フィッシング
スマホ着信の約4件に1件が詐欺・迷惑電話!防犯アプリでできる対策
トレンドマイクロの詐欺電話対策製品のテレメトリデータの分析調査から、利用者のスマートフォン内の電話帳への登録がない電話番号からの着信のうち、約4件に1件(2025年8月)が詐欺・迷惑電話であることが明らかになりました。
はじめに
警察庁の発表によると、2025 年上半期の特殊詐欺の認知件数は 13,213 件(前年同期比:+4,256 件、+47.5%)、被害額は 597.3 億円(前年同期比:+369.4 億円、+162.1%)と、前年同期に比べて総認知件数、被害総額ともに著しく増加しています。
犯行の入口となっている「当初接触ツールの割合」は、電話が 79.1%(前年同期比:+2.9 ポイント)と8割近くを占める状態となっています。オレオレ詐欺や架空料金請求詐欺では、高齢者以上に 20 代及び 30 代の若い世代にも被害が広がっています。特に、ニセ警察詐欺の認知件数は、30 代が 973 件と最も多く、次いで 20 代が 884 件となっており、若年層など現役世代の詐欺被害が拡大しています。
これらの詐欺被害の背景には、電話を悪用する”古くて新しい詐欺”が、固定電話だけでなく、スマートフォンを狙っていることが挙げられます。すべての世代に「詐欺・迷惑電話対策」が求められています。
詐欺・迷惑電話の現状
トレンドマイクロの詐欺電話対策製品のテレメトリデータの分析調査から、利用者のスマートフォン内の電話帳への登録がない電話番号からの着信のうち、約4件に1件(2025年8月)が詐欺・迷惑電話であることが明らかになりました(図1)。 2025年1月に 25.4% だった詐欺・迷惑電話の割合は、春にかけて一時的に 15% 台まで下がったものの、夏にかけて再び上昇して高止まりの状態となり、2025年8月は 23.4% でした。
犯罪者による詐欺・迷惑電話の攻撃の”波”は、社会情勢や利用者の行動に連動している可能性も見えてきました。利用者はスマートフォンで詐欺電話対策の機能を活用することで、警告や通知によって脅威を可視化し、詐欺・迷惑電話をブロックすることでリスクを低減できます。
※Android利用者・国内/国際電話(電話帳未登録番号)からの着信
主な手口と特徴(着信)
国際電話の悪用
トレンドマイクロの調査では、詐欺電話番号として主に国際電話が使われていることを確認しています。
詐欺電話番号の発信元となる主な地域(国番号)は、北米地域(+1)、中国(+86)、イギリス(+44)、国際フリーフォン(+800)、衛星通信サービス(+870)、国際ネットワーク(+881/+882/+883)、国際プレミアムレート(+979)などを確認しており、国番号として未割り当ての番号(+809/+83など)の「+8」から始まる番号も確認しています。また、国際電話は「国際ワン切り詐欺」と考えられる詐欺電話でも悪用されています。
日常的に国際電話を利用する機会が少ない方もいると思いますが、ご自身やご家族の海外旅行や海外出張先からの緊急連絡、海外の企業が運営するSNSやインターネットサービスの登録や認証などで、国際電話からの着信が必要になる場合もあります。国際電話番号の悪用が増加しているため、正規の国際電話との見分けが困難となっています。
電話番号を偽装(スプーフィング)して着信させる手口
トレンドマイクロの調査では、「実在しない電話番号」に偽装(スプーフィング)して着信させる手口を確認しています。電話番号の番号規則に準拠しない形式(実在しない桁数の番号など)や、不規則でランダムに作成されたと考えられる番号など、不審な電話番号を多く確認しており、そのほとんどが詐欺電話となっています。
また、「実在する電話番号」に偽装(スプーフィング)して表示させる手口も確認しています。2025 年上半期に、ニセ警察詐欺でも「実在する警察署の電話番号」に偽装した大規模な攻撃を確認しており、多くの被害が報告されています。
自動音声を使ったロボコール
国内でも電話の自動音声応答システム(IVR)を活用したサポート窓口やサービスを提供している企業が増え、自動音声は選挙の支援の呼びかけや世論調査などにも使われるようになりました。その一方で、自動音声による不審な着信も増加し、そこから詐欺に誘導される事例も報告されています。
自動音声を使ったロボコールは、主に「サービスの停止」「未納料金」「法的措置」などの不安を煽るメッセージを流し、利用者に「1」や「9」などの番号を押す操作をさせて、担当者(オペレータ)になりすました犯罪者と通話を開始させる手口などで悪用されています。また、電話の音声通話を利用してメールアドレスや口座情報などを詐取しようとする「ボイスフィッシング(ヴィッシング)」や、特殊詐欺が疑われる予兆電話や迷惑電話でも、自動音声応答システムによる音声通話が悪用されています。
犯罪者は自動音声を使って効率的に騙されやすい人を探し出し、様々な詐欺へと誘導しています。
予兆電話と迷惑電話
警察庁の発表(2025 年上半期)によると、電話の相手方に対して、住所や氏名、家族構成、資産や利用金融機関等を探るなどの「特殊詐欺が疑われる電話(予兆電話)」の件数が 165,292 件(前年同期比:+93,834 件、+131.3%)と増加しています。
トレンドマイクロの調査では、迷惑電話や不審な電話の多くは、「0800」や「0120」からはじまるフリーダイヤルや、「050」からはじまるインターネット回線を利用したIP電話サービスが使用されています。これらの迷惑電話には、不審なアンケート調査を名乗るものや、悪質な営業や勧誘の電話もあり、受け手にとって不要で迷惑な内容となっています。
また、予兆電話や迷惑電話は、詐欺の手段として利用されることもあるため、注意が必要です。利用者が電話で個人情報や利用状況を伝えてしまうと、そこから詐欺に誘導されたり、犯罪者が自宅に訪問したり、強盗の被害に遭う可能性もあります。このような不審な予兆電話や迷惑電話への対策も求められています。
主な手口と特徴(発信)
詐欺・迷惑電話は「着信」だけでなく「発信」にも注意が必要です。
知らない電話番号の着信履歴に注意
詐欺・迷惑電話を着信した後に、スマートフォンに残った着信履歴から電話を折り返して、詐欺被害に遭う事例も確認しています。また、国際電話に折り返してしまうと、「国際ワン切り詐欺」などで高額な通話料金を請求される可能性もあります。
スマートフォンの通話スクリーニング機能に油断しない
一部のスマートフォンには、通話スクリーニング機能が付いたものがあり、不明な発信者からの着信に対して、スマートフォンのAIが自動的に相手の名前と用件をたずね、その内容をテキストで表示する機能があります。この機能によって、電話に出る前に相手を確認することができますが、詐欺電話の犯罪者が別人に「なりすまし」ている可能性もあるため、メッセージ内容だけで相手を判断して信頼しないようにする必要があります。
サポート詐欺が再び増加
サポート詐欺は、利用者がインターネットを閲覧中に偽のウイルス感染警告などを表示し、利用者の不安をあおって、偽の警告画面に表示された詐欺電話番号に電話をかけさせて金銭を騙し取ったり、遠隔操作ソフトをインストールさせたりする詐欺です。こちらも国際電話が悪用されることが多く、利用者が詐欺電話番号に発信して詐欺に巻き込まれるため、こちらも詐欺電話対策(発信)が課題となっています。
2025 年 5 月 30 日の警察庁の発表によると、警察庁とインド共和国・中央捜査局 (CBI)との国際共同捜査で、インド国内のサポート詐欺グループのコールセンターを摘発し、同国籍の被疑者 6 人が検挙されました。トレンドマイクロの個人利用者向けサポートセンターで集計しているサポート詐欺の報告件数(図2)は、6月に大幅に減少しており、検挙の効果があったと考えられます。しかし、7月以降の報告件数は再び増加傾向にあり、9月にはサポート詐欺サイトの増加傾向(図3)も見られました。サイバー犯罪者側で犯罪インフラの再整備や新たなサイバー犯罪者の参画が背景にあると推測され、引き続きサポート詐欺への警戒が必要です。
詐欺対策への取り組み
詐欺電話を通じた特殊詐欺等被害の増加を受け、政府でも犯罪対策閣僚会議において「国民を詐欺から守るための総合対策2.0」を決定し、一層複雑化・巧妙化する詐欺等について立ち後れることなく、政府を挙げた取組を抜本的に強化することを発表しています。地方公共団体や民間事業者など官民一体の連携・協力がますます重要であると位置づけています。
トレンドマイクロでは、これまでも全国の警察機関などと密に連携し、特殊詐欺・ネット詐欺対策の強化に向けて積極的に取り組んできました。双方による意見交換や様々な検討・施策を重ねていく中で、固定電話を対象とした対策は国際電話不取扱受付センターにおける国際電話サービスの利用休止や防犯機能付き電話機の設置など進んではいるものの、スマートフォンを介した詐欺への対策がまだ十分とはいえない見解が共有されました。また昨今の被害状況を鑑みた際に、スマートフォン利用者のリテラシーの向上も重要な一方で、最新技術の力も活用した対策の普及も急務であると考えています。
個人利用者は、ご自身やご家族が所有するスマートフォンの「詐欺・迷惑電話対策」を検討することが求められています。また、不審な電話番号や予兆電話を知り得た場合は、警察や関係機関の窓口に連絡して報告したり、詐欺・迷惑電話対策アプリの報告機能などを活用して迅速に通報することで、社会全体で詐欺対策を強化することができます。
被害に遭わないためには
詐欺・迷惑電話対策のために、個人利用者ができる対策もあります。
- 知らない番号からの電話には出ないようにする。(大切な電話連絡が取れずに、生活に支障がでる場合もあります)
- 公的機関や企業からの連絡の場合も、公式ウェブサイトなどで電話番号を確認して、自分から電話を掛け直す。
- 不審な電話で個人情報や金融情報を確認されても回答しない。また、警察(ニセ警察)が電話からLINEやSNSへ誘導して、捜査を要求しても応じない。
- 不審な電話は、すぐに切って、警察や関係機関に相談する。
- スマートフォン向けの特殊詐欺・迷惑電話対策アプリ(防犯アプリ)を利用して、最新技術を活用する。
トレンドマイクロ製品を活用した「プロアクティブ」なセキュリティ対策
詐欺対策に特化したスマホ向け防犯アプリ「トレンドマイクロ 詐欺バスター」は、より先進的なAI技術を組み合わせることで、巧妙化する詐欺の脅威からあなたを守ります。すべての機能が使える有償版や体験版だけでなく、有償版の機能の中から、特に詐欺・迷惑電話のブロック機能に焦点を当てた無料版も提供しています。
詐欺バスターの「詐欺電話対策」機能は、特殊詐欺・迷惑電話の発着信時の「警告」や「ブロック」など、利用者に合わせた柔軟な設定が可能になっています。また、スマートブロック設定を有効にすることで、Android版では国際電話や知らない電話番号からの着信を自動的に拒否することもできます。その他にも便利な機能があり、知らない電話番号からの着信時に、詐欺バスターが提供する膨大な電話帳データ(法人や店舗等)を参照し、スマートフォンの画面に通話先の情報が自動的に表示されるため、相手を確認することを手助けしてくれます。
詐欺バスターの「詐欺チェック」機能では、スクリーンショットや写真から生成AIによる詐欺判定ができます。詐欺・迷惑電話に誘導するための、不審な警告表示のスクリーンショットや、不審な手紙やハガキなども写真で撮影し、詐欺バスターで詐欺の可能性を判定することができます。
トレンドマイクロのセキュリティ対策製品は、常に変化し巧妙化する「詐欺」を未然に防止することを支援します。守る側の対策もAIを活用した「プロアクティブ」なセキュリティ対策へと進化させることができます。
参考情報:トレンドマイクロ 詐欺バスター 製品説明(YouTube)
調査協力:トレンドマイクロ株式会社
岩井 雄大(コンシューマテクニカルサポート)
執筆:本野 賢一郎(詐欺対策チーフアナリスト / Scam Doctor)