート層セキュリティ)
  • API、認証情報、機密情報を保護するためのアプリケーションファイアウォール
APIセキュリティツール

APIセキュリティのベストプラクティス

既知および新たな脅威からデータとアプリケーションを保護するためには、効果的なAPIセキュリティ戦略の策定が不可欠です。すべての組織が取り組むべきベストプラクティスとして、以下のポイントが挙げられます。

・APIのインベントリ化と脆弱性の把握:まず、組織内で利用されているすべてのAPIを可視化し、セキュリティ上の弱点や設定ミス、脆弱性を検出・修正する必要があります。これにより、シャドーAPIやゾンビAPIのリスクを低減できます。

・強固な認証・認可の実装:OAuth(オープン認証)トークン、OIDC(OpenID Connect)コントロール、APIキー、mTLS(相互TLS)などの技術を活用し、厳格な認証・認可メカニズムを構築します。これにより、APIおよびそのデータへのアクセスを適切に監視・制御できます。

・高度な暗号化の導入:データの盗難や不正使用、改ざんを防ぐために、通信経路や保存データに対して強力な暗号化を適用することが重要です。

・使用制限の設定:レート制限、スロットリング、データクォータなどを導入することで、APIの過剰利用や悪用を防止し、帯域幅の確保とバックエンドの保護を実現します。これにより、DDoS攻撃などによるサービス停止リスクを軽減できます。

・継続的な監視とテスト:すべてのAPI、関連するセキュリティツール、エンドポイントは定期的にテストを実施し、継続的に監視する必要があります。脆弱性スキャンを通じて潜在的な欠陥や設定不備を特定し、APIセキュリティ対策が常に最新かつ包括的であることを確認します。

 

APIセキュリティの今後の展望

API技術の進化に伴い、新たな脅威や攻撃ベクトル、セキュリティリスクが次々と登場すると予測されます。特に、企業がAPI上で動作するMCP(Model Context Protocol)を通じてAgentic AI通信の導入を進める中で、APIセキュリティの重要性はさらに高まっています。

こうした課題に対応するため、APIセキュリティはニューラルネットワークや機械学習などのAI技術への依存度を高めていくと考えられます。

AIを活用した新しいセキュリティツールは、APIに対する脅威の検出・対応能力を向上させ、データ侵害やサイバー攻撃の防止に貢献します。これにより、深刻な被害が発生する前に脅威を予測・遮断することが可能になります。

今後のAPIセキュリティのトレンドとしては、継続的なAPIセキュリティ評価、業界標準とベストプラクティスの適用、そして適用されるデータプライバシー規制へのコンプライアンスの必要性が高まることが挙げられます。こうした取り組みは、組織が貴重な情報を保護し、APIの整合性、セキュリティ、そしてレジリエンスを維持する上で役立ちます。

APIセキュリティに関するサポートについて

Trend Vision One™ Cloud Securityは、クラウドおよびハイブリッドクラウド環境に対するサイバー脅威、サイバー攻撃、その他のリスクに対する包括的かつ業界をリードする保護を提供します。

リアルタイムの可視性とセキュリティ、継続的な監視と評価、既存のセキュリティおよびサイバーセキュリティのツールとテクノロジーとのシームレスな統合を組み合わせたCloud Securityは、クラウドコンテナ、ワークロード、クラウドアセット、APIを含む攻撃対象領域全体を完全に安心して保護します。

よくあるご質問 (FAQ)

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APIとは何ですか?

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APIは「Application Programming Interface」の略です。APIは、モバイルアプリケーションとWebアプリケーションが相互に連携し、データを共有し、通信できるようにするバックエンドのフレームワークです。

APIセキュリティが必要な理由は何ですか?

add

APIセキュリティは、組織がAPIをサイバー攻撃から保護し、機密データや個人情報、独自データが侵害されたり盗まれたりするのを防ぐのに役立ちます。

APIの例を教えてください。

add

私たちが日常的に使用するAPIには、PayPalを使用してオンライン購入の支払いを行える支払い処理API、配達を追跡したりUberを探したりできるGoogle マップAPI、FacebookまたはGoogleアカウントを使用してWebサイトにログインできるログインAPIなどがあります。

APIセキュリティはどのような仕組みで機能しますか?

add

APIセキュリティは、APIへのアクセスを制限し、APIデータへの不正アクセスを防ぐことで、データ侵害やサイバー攻撃を防止します。

httpsでAPIを保護するにはどうすればよいですか?

add

Web APIはHTTPを使用してデータを共有します。HTTPSを有効にすると、共有データが暗号化され、REST APIとHTTPクライアント間の通信が保護されます。

APIを保護するためのベストプラクティスは何ですか?

add

APIは、レート制限、データスロットリング、承認とアクセス制御、スキーマ検証、DDoS軽減策など、さまざまなツールを使用して保護できます。

APIにおける認証と承認の違いは何ですか?

add

API認証は、APIユーザのIDを検証します。API承認は、ユーザがアクセスできるデータやサービスを制御します。

OAuth 2.0はAPIセキュリティにどのように役立ちますか?

add

OAuth 2.0は、サードパーティクライアントがAPIにアクセスする方法を指示、制限、または管理する業界標準の認証プロトコルです。

APIゲートウェイはAPIセキュリティをどのように向上させますか?

add

APIゲートウェイは、APIとクライアントまたはユーザ間でやり取りされるデータへのアクセスを認証および制御することで、APIトラフィックを保護します。

APIエンドポイントを保護するにはどうすればよいですか?

add

APIエンドポイントは、APIゲートウェイ、APIトークン、OAuth認証、ゼロトラストポリシー、mTLS暗号化などのツールを使用して保護できます。

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