2030年の世界、テクノロジと私たちの生活はいかに?このドラマでは、架空の国家「ニュー・サン・ジョバン」を舞台に、未来に起こりうるさまざまな出来事が繰り広げられます。死後も生きるデジタル人間、人体埋め込み型チップを使った自動診療と処方箋、家で3D印刷して食べるごはん。一見、荒唐無稽にも思われるようなアプリケーションのほとんどは、今日私たちが親しんでいるテクノロジの発展形です。
わくわくするような未来のテクノロジですが、その実現には今日をはるかに超えるデータが必要となり、ネットワークへの依存も高くなることでしょう。それに正比例して、サイバー脅威がますます大きくなることは、想像に難くありません。
架空国家ニュー・サン・ジョバンでは、高度に発達したコネクティビティ、AI、拡張現実が社会のあらゆる側面に影響を与えます。
神経にインプラントを行えば、バイタルサインの常時監視はもちろん、意思ひとつで義手をコントロールすることができるようになります。仮想空間は現実空間と同じように体感できるようになり、ゲームの世界と現実との境目はもはや消失します。体内、体外のあらゆるセンサーは足りない栄養素や必要な薬に目を光らせ、家庭の3Dプリンターはそのデータをもとに食品や処方薬を吐き出します。
製造業のサプライチェーンは、すべてクラウドを通して自動で管理運営されます。人間の従業員は、自動化された作業の確認、自動修復できない重大なエラー対応、そしてビジネス戦略策定の3つの活動だけに携わることになるのです。
2030年のテクノロジがもたらす、サイバー脅威の拡大高度なコネクティビティは、市民・政府・企業だけでなく、サイバー犯罪者にもメリットをもたらします。人々がソーシャルメディアに残す莫大なデータは、肉体の死後も仮想生命を持ち、ネットワーク上で活動を続けます。そして、デジタル化された個人として新たなデータを生み出し続けます。事実とフィクション、実在する人間とデジタル人間の境界線はますますあいまいになり、駆け出しのサイバー犯罪者でさえも悪用できる新しい攻撃ベクトルを生み出し続けています。
そのような社会では、個人のバイタルデータなど、機密性の高いプライバシーデータまで単一デジタルIDに紐づいて管理されるべきかどうか、社会を揺るがす大議論となるでしょう。
詳細個人データの統合管理が実現すれば、人々の「よい行い」(たとえば、ゴミの正しい分別)を奨励するような施策展開は容易になり、行政の効率化は加速します。また、サイバー犯罪者の洗い出しにも一役買うことでしょう。一方で、そのデータの一部でも犯罪者の手に渡った場合の影響は、計り知れません。
企業関係者にとっては、知的財産の盗難も依然として懸念です。設計データの搾取や転売のほか、データポイズニング攻撃を防ぐ必要もあります。
生産プロセスが攻撃された場合、被害はダウンタイムだけでなく、商品そのものの生産プロセスの改ざんに及ぶこともあるでしょう。食品や医薬品の製造を手掛けている場合は、被害は甚大なものになるかもしれません。
さらに、サービスとしての犯罪(Crime as a Service)が急増すると、技術的なスキルなどほとんど持たない個人であっても、大規模な犯罪を企てることができるようになります。そうすると、サイバー犯罪集団はますます増加するでしょう。AIを利用した攻撃と相まって、どのような組織でも攻撃を完全に免れることは難しいようです。
Project 2030の制作を実現した、
脅威インテリジェンスについてこのウェブドラマの原作であるProject 2030レポート執筆には、デジタル倫理やAIなどの新興技術の誤用に関する専門家で、元Facebookの欧州・中東・アフリカ地域のTrust & Safety担当マネージャー、現ボーンマス大学客員教授のVictoria Baines博士と、トレンドマイクロのセキュリティリサーチバイスプレジデントであるRik Fergusonが携わり、2021年5月に公開されました。
検討にあたり、これまで確認されたサイバー攻撃やサイバー犯罪事例の分析をはじめ、情報セキュリティやデータ保護、法執行、国際関係の各分野における100人以上の専門家の意見のヒアリング結果、新興テクノロジに対する広範なホライゾンスキャニング※1を参考にしています。
ウェブドラマでは、このような将来の姿を、リアリティをもって描き出しています。ぜひ全エピソードをお楽しみください。皆さまのシナリオプラニングの一助としていただけますと幸いです。
視聴いただく際には、ぜひ作中人物相関図をご参考いただき、理解を深めていただければ幸いです。
※1 ホライゾンスキャニング:今後大きなインパクトをもたらす可能性のある変化の兆候をいち早く捉え、将来的な展望を得ることを目的とした調査・分析活動。社会や経済、環境、政治分野などへの影響が大きいと考えられる科学技術分野の新興テクノロジが調査対象となることが多い。未来学の1つとされる。
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