第47回SMILE PROJECTレポート

第47回SMILE PROJECTは2019年の台風19号により千曲川の堤防が決壊。大きな被害を受けた長野県長野市長沼地区にて活動しました。
東京、大阪から参加した10名の社員の支援活動を東日本営業本部 細川がレポートします。

■現地の状況
今回の活動は災害NGO「結」の方々と連携し活動しました。1日目、北部災害ボランティアセンターとなっている長野市役所 長沼支所(通称:津野サテライト)へ向かうべく、長野駅から車で走ること20分程度。今までに見たことのない景色が広がりました。窓ガラスは割れ、外壁に残る水位の跡は2階部分を優に越し、家屋の殆どが半壊、全決壊している状況でした。進むにつれて一変していく景色に車内は緊張感が走りました。濁流は家や車を飲み込み、電柱までも曲げてしまう想像を絶する威力であること、改めて自然災害への恐怖を感じました。

センターに到着し、活動内容について説明を受けました。
りんごが有名な長沼地区では未明に氾濫した川の水により、2~3mの高さまで浸かってしまった。元々道も狭いのに加え、流れ着いた瓦礫により、重機も入れず、ほぼ人力での瓦礫撤去。長沼地区を含め大きな被害がでたエリアでは廃棄物の集積所の確保ができなかったために各所に勝手仮置き場が発生し問題となった。災害対策本部、行政、社協、NPOなどの民間団体で連日連夜協議を重ね、オペレーションを整備したと仰っていました。連日数百名単位の多くのボランティアさんが入る。私たちが訪れた前日も平日でありながら900名のボランティアさんが活動されたとのことでした。

「11月には雪が降る・・・それまでに・・・」

そして、今必要となってきている活動は二つ。一つは家屋に流れ込んだ土砂の掻き出し作業。もう一つはりんご農園の再生支援。農家さんの多くは自宅も被災しており、農園にまで手を付けれていない。そして農園の再生を諦め、撤退を考えている農家さんもいらっしゃるというお話でした。
自宅の被災に加え、何年、何十年も心を込めて育ててきたりんごの木、家業である農園を一瞬にして失ってしまった方々のことを思い、非常に心が痛みました。
そして今回は実験的に農業ボランティアとして被災された、りんご農園でのごみの掻き出し活動をするということでした。

■活動1日目
農園の景色は想像をはるかに超えていました。

もぎ倒れているりんごの木
粘土状の畑に大量に落ちている収穫期を迎えた泥まみれのりんご
木々の間に挟まる収穫用のかご
目線の高さ程の立派な水車の羽根
学校などで見かけるプラスチックのロッカー、家庭用冷蔵庫
泥に埋もれたタイヤや一斗缶
河川敷から流れ着いた仮設トイレ
ご高齢となった農家の方が木に登れないからと最近購入した収穫用の重機
泥で変色し、大量の水を含んだ思い出の詰まったアルバム

甘く、果汁たっぷりの美味しいりんごが収穫できる農園内には、
「なぜこんなものがここにあるのだろうか」 というものが沢山流れ着いていました。

私たちはこの流れ着いたものを一つ一つ農園内から掻き出すお手伝いをさせて頂きました。 主な作業としては以下3つ。

  1. 農園内のごみや収穫ラックの掻き出し
  2. 木材、プラ、危険物に分別したものを一時集積所となっている赤沼公園へ運搬
  3. 収穫用のラックを農協へ運搬

農園内は泥でぬかるみ、足がすね位まで埋もれる程でした。ごみの混ざった泥によって埋もれてしまったりんごの木は息も出来ず、とても苦しいだろうなと思いました。泥を一刻も早く掻き出さなければ、りんごの木は再び実を成すことができません。重機を入れようとも重機が埋もれてしまい、まだまだ入れる状態にはないとのことでした。

休憩時にはりんごを頂きました。お世話になった農園さんでは、より糖度の高い黄色いりんごも栽培されていました。糖度が高すぎるがゆえ、下のほうから亀裂が入ってしまう。そのため栽培も難しく希少価値が高いそうです。農家さんが長い時間をかけ、思いが詰まったこだわりのりんごは、今まで食べてきたりんごの中で一番甘く、果汁に溢れていました。また同時に思いの詰まったりんごを誰の口にも入ることもなく、廃棄しなければならないという状況に言葉が詰まりました。


■活動2日目
1日目に続き、2日目も同じりんご農園さんでの活動をさせて頂きました。前日に掻き出した災害ごみを品目別にトラックに積み込み、集積所までピストン輸送するという内容です。1日目は軽トラック2台でのピストン輸送でしたが、2日目はダンプトラックという強力な助っ人が登場。被災地に入り、軽トラの万能さに感心していましが、ダンプトラックは大きなもの、積み込める量も圧倒的で作業効率が大幅にアップしました。

2日間で掻き出したごみを全て運搬し、私たちは活動を終えました。
農家の方からかけていただいた 「ありがとうございます」 の言葉は忘れられません。

今回ボランティアに入らせていただいた農家さんも、変わり果てた農園の姿に農園を継続するか迷われていたそうです。災害ごみの撤去は、小さな最初の一歩に過ぎません。今後は農園内の泥の掻き出し、伐採する木の選別などをし、どうにかしていくことを考えたいと仰っていました。りんごの木は実がなるまでは5年以上と言われているそうです。継続的な農業ボランティアのサポートは必要不可欠であると感じました。

■活動を振り返り
甚大な被害をもたらした台風19号から一ケ月が経過した被災地。実際に現地で見て、聞き、感じるということが大切だと感じました。報道陣も多く見かけましたが、報道されてない現実もそこには存在します。赤沼公園に集められた山積みの災害ごみは町のすべてを飲み込んだ水害被害の恐ろしさを物語っていました。
私も多摩川付近に自宅があります。台風19号では数時間の停電で済みましたが、浸水被害にあわれたご近所さんもいます。緊急速報が数分置きに鳴り響いている中、根拠もなく大丈夫だろうと思っていた節があった自分を恥ずかしく思います。昨今頻発する災害は、想像を絶する規模の被害をもたらし、生活を一瞬にして変えてしまいます。いつ、何が起きるかわからない自然災害。常に自分事と捉え、備えをすることの重要さを再認識しました。

現地には日々 500名を超えるボランティアの方々が被災地に入り、支援活動をしています。行政、自衛隊、民営団体や企業、垣根を超えた連携、人と人との繋りは印象的でした。
皆で力を合わせ、協力し合い復興に向けて少しずつ歩んでいる被災地。被災地を忘れないという観点でも継続した支援をしていきたいと思いました。

2019年11月17日
細川 理紗