~被害者1人あたり数百ドルから数十万ドルに及ぶ金銭的損失~
2025年9月24日
トレンドマイクロ株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長 兼 CEO:エバ・チェン 東証プライム:4704、以下、トレンドマイクロ)は、高収入の在宅ワークを装った「タスク詐欺」の解明レポートを本日公開しています。
近年、世界各地で「高収入の在宅ワーク」を装ったタスク詐欺が急増しています。動画への「いいね」やレビュー投稿といった単純作業をすれば収入が得られると偽り、被害者から保証金や追加投資を引き出すこの詐欺は、被害者1人あたり数百ドルから数十万ドル規模の深刻な被害を引き起こしています。今回の調査では、その実態と背後に潜む国際的な犯罪ネットワークを明らかにしています。
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米連邦取引委員会(FTC)※1によれば、2023年全体では約5,000件だったのに対し、2024年上半期には約20,000件のタスク詐欺が報告されています。タスク詐欺は多くの場合、メッセージアプリやソーシャルメディアを通じて「高収入の在宅ワーク」の求人として拡散され、就職を探している人、副収入を求める人などがターゲットになっています。
※1: https://www.ftc.gov/news-events/data-visualizations/data-spotlight/2024/12/paying-get-paid-gamified-job-scams-drive-record-losses
典型的な手口は、まず少額の報酬を支払って、ターゲットの信頼を得ることから始まります。その後、詐欺師は「追加タスク」と呼ばれる高収入を謳う業務を提示します。しかし、その次の作業を行うためには保証金を預けるよう求められます。被害者は、これまでに得た収入を失わないようにと指示され、口座に資金を追加するよう誘導されます。その際、すべての預託金と報酬は作業完了後に戻ってくると信じ込まされます。ところが実際には、どれだけ稼いだと表示されても、詐欺師は必ず理由をつけて全額を引き出せないようにし、さらに追加の入金を要求します。最終的には、被害者が資金を工面できなくなり、関与を断念せざるを得なくなります。結果として、それまでに預けた金額と「稼いだ」と表示されていた金額の両方を失ってしまいます。
今回の調査では、「Cloverstone Digital」「Robert Half」「Target」など、実在する有名企業になりすました詐欺事例が多数確認されました。正規のロゴや公式サイトのデザインを模倣し、あたかも本物の求人であるかのように装うことで、被害者の信頼を巧妙に獲得しています。
被害額は深刻で、米国では最大80万ドルを失った事例が報告されています。さらに、TrustpilotやRedditといったオンライン掲示板には、数千ドル単位の被害報告が相次いでいます。
被害者がタスク詐欺によって7万5,000米ドルを失ったことを報告したBBBの記録と、被害者が80万米ドルを失ったことを示すTrustpilotの記録
トレンドマイクロが調査の結果、詐欺サイトの多くはドメイン登録事業者「GNAME.com Pte.Ltd.」を経由して登録され、Cloudflareのネットワークを利用して実際のサーバを秘匿していることが判明しました。また、CloudFlareネットワーク外のIPアドレスを手掛かりに調査を進めることで、同じグループに関連し、過去の詐欺活動の一部であった可能性がある複数のドメインを特定することができました。確認したすべてのドメインは「GNAME.com Pte.Ltd.」で登録されており、類似したドメイン構造を持ち、小規模なEC事業者やデジタルマーケティング企業を装っていました。信頼性を高める意図が考えられますが、大規模なセキュリティチームを持たずブランドなりすましの監視が十分でない組織を選んだ可能性もあります。
Gname.com Pte. Ltd. に関連するドメイン一覧
さらに、詐欺サイトのJavaScript内に簡体字中国語で書かれた行を確認しました。これらのタスク詐欺ページの多くにはソースコード内のコメントとして簡体字中国語が含まれており、タスク詐欺に関わるサイバー犯罪グループの少なくとも一部の出自を示していると考えられます。
簡体字中国語のコメント
タスク詐欺は、FacebookやInstagramで販売される大量SMS送信サービス、さらにTelegramやWhatsAppといったメッセージアプリを利用して拡散されています。サイバー犯罪者はこれらのサイト上でサービスを販売・宣伝し、ほとんど障壁なく詐欺活動を始められる状況を作り出しています。複雑なツールを持たない犯罪者でも、ソーシャルメディアの広告を通じて活動が可能になります。調査では、VoIP(インターネット通話)、セットアップソリューション、AIを利用した大量SMSキャンペーンなど、この種のサービス専用のFacebookグループを50件確認しました。
InstagramでのAI搭載SMSキャンペーンの広告
タスク詐欺や類似のサイバー脅威から身を守るためには、その手法を知り、正しく警戒することが重要です。まず、正規の企業が採用時に前払い金を求めることは原則ないため、求人の応募過程で「保証金」や「前払い」を要求された場合は、警戒すべきです。加えて、メッセージアプリやSNSを通じて突然届く求人オファーにも注意が必要と言えます。
「トレンドマイクロ 詐欺バスター」は通話、テキストメッセージ、ウェブサイトに対するリアルタイムの詐欺検出や、不審なコンテンツをその場で確認できる機能など、詐欺から守るためのさまざまな機能を提供しています。また、「このSMSは本物か」「この電話番号は正規のものか」「このFacebook広告は正しいのか」「このウェブサイトは偽物か」といった疑問にも即座に答えを提供します。
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※2025年9月24日現在の情報をもとに作成したものです。今後、内容の全部もしくは一部に変更が生じる可能性があります。
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