Azureコンテナセキュリティは、コンテナのライフサイクル全体を通じてセキュリティを確保するための複数の機能を組み合わせたソリューションです。
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Microsoft Azureは、現在市場で最も急速に成長しているクラウドプラットフォームの一つであり、世界のFortune 500企業の95%が導入しています。Azureは、開発者がアプリケーションを自由に構築・管理・展開できるクラウドコンピューティング環境を提供しており、仮想マシン、IoT、コンテナなど、幅広いサービスをサポートしています。Azureコンテナは、クラウドサービスに求められる俊敏性と拡張性を提供するだけでなく、高負荷なインフラ要件にも対応可能な柔軟性を備えています。
しかし、Azure上でコンテナを活用するメリットが大きい一方で、それに見合ったセキュリティ対策の実装が不可欠です。
Azureコンテナを保護する際に考慮すべき事項は以下です。
他のコンテナ環境と同様に、Azureコンテナにおけるイメージのセキュリティ確保は、最も重要な対策のひとつです。コンテナは、リポジトリに保存されたイメージをもとに構築されます。各イメージには複数のソフトウェアレイヤが含まれており、それぞれに脆弱性が潜んでいる可能性があるため、侵害リスクを常に考慮する必要があります。
また、承認されていないイメージの使用を防ぐためには、明確なプロセスとツールの導入が不可欠です。開発環境へのイメージの流入を制御する方法として、イメージ署名やフィンガープリンティングの活用が有効です。これにより、コンテナとそのイメージの整合性を検証できる管理の連鎖(Chain of Custody)を確立できます。さらに、コンテナ開発完了後には、レジストリにプッシュする前に脆弱性スキャンを実施することが不可欠です。これにより、セキュリティリスクを事前に特定し、対策を講じることが可能になります。
最小権限の原則は、Azureコンテナにおいても適用すべき基本的なセキュリティベストプラクティスです。イメージやカーネルを介した脆弱性が悪用されると、攻撃者は複数のクラスタやリージョンへのアクセス、さらには権限を掌握してしまう可能性があります。コンテナが、ジョブの実行に必要な最小限の権限とアクセスで動作するようにすることで、リスクへの露出を軽減できます。従業員が異動や退職をした場合に備えて、不要な権限を削除することで、コンテナの攻撃対象領域を縮小できます。
また、コンテナランタイムから不要または未使用の権限やプロセスを削除することでも、潜在的な攻撃対象領域を縮小できます。
Azureコンテナは、パブリックレジストリまたはプライベートレジストリに保存されているイメージから構築されます。パブリック レジストリからイメージを取得する方が簡単そうに思えるかもしれませんが、セキュリティが保証されるわけではありません。前述のように、コンテナイメージには複数のソフトウェア レイヤが含まれており、各レイヤに脆弱性が存在する可能性があるためです。
パブリックレジストリ上のイメージは、プライベートレジストリ上のイメージよりも悪意のあるソフトウェアが添付されている可能性が高くなります。対して、プライベートレジストリ上のイメージは適切にスキャンされる可能性が高く、リスクが低くなります。プライベートレジストリは管理されており、ロールベースのアクセス制御を備えているため、ガバナンスとセキュリティが強化されています。プライベートコンテナイメージレジストリの例としては、Azure Container Registry、Docker Trusted Registry、Cloud Native Computing FoundationのオープンソースプロジェクトであるHarborなどが挙げられます。
すべてのコンピュータはハードウェア上に構築されています。
カーネルはオペレーティングシステムに組み込まれたソフトウェアであり、ハードウェアとシステムの他の部分が相互に連携するための橋渡しの役割を果たします。仮想マシンとは異なり、コンテナはサービス間でオープンなネットワークトラフィックと共通のカーネルを備えています。ホストオペレーティングシステムのカーネルを共有できることは、コンテナの最大のメリットの一つですが、同時にセキュリティ上の大きな懸念材料にもなります。
実行時におけるカーネルとコンテナ間の分離が不十分な場合、共有カーネルに存在する脆弱性を悪用して、コンテナに不正アクセスされたり、コンテナを乗っ取られたりするリスクがあります。攻撃者は、メモリ内のカーネルデータを改変することで、悪意のあるコードを挿入せずともOSの挙動を操作することが可能です。
移植性、拡張性、そして信頼性の高さから、多くの企業がアプリケーションの実行にMicrosoft Azureコンテナを採用するのは当然のことです。コンテナのライフサイクル全体を通して脆弱性スキャンを実施し、すべてのアクティビティを監視・記録することで、Azureコンテナが安全であることを確認し、セキュアな環境での運用が実現できます。
Fernando Cardosoはトレンドマイクロのプロダクトマネジメント担当バイスプレジデントとして、進化を続けるAIとクラウドの領域に注力しています。ネットワークエンジニアおよびセールスエンジニアとしてキャリアをスタートさせ、データセンター、クラウド、DevOps、サイバーセキュリティといった分野でスキルを磨きました。これらの分野は、今なお彼の情熱の源となっています。