Artificial Intelligence (AI)
トレンドマイクロとNVIDIAの連携がAIインフラのセキュリティ強化を実現
トレンドマイクロ、NVIDIA両社は、クラウド、データセンター、AIファクトリー全体にわたって、開発・トレーニングから導入・推論に至るAIライフサイクル全体の保護に取り組んでいます。
現在、世界中の企業がイノベーションと競争力の向上を目指して、エージェント型AIソリューションの導入を急いでいます。しかしこの変革は、特にデータ主権や厳格なコンプライアンスが求められる規制産業にとって、セキュリティ上の課題をもたらしています。こうした課題に対応するため、NVIDIAは「NVIDIA Enterprise AI Factory」認定デザインを発表しました。これにより、より多くの企業が安全かつ効率的にAI技術を導入できるようになります。
2025年5月19日、トレンドマイクロは、NVIDIA RTX PROサーバ上で稼働するNVIDIA認定システムと同社の高度なサイバーセキュリティソリューションを統合することで、NVIDIAと連携しAIシステムのセキュリティをさらに強化することを発表しました。Computex Taipei 2025においてトレンドマイクロCEOエバチェンが述べたように、両社は、クラウド、データセンター、AIファクトリーを含むすべての環境において、開発・トレーニングから導入・推論に至るAIライフサイクル全体の保護に力を注いでいます。
データセキュリティ:エンタープライズAIの課題
生成AIの導入が加速するなかで、多くの組織、特に重要インフラ、政府、医療、金融サービスといった分野では、機密データの管理を維持するために、自社専用のプライベートAIインフラを構築し始めています。
Gartner®によると、「こうした懸念が、より厳格なプライバシーおよびデータ保護ポリシー、データ主権とデータ制御に関するより厳しい要件、そして技術的な制御に対するニーズの高まりと、それに伴う長期的な自律性とガバナンスへの関心を生んでいます。」* その結果、ほとんどすべての大手企業が、クラウドベースのソリューションに完全に依存するのではなく、自社内で生成AI機能を構築する方向へと進んでいます。
このようなプライベートAIインフラへの移行は、新たなセキュリティ上の考慮事項を生み出しています。その主なものは以下のとおりです。
- 機密性の高いトレーニングデータを漏えいから保護すること
- 複雑なAIのサプライチェーンやコンテナ化されたアーキテクチャを保護すること
- AIモデルの汚染や悪用を防ぐこと
- ハイブリッド環境全体にわたってインフラのセキュリティを確保すること
- AIシステムに対して適切なアクセス制御を実装すること
AIファクトリーによるビジネス促進
トレンドマイクロとNVIDIAの連携は、データ、サービス、オープンアーキテクチャ、インフラストラクチャを統合する包括的なフレームワークを通じて、AI導入を加速させつつ、データ主権を確保するという課題に対応しています。


トレンドマイクロのAIファクトリー実現ソリューションには、以下のような取り組みが含まれます。
包括的なセキュリティ
Trend Vision One™ Sovereign Private Cloud(SPC)は、AIによるサイバーセキュリティを提供し、すべてのデータ(メタデータを含む)が自国領域内または指定された場所にとどまるようにする100%のデータ主権と管理を実現します。このソリューションは、Trend Vision One™ プラットフォームの機能を活用しており、メール、クラウド、ネットワーク、エンドポイント、データ、IDといった各レイヤーにわたる包括的かつ先回り型のセキュリティを提供します。柔軟な導入オプションにより、厳格な主権要件やコンプライアンス要件を満たしながら、強固なセキュリティを確保します。
GPU加速によるAIセキュリティ
NVIDIA Morpheus AIフレームワークおよび NVIDIA NIMマイクロサービスにより、リアルタイムかつGPUで加速されたリスク検知と分析が可能となり、リスクの検出速度と精度を大幅に向上させます。AIインフラへの投資が急増する中、このアプローチは極めて有効です。Gartnerによれば「2028年までにAI最適化型IaaSの支出は792億米ドルに達し、2024年から2028年の4年間で年平均成長率(CAGR)は83.1%に達する」と予測されています。** 実際の現場では、GPUで加速されたデータパイプラインを活用し、データ主導の意思決定を迅速化してきました。MorpheusとNVIDIA CuDFを用いて、最新のデータセキュリティ態勢管理(DSPM)ソリューションを構築しており、テレメトリストリーム内の機密データを特定し、複数のデータソースにまたがるセキュリティ検出結果を相関させ、AIによるインサイトを活用して潜在的な攻撃経路を予測しています。これにより、AIとデータの運用において、スピードを損なうことなく、セキュリティとプライバシーを中核に据えることが可能になります。
データ損失防止(DLP)
NVIDIA Morpheusと NVIDIA RAPIDS cuDF を活用したデータ損失防止では、スループットを20倍に向上させ、コストを50%削減する成果が得られています。
プライベートAIインフラ導入における主な利点
この統合ソリューションは、プライベートAIインフラを導入する組織に対して、以下のような大きなメリットをもたらします。
- 導入の簡素化:あらかじめ検証されたソリューションにより、価値実現までの時間を短縮し、「自前のセキュリティ」に伴う複雑さを排除
- 保護の強化:データからモデル、インフラまで、AIスタック全体にわたる包括的なセキュリティ
- データ主権の確保:Trend Vision One™ SPCを活用することで、機密データに対する完全な管理を実現
- 規制遵守の支援:厳格なコンプライアンス要件に対応しやすい設計
- 運用効率の向上:自動化されたAI駆動型の脅威検出と対応により、セキュリティ運用を効率化
- 人材不足への対応:あらかじめ統合されたソリューションと簡素化された管理により、専門知識への依存を低減
このソリューションは、機密性の高いアプリケーションに対応するプライベートAIインフラを構築するすべての企業にとって有用ですが、とりわけ、以下のような厳格なコンプライアンス要件を持つ政府および重要インフラ分野の組織に最適です。
- 政府機関
- ヘルスケア
- 金融
- 通信
- エネルギー
- 製造
- 緊急対応機関
- 交通機関
- 上下水道
トレンドマイクロのCOOであるケビン・シムザー(Kevin Simzer)は次のように述べています。「当社のプラットフォームは、クラウド、オンプレミス、ハイブリッド環境、さらにはエアギャップ環境においても、セキュリティ運用を自動化、簡素化、統合することを目指して設計されています。お客様の現状に応じて柔軟に対応することが当社の理念であり、それが戦略的な提携の原動力にもなっています。NVIDIAとの協業を通じて、効果的な脅威防御を阻む障壁を取り除いていけることを大変嬉しく思います。」
このソリューションを導入することで、各組織はAIの取り組みを安心して加速させることができ、堅牢なセキュリティを確保しながらコンプライアンスを維持し、最も機密性の高いデータを保護できます。AIは、潜在的なリスクから安全な競争力へと進化するのです。
詳細はこちら:
*Gartner, Market Guide for Digital Sovereignty Solutions (ID G00818332), Dennis Smith, Rene Buest, Alessandro Galimberti, 2025年5月5日
**Gartner, Forecast Analysis: AI-Optimized IaaS (ID G00821602), Hardeep Singh, Colleen Graham, 2024年12月17日
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参考記事:
Trend Joins NVIDIA to Secure AI Infrastructure with NVIDIA
By: Trend Micro
翻訳:与那城 務(Platform Marketing, Trend Micro™ Research)