第54回SMILE PROJECTレポート

2021年12月3日~5日にかけ、第52回に続く活動として気仙沼大島へ伺いました。また、気仙沼市内や陸前高田市、南三陸町にて震災遺構の見学や語り部、桜ライン311植樹など、今回も濃密な時間を過ごすことができました。新型コロナの感染状況が落ち着いてきたように思われるものの、予断を許さない状況下で私共を受け入れてくださった訪問先の皆様に感謝いたします。
今回はインフォメーションサービス本部の白銀がレポートをお送りします。

[明海荘にて3日目の作業後のグループ写真]

3回目の参加にあたり
私は2015年3月と2019年3月に同プロジェクトの気仙沼ボランティアに参加させていただき、今回が3回目となります。
前回は、気仙沼大島の橋が開通する直前でした。今回は、橋が開通し、その後のコロナ・・・、そして連続テレビ小説の舞台と、目まぐるしい変化の中で以前伺った訪問先の方々の今現在や、町並みの変化を感じ取りたいと思い参加しました。

米沢商会さん (1日目)
昼食をいつもの牡蠣小屋でお腹一杯いただいた後、隣町の陸前高田市にある米沢商会震災遺構を訪れました。
もしかすると「3回も話を聞いて同じでしょ?」と思われる方がいるかもしれませんが、私はお話を伺うたびに変化を感じています。私が初めて米沢さんにお会いした2015年は、震災から4年、お話の途中途中で涙を流されていたお姿を覚えています。 前回2019年は、淡々とお話をされつつ、かさ上げ工事で変化していく町並みに複雑な気持ちを抱いておられたように感じました。

今回、米沢さんの「震災の教訓を伝えるために語り部を続けたい」「来てくれてありがとう」の言葉が印象に残りました。 私たちがスマイルプロジェクトで伺う度に、お仕事の合間を縫って無償のボランティアで語り部を引き受けて下さっていることに、有り難さを感じるとともに、災害に対して常に備えておくことの大切さを忘れず、ことあるごと周りの人に伝えていきたいと思いました。

[米沢商会震災遺構にて]

すがとよ酒店さん (1日目)
毎度お酒を購入させていただいている気仙沼市の酒屋さんです。
初めて伺った2015年は仮設の店舗でしたが、2016年に再建され、前回訪問した2019年は創業100周年の年でした。そして今回は震災から10年の節目になります。店舗2階のミニイベントホールで震災当日の状況から現在までの歩みを写真とともに店主の菅原文子さんに語っていただきました。 節目の年に自費出版された書籍にまつわるお話をされていた文子さんから、とても前向きな印象を受けました。
私にとって、近所の酒屋よりも近くに感じる酒屋さんです。 これからも気仙沼を訪れる際は必ず立ち寄りたい場所の一つです。

[すがとよ酒店にて]

桜ライン311 植樹 (2日目)
陸前高田市内の津波到達点に桜の木を植えて震災の記憶を伝え残す活動をされているNPO法人「桜ライン311」の活動に参加してまいりました。今回、植樹に伺った場所は根崎漁港の近くで、3人で1本、計3本の苗を植樹しました。植樹にあたり、桜ライン311の関係者が地権者との交渉、植樹場所の整地、目印の設置など地道な準備をされていること、植樹後も手入れをしていただいていることを忘れてはなりません。桜を植える場所が震災当時どのような状況であったか、思いを巡らせながら植えさせていただきました。

うれしいことに、植樹の帰り道、前回2019年に植樹した場所を訪れることができ、当時植えた桜が1本も枯れることなく成長している姿を見ることができ感激しました。手入れをしてくださった方々に感謝します。今後も陸前高田を訪れて手入れをしたり成長を見守りたいと思います。

[植樹風景]

[前回2019年3月に植樹した桜]

明海荘さん (2~3日目)
植樹を終え、奇跡の一本松周辺を見学し昼食をいただいた後、気仙沼大島の明海荘へ向かいました。
前回は、フェリーでしたが、今回は2019年4月に開通した橋を渡り島へ入りました。フェリーがなくなり勝手ながら少し寂しい気もしますが、乗り換えや待ち時間、始発と最終便の門限、悪天候で出航できない日がなくなり、島に住んでいる方にとって便利になったのではと思うと、橋ができてよかったと思います。

島に1つしかない信号機を過ぎて明海荘に到着。一同、一息ついた後、ここからが力勝負でした。
2021年10月に伺った際の残作業として、寄贈させていただいた什器を置いたスペースに保管されている大量の椅子やテーブル、食事台を外部倉庫へ移動したり、多数の照明カバーやリネン類など細々したものを片付けさせていただきました。特に役割分担を決めることなく始まった作業でしたが、自然と一致協力し、2時間ほどで移動や片付けを完了させることができました。普段から協力的で親切な方ばかりのトレンドマイクロで働いていて良かったと改めて感じました。

2日目の夜は、屋外の小屋でバーベキューでした。島へ伺うといつも顔を出してくださる地元のたっかさん、清文さんが準備や焼き物をしてくださり、刺身の船盛、脂がのった秋刀魚の塩焼き、蒸し牡蠣、焼き肉、ニンニクが効いた気仙沼ホルモン、おこげがおいしい焼きおにぎり、そして〆のうどんを頂きました。いま思い出すだけでお腹が鳴りそうです。疲れた身体に頂いた食べ物が吸収されていくのを感じました。

明けて3日目は旅館内で朝食を頂いた後、前日片付けたスペースの清掃作業を行いました。心地よくリモートワークを行っていただけるように掃除機と雑巾掛けをさせていただきました。改めて眺めると、社内で見慣れた机と椅子が置いてある何とも言えない不思議な感覚でした。その後、同時に寄贈させていただいたマッサージチェア2台を男湯女湯にそれぞれ運ばせて頂きました。結構な重量でしたが力を合わせれば何とかなるものだと感心しました。私は恥ずかしがり屋なので人前でマッサージチェアに座る勇気は無いのですが、これに限っては次回伺った際に使わせていただこうと思います。

最後に、明海荘オーナーのご夫妻に片付いたスペースをご覧いただき、以前使用されていた頃のことを思い出しながら懐かしそうにされていました。 近々、研修目的の団体が宿泊される予定があるそうで、リモートワークスペースが少しでも有効に活用されることを願っています。

[作業前]

[作業後]

南三陸町 (3日目)
明海荘を後にし、仙台駅まで向かう道中、旧気仙沼向洋高校の遺構前を通り、南三陸町の防災対策庁舎を見学しました。
この建物で起きた悲しい出来事は震災直後から存じ上げていましたが、初めて実際の建物を目の前にし、自然の脅威を改めて感じると共に、当時その場にいた方々の光景を思い浮かべ、何ともいたたまれない気持ちになりました。自分ならどうしただろう、どうしたら一人でも多く助けることができたのだろうと思わずにいられませんでした。遺構として残すか否か、地元の方々の様々なご意見や葛藤があるものと思います。私一個人としては、被害を忘れない、同じ悲劇を繰り返さないために遺して頂けることを勝手ながら希望いたします。

[防災対策庁舎にて]

今回の振り返りとスマイルプロジェクトへの個人的な想い
まず、主な目的である明海荘さんの家具移動を無事終えることができ、同行した皆様、大変お疲れさまでした。テレワークスペースは、用意して終わりではなく今後どのように活用されていくのか、私自身とても興味があります。 会社の会議室のように初めから全てが揃っているわけではありませんが、一緒に作り上げていく所に関わらせて頂いていることがうれしく、楽しく感じます。いつか、気仙沼大島のニュース映像や写真に明海荘のリモートワークスペースが映っていたらいいなと、勝手に思っております。

スマイルプロジェクトは、東日本大震災の被災地支援を目的として、その時々に応じて必要なボランティア活動を行ってまいりました。その後、東北以外の被災地支援、児童養護施設のボランティアなど活動の場を広げております。
(過去の活動は、こちらのバックナンバーページからご覧いただけます)
そのような中、今も継続して気仙沼周辺を訪れる意味を考えてみました。震災から10年が過ぎ、岩手県と宮城県の仮設住宅に住まわれていた方が全て退去したとの報道がありました。陸前高田市のかさ上げ工事は完了し、綺麗で新しい街が出来つつあります。一見、復興したように見えますが、「来てくれてありがとう、また来てほしい」と仰っていた米沢さんは、震災被害の風化を懸念されていました。今も目の前に当時の建物があるような口調で語り部をされていた米沢さんのお気持ちを推察するに、町の記憶、ご家族の記憶、震災のつらい記憶も含めて忘れたくないという強い思いがあるように感じました。
語り部を通じて、それらの大事な記憶を私たちに共有するとともに、同じ悲劇を繰り返さないで欲しいという願いが、語り部を続ける原動力になっているのではないかと思います。

震災の記憶は、生き続ける限り背負っていかざるを得ないものと思います。10年経過したところで忘れることができるものでは無いと思います。スマイルプロジェクトは、震災をきっかけに繋がったご縁を大切にし、これからも私の出来ること、したいことがある限り寄り添っていくことができれば幸いに思います。

[すがとよ酒店内にて]

<活動内容>
・主な活動
陸前高田市にて「桜ライン311」桜の植樹活動
気仙沼大島の旅館、明海荘に おいてのリモートワークプログラムの為の家具移動

・参加人数:9名 (事前にPCR検査実施済み)

・日程
 [1日目 12月3日(金)]
 東京~一ノ関へ新幹線で移動後、一ノ関~気仙沼へバス移動
 牡蠣小屋にて昼食
 陸前高田市 米沢商会震災遺構見学と語り部
 すがとよ酒店 語り部
 ホテル宿泊 
 [2日目 12月4日(土)]
 陸前高田市にて桜ライン311植樹 
 奇跡の一本松周辺を見学し昼食
 気仙沼大島 明海荘へ移動
 リモートワークスペースの家具移動
 [3日目 12月5日(日)]
 リモートワークスペースの清掃、残った家具の移動、薪割り
 明海荘で昼食のカレーを頂いた後、一路仙台駅へ
 南三陸町防災対策庁舎見学
 仙台~東京へ帰京

活動年月日:2021年12月3日(金) ~ 5日(日)