クラウドセキュリティとは?

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クラウドセキュリティとは、組織が利用するクラウドアプリケーションやインフラ、データをデータ侵害、不正アクセス、サイバー攻撃などのサイバー脅威から守るための対策やポリシー、テクノロジーを指します。

現代の組織は、膨大なデータやソフトウェアをクラウド上で保管・運用しており、これらはすべて内部脅威や外部からの攻撃から保護する必要があります。

「クラウド」という単一の概念は存在しません。この用語は、複数のコンピュータ環境のリソースを統合し、データやデータベース、ソフトウェア、その他サービスをホストするクラウドコンピューティングアーキテクチャを指します。

クラウド環境は、大きく分けて4つの種類があります。誰もが利用できるパブリッククラウド。特定の企業や組織向けに構築されるプライベートクラウド。複数の関連企業や政府機関で共有するコミュニティクラウド。そして、これら複数のモデルを組み合わせたハイブリッドクラウドです。

クラウド環境は「分散型」であり、コンポーネントが分散され、ネットワーク接続されているため、セキュリティには独自のアプローチが必要です。

クラウドセキュリティと従来のセキュリティ

クラウドセキュリティアーキテクチャは、セキュリティとサイバーセキュリティのツールや対策、テクノロジーを組み合わせて、クラウド上の資産と情報を保護します。これらの対策には、従来のファイアウォールやマルウェア対策、侵入検知システム(IDS)に加え、多要素認証(MFA)やCloud Native Application Protection Platform(CNAPP)、クラウドベースのファイアウォール、クラウドコンテナセキュリティシステム、Cloud Access Security Broker(CASB)といったクラウド特有の防御策も含まれます。

クラウドセキュリティは、厳格なアクセス制御やセキュリティポリシー、高度なTDR(Threat Detection and Response)、最新のAIセキュリティおよびAIサイバーセキュリティのツール、テクノロジー、ベストプラクティスを組み合わせることで、組織がクラウド環境を保護することを可能にします。

物理的なオンプレミスのITシステムやデータを保護する従来のセキュリティ対策とは異なり、クラウドセキュリティは、組織のクラウドベースのデータ、サービス、ツール、アプリケーションを幅広いサイバー脅威から保護することに重点を置いています。

これには、以下のような脅威からクラウド環境を保護することが含まれます。

  • 不正アクセスの試み
  • ハッキングとデータ侵害
  • マルウェア、ランサムウェア、スパイウェア攻撃
  • 内部脅威
  • フィッシング詐欺
  • 分散型サービス拒否(DDoS)攻撃

クラウドセキュリティの重要な側面とは?

クラウドセキュリティプラットフォームは、クラウド環境や組織、業界によって大きく異なりますが、ほとんどのオールインワンクラウドセキュリティソリューションは、最適な保護を提供するために必須となるコア機能を備えています。具体的には、以下の機能が含まれます。

  • アイデンティティおよびアクセス管理(IAM)制御:クラウドベースのシステムやサービス、資産へのユーザアクセスを管理・制御するツールです。
  • データセキュリティと保護:トークン化や安全な鍵管理、データ暗号化などのセキュリティ対策により、保存時および転送中のクラウドデータを、データ侵害やハッキング、その他の不正アクセスから保護します。
  • インフラセキュリティ:Webアプリケーションファイアウォール(WAF)やネットワークセキュリティグループ(NSG)、IDSなどのツールにより、クラウドインフラをサイバーリスクやサイバー脅威、サイバー攻撃から保護します。
  • TDR(Threat Detection and Response):セキュリティ情報イベント管理(SIEM)ソリューション、侵入検知システム(IDS)、迅速なインシデント対応戦略などのツール。クラウド環境における脆弱性の兆候を監視し、疑わしいアクティビティや悪意のあるアクティビティを継続的にスキャンし、サイバー攻撃からクラウドリソースをリアルタイムでプロアクティブに防御します。
  • 規制コンプライアンス:機密情報や秘密情報、独自情報を保護し、クラウドに保存される機密データが、適用されるすべての業界および政府の法律と規制に準拠していることを確認するクラウドセキュリティフレームワークです。
  • セキュアソフトウェア開発:ソフトウェア開発ライフサイクル(SDLC)全体にわたってクラウドセキュリティツールとテクノロジーを統合し、クラウドベースのプログラムとアプリケーションを盗難や侵入、破損から保護するプロセスです。
  • コンテナセキュリティ:高度なイメージスキャン、ポリシーベースのアドミッションコントロール、TDR(Threat Detection and Response)などのツールです。プラットフォームやアプリケーション層、ランタイムホストを含むクラウドネイティブコンテナセキュリティアプリケーションを保護します。
  • Cloud Security Posture Management(CSPM):クラウド資産とリソースを継続的かつ包括的に可視化し、潜在的なギャップや脆弱性、設定ミスを検知してセキュリティチームが対処できるよう支援するソリューションです。これにより、組織のクラウドセキュリティ態勢の強化に役立ちます。
  • Cloud Infrastructure Entitlement Management(CIEM):クラウドID管理やユーザ権限、アクセス制御を単一のソリューションに一元管理することで、クラウドセキュリティを強化し、偶発的および意図的な内部脅威のリスクを軽減するツールです。
  • Cloud Access Security Brokers(CASB):クラウドサービスへのアクセスを監視、制御し、組織のセキュリティポリシーを適用するメカニズムです。これにより、クラウド環境の可視性を高め、クラウドに保存されているすべてのデータを保護します。

これらの対策を包括的なクラウドセキュリティ戦略に組み込むことで、重要なクラウド上の資産やサービス、データを攻撃者から保護し、組織のビジネス関係と評判を守ることができます。

クラウド環境のセキュリティ

クラウドセキュリティの主なリスクと課題とは?

クラウドセキュリティは近年進歩し、クラウドコンピューティングには多くのメリットがありますが、組織がクラウド環境のセキュリティを確保する上で考慮すべきリスクと課題は数多く存在します。具体的には、以下の点が挙げられます。

  • より広範で複雑なアタックサーフェス:クラウド環境は、物理的なコンピューティングネットワークよりもはるかに広範かつ相互接続性の高いアタックサーフェスを有しています。そのため、攻撃者は多くの脆弱性を悪用できる可能性があり、防御が困難で、保護すべき境界が明確に定義されていないことも少なくありません。
  • 可視性と制御の欠如:サードパーティのクラウドストレージサービスは、サイバー攻撃や停電、その他の障害に対して脆弱であり、組織は自社のクラウドデータに対する可視性やアクセス、制御を損なう可能性があります。
  • データ侵害のリスク:クラウドデータ侵害は、甚大な経済的損失や生産性の低下、長期的な評判の低下、そして場合によっては法的影響につながる可能性があります。
  • 設定ミスによる脆弱性:クラウドサービスやセキュリティ設定における設定ミス(安全ではないパスワードや古いユーザ権限など)は、機密性の高いクラウドデータを不正アクセスや盗難の危険にさらし、クラウド環境をマルウェア攻撃やフィッシング詐欺、DDoS攻撃、その他のサイバー脅威に対して脆弱にする可能性があります。
  • コンプライアンス違反のリスク:クラウド環境は、データ損失の防止やサイバー攻撃の軽減、そしてデータプライバシーに関する適用可能なすべての法律や規制へのコンプライアンス確保のために、保護とセキュリティ対策を講じなければならない重要な領域です。
  • 内部脅威:意図的か偶発的かを問わず、内部脅威は組織のデータを侵害し、クラウドセキュリティに深刻なリスクをもたらす可能性があります。

クラウドセキュリティが重要な理由

今日、大多数の組織は、重要な文書のバックアップやソフトウェアの開発とテスト、メールの送受信、顧客へのサービス提供など、ビジネスに不可欠な要素としてクラウドを利用しています。そのため、ほぼすべての業界の企業にとって、データを保護し、規制コンプライアンスを維持し、あらゆる種類のサイバー攻撃を防ぐために、必要なクラウドセキュリティ対策を確実に実施することが不可欠です。

クラウドにおける機密データの保護

多くの組織が機密データや機密性の高いデータ、独自データをクラウドに保存するにつれて、それらのデータを狙うサイバー攻撃の数や頻度、巧妙さも同様に増加しています。データ損失防止(DLP)テクノロジーや多要素認証、データ暗号化といったクラウドセキュリティ対策は、クラウドデータを保護し、サイバー犯罪者の手に渡らないようにするために不可欠な手段です。

規制コンプライアンスの維持

コンプライアンス違反の訴追や高額な罰金のリスクを回避するために、機密情報や個人情報をクラウドに保存する組織は、データの保存方法や保護方法、盗難防止方法を規定するすべての法律や規制に常に準拠する必要があります。

プロアクティブなクラウドセキュリティ戦略は、米国の医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律(HIPAA)、米国金融データ保護法であるサーベンス・オクスリー法(SOX)、ペイメントカード業界データセキュリティ基準(PCI DSS)、欧州連合一般データ保護規則(DPR)など、関連するすべての規制機関に対するクラウドのコンプライアンスを確保するための鍵となります。

事業継続性への支障を抑制

クラウドベースのサイバー攻撃やデータ侵害は、事業運営と事業継続に深刻な支障をきたす可能性があり、生産性の低下や売上の減少、そして企業イメージの低下など、組織に数億円規模の損害をもたらす可能性があります。

堅牢なクラウドセキュリティシステムは、これらのリスクを軽減し、現在および将来のサイバー脅威から企業を守り、企業がオンプレミスとクラウドの両方で正常な業務を継続できるようにします。

デジタルトランスフォーメーションの支援

さらに、クラウドセキュリティは柔軟性や拡張性、そして比較的低い初期費用というメリットがあり、デジタルトランスフォーメーションの波において不可欠な要素となっています。

クラウドセキュリティソリューションは、組織がビジネスとデータのクラウド移行を進める中で、デジタルトランスフォーメーションの取り組みを効率的かつ費用対効果の高い方法で支援、強化、そして保護するだけでなく、従業員間のシームレスなコラボレーションを促進し、リモートワークやハイブリッドワークの選択肢を増やし、イノベーションを促進し、収益性と業務効率の両方を向上させる、安全で信頼できるクラウド環境の構築にも貢献します。

クラウドセキュリティのベストプラクティスの例

クラウド上のデータや資産、アプリケーションを最大限に保護するために、組織がクラウドセキュリティ戦略を策定または実装する際に採用すべきベストプラクティスがいくつかあります。具体的には、以下の通りです。

  • 継続的な常時監視と脅威検出:クラウド環境の継続的な常時監視と脅威検出ポリシーを採用することで、組織はサイバー攻撃の大半を未然に防ぐことができ、発生したインシデントに対してもセキュリティチームが可能な限り迅速かつ的確かつ効果的に対応できるようになります。
  • 強力なアクセス制御:多要素認証や機密情報へのアクセス制限、役割に応じた包括的なアクセス管理手順といったプロアクティブなセキュリティ対策を実装することで、データ侵害やサイバー攻撃のリスクを軽減し、クラウド環境を保護できます。
  • ゼロトラストセキュリティ:すべての重要な資産とアプリケーションをクラウドネットワークから分離することで、安全なワークロードをプライベートかつアクセス不能に保ち、クラウドセキュリティポリシーの適用を強化できます。
  • 定期的なセキュリティ評価と監査脆弱性スキャンやレッドチーム演習、デジタルツイン演習、ペネトレーションテストなどのセキュリティ評価と監査を定期的に実施することで、組織のクラウドセキュリティ基盤におけるギャップや弱点を特定し、クラウドセキュリティ体制を強化することができます。
  • 継続的な従業員トレーニングと意識向上:継続的な従業員トレーニングと意識向上プログラムを実施することで、従業員はクラウドセキュリティに関する最新のリスクや脅威、企業ポリシー、ベストプラクティスについて常に最新の情報を把握し、人的ミスの発生リスクを低減し、現在および将来のクラウドセキュリティ対策を強化するための文化を醸成することができます。

クラウドセキュリティの分野は日々進化しています。クラウドセキュリティとサイバーセキュリティの未来を形作る可能性の高い3つの主要なトレンドは、ゼロトラストアーキテクチャの台頭、クラウドセキュリティソリューションにおける人工知能(AI)と機械学習(ML)の統合の進展、そしてクラウドセキュリティフレームワークの継続的な進化です。

ゼロトラストアーキテクチャの台頭

ゼロトラストアーキテクチャは、すべての資産や接続、ユーザが検証されるまで、あるいは検証されない限り疑わしいと想定することで、サイバー脅威のリスクを最小限に抑えることを目指すサイバーセキュリティへのアプローチを反映しています。

クラウドにおけるデータ侵害やサイバー攻撃がますます蔓延し、巧妙化するにつれ、クラウドセキュリティにおけるゼロトラストアプローチには、クラウドベースの資産やアプリケーションを常時監視して脆弱性やギャップを特定する、クラウドネットワークを独立したセキュリティ保護された「ゾーン」に分割してデータ侵害やサイバー攻撃がクラウド環境全体に広がるのを防ぐ、ユーザが組織のクラウドデータやサービスにアクセスする前に、常に認証と承認の許可を求めるといった対策が含まれる可能性があります。

ゼロトラスト

クラウドセキュリティにおけるAIと機械学習の統合

AIとは、ディープラーニングや機械学習、ニューラルネットワークなどの高度なコンピューティング技術を用いて、人間の脳が問題を解決し、意思決定を行い、タスクを実行する方法を模倣するシステムやコンピューターを指します。AIアプリケーションが進化し、より強力になるにつれて、AIとMLアプリケーションはクラウドセキュリティとより密接に統合されるようになるでしょう。

AI駆動型クラウドセキュリティソリューションは、クラウドにおけるサイバーセキュリティ技術の速度と効率を向上させるだけでなく、AIの力を活用して膨大な量のデータをリアルタイムで分析・評価し、多様なTDRを自動化することで、あらゆる規模の組織がクラウド資産やデータ、アプリケーションをサイバー脅威からプロアクティブに防御することを可能にします。

クラウドセキュリティフレームワークの進化

クラウドセキュリティフレームワークとは、クラウドベースのデータやクラウドアプリケーションとサービスの安全を確保し、クラウド環境を攻撃から保護するために組織が採用する、ポリシーやガイドライン、アクセス制御、ベストプラクティスの詳細なセットです。

現在、業界をリードするクラウドセキュリティフレームワークには、米国国立標準技術研究所(NIST)のCybersecurity Framework(CSF)MITRE ATT&CKクラウドセキュリティフレームワーク、Center for Internet Security(CIS)のクリティカルセキュリティコントロール、Cloud Security Alliance(CSA)のSecurity, Trust, Assurance and Risk(STAR)フレームワーク情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)のISO/IEC 27001規格などがあります。

組織がこれらのフレームワークやその他の新しいフレームワークを採用・遵守し続けることで、クラウド環境のセキュリティを強化し、クラウドベースの資産とデータを侵害やサイバー攻撃から保護し、あらゆる国内および国際的な法律や規制へのコンプライアンスを確保できるようになります。

クラウドセキュリティに関するサポートはどこで受けられるのか?

Trend Vision One™ Cloud Securityプラットフォームは、強力なオールインワンのクラウドセキュリティソリューションです。これにより、組織はクラウド環境の可視性を高め、クラウドデータへのアクセスを制御し、クラウドセキュリティとサイバーセキュリティの防御を自動化・強化し、クラウド資産やアプリケーション、サービスを新たなサイバー脅威、サイバー攻撃、データ侵害からプロアクティブに保護することができます。

Cloud Securityは、その他の機能の中でも、あらゆるワークロードやコンテナ、API、クラウド資産のアタックサーフェス(攻撃対象領域)を継続的にリアルタイムで監視し、リスク評価を行います。リアルタイムの脅威検知と対応、自動脆弱性スキャン、高度な暗号化機能、包括的なコンプライアンス保証と適用により、クラウドやマルチクラウド、ハイブリッドクラウド環境に対して業界をリードする保護を提供します。また、クラウドセキュリティ体制を最大限に高め、進化し続ける脅威や攻撃、サイバー犯罪者からクラウド資産を保護するために必要な可視性と制御を組織に提供します。