第17回SMILE PROJECTレポート

~忘れること、記憶すること~
第17回目となる支援活動、スマイルプロジェクトに、2014年5月29日~5月31日にかけてトレンドマイクロジェネラルビジネス営業部25名で参加しました。伺った先は東日本大震災から3年が経過した宮城県の気仙沼、気仙沼大島、岩手県の陸前高田です。被災地で見てきた事、3年がたった今行く事の意義について、現地で考えた事をご報告させていただきます。

■気仙沼、陸前高田で見てきたもの 気仙沼は海産物の工場がいくつも再建されていましたが、一方で、未だ撤去されていない廃墟も散見されました。陸前高田は近郊の山を切り崩して地盤の嵩上げ工事を進めている途中で、まだ一面の荒野です。野草以外、ほぼ何もありません。一言で言ってしまえば、私が想像していた以上に再建は進んでいませんでした。

■気仙沼、陸前高田で出会った方々 米沢祐一さん 2014年3月10日、NHKの放送をご覧になった方もいらっしゃるかもしれません。3階建てのビルの屋上(高さとしては4階相当)で15mの津波を生き延びた方です。個人の意思として自らが被災した現場であるビルの保存を決意され、その思い、自らが経験した事を熱く語っていただきました。http://www.nhk.or.jp/ohayou/marugoto/2014/03/0310.html菅原文子さん 目の前でご主人が流され、1年3か月後に遺体として発見されるまでの間、行方不明のご主人へ書かれたお手紙が第2回 KYOTO KAKIMOTO 恋文大賞受賞を受賞し、「あなたへの恋文」として書籍化された方です。なにげない日常生活、家族の大切さを語っていただきました。http://www.koibumi-kakimoto.jp/koibumi_vol02/images/koibumi_vol02_taisyo02.pdf(※受賞した手紙へのリンク。PDFが開きます。)お二方ともに、あれだけの惨事を経験されたにも関わらず、前向きに復興へ取り組んでいるお姿には強烈な印象を受けました。

■被災地を訪ねることの意義 東日本大震災から3年がたった現在、被災地を訪ねる事に意義はあるのでしょうか。被災地は、外から訪ねてくる人々を必要としているのでしょうか。私個人の話でいえば、ボランティア活動自体が初めての経験で、被災から3年が経過した今になって訪ねる事自体に、後ろめたさのようなものを感じていました。何を今更のこのこと訪ねてくるのか?、そう思われるのではないかと不安に思っていました。しかし、今回の訪問に関して言えば、その不安は杞憂でした。お会いした方々は私達を受け入れてくださり、自らの体験を語ってくださいました。では、今、訪ねる事に、果たして意義はあるのか。必要とされているのか。意義は確かにあり、私達は必要とされていると考えます。被災地を訪ねて強く感じた事は、忘れる事、記憶する事それぞれの意義についてです。原発についての報道は今も散見される中で、津波で被害にあった被災地についての報道は減り、日本全体として、あの津波被害については忘れ始めているのではないでしょうか。私個人について言えば、恥ずかしながら、訪問前は東日本大震災=原発事故のイメージが頭の中にできあがっており、今になって津波被害について考える事はありませんでした。現地でうかがった話では、被災地であっても被災当時の記憶は薄れてきているのだそうです。震災から3年がたった被災地では、がれきの撤去が進み、震災遺構は僅かになってきています。被災の記憶を呼び覚ます遺構を解体するか、保存するか、被災地でも議論になっているそうです。津波に襲われた恐怖はもう思い出したくない、早く忘れてしまいたいという声は多いと聞きました。忘れる事によって癒される面があるのだと思います。一方、話をうかがった方々には、自分達の経験が記憶されない事へ強烈な危機感も存在しました。なぜならば、東日本大震災以以前に地震による津波被害は何度もあったにも関わらず、被災した方達には、その当時の記憶・経験はほとんど受け継がれていなかったからです。異口同音に、津波であれほどの被害がでるとは思っていなかった、私達の体験を忘れないでほしい、私たちの体験を次に活かしてほしい、という声を聞きました。人の記憶は、残す努力をしなければ、確実に風化します。被災地を訪ねる意義は、復興への協力だけでなく、その体験を記憶し、広めていく事にもあると考えます。

■最後に この報告を書きながら気が付いた事があります。現在、私は東京で働き、生活しています。この報告は被災地の外部からの視点で書かれた報告だと言えるでしょう。今回見聞きしてきた事は、私事ではない他人事だという認識が自分の中にあるのは偽りのない事実です。
心身共に被災地の方々と1つになって復興に協力するというのは、不可能な綺麗事でしょう。とかく純粋さを尊び、偽善を嫌う私達は、わずかな善意の表出もためらいがちです。しかし、わずかでも良いと思うのです。例えばそれが観光の形をとったとしも。 既述の通り、被災地を訪ね、記憶する、それだけでも意味のある事だと考えます。この報告が、津波被害を受けた被災地への関心を喚起するきっかけとなれば幸いです。
私達25名を受け入れてくださった気仙沼、気仙沼大島、陸前高田の皆様、この機会を提供してくださったトレンドマイクロ株式会社、SMILE PROJECT継続に尽力し、準備してくださった事務局の皆さんに感謝し、本報告を終わらせていただきます。

活動年月日 2014年5月29日(木)~5月31日(土)