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- 第51回SMILE PROJECTレポート
2011年3月11日に起きた東日本大震災から丸10年が経ちました。そして昨年からは「コロナ禍」という新しい試練に世界中の国々が見舞われています。そうした状況の中、2021年3月27日〜28日にかけて希望する社員11名が参加して行われた第51回スマイルプロジェクトに関して、プロダクトマネージャーの岩本がレポートします。
今回の訪問地は宮城県の気仙沼市及び陸前高田市です。当初の予定では3月19・20日に訪問を計画していたのですが、年初からのコロナの感染拡大の影響で政府が首都圏を対象する緊急事態宣言を行い、かつ期間を延長した事により解除された後になるように日程を調整して活動を行いました。また、事前に全員がPCR検査を実施し、感染対策リーダーを設定、過去には恒例となっていた地元の方々との交流会の実施を見送るなど、感染対策を万全とした上でリスクを勘案して従来より期間を短縮しての活動となりました。また、日本全体で感染が非常に流動的な状況であったため、社内で準備に関わった方々及び受け入れに携わった気仙沼と陸前高田の皆様、スケジュールの調整に苦労されたのではないかと想像します。
二日間と日数としては長くはなかったのですが、内容的には盛り沢山でした。
まず移動に使うマイクロバスに気仙沼で観光コンベンション協会の語り部である熊谷様に同乗いただき、移動中に震災に関連する様々なお話や当時と今の景色の移り変わりの説明をして下さいました。実は私は今回、震災後初めて被災地を訪れたので、ニュースや報道番組で得た情報がほとんどでした。しかし、震災直後やその後の経過の写真を見せていただき、お話を伺う事で震災直後は想像を絶する様子や10年かけてようやく今のところまで辿り着いた光景であるというのが身に染みて分かりました。数年前は今より遥かに基本的な街の整備とかさ上げ台地の造成中であったというお話が非常に印象的でした。10年を「まだ」と捉えるか「もう」と捉えるか、復興の道のりは非常に長いものだけに今の状況をどう捉えるかは人それぞれでしょう。今のかさ上げされた土地に整然と整備された道路や新しい建物を見ただけでは中々破壊の規模は理解しにくく、当時の映像や証言を現在の景色と比べて初めて災害の規模や凄さの実感が湧くので、比較対象となる以前の情報を伝える、という事が非常に貴重である事が分かります。
最初に立ち寄ったのは陸前高田市の消防団の慰霊碑でした。決して人口が多くない町で防災の大きな役割を果たす、本業とは別の役割である消防団としてのメンバーの活動。本業ではないのに、街を守るという高い責任感から非難の誘導や救助を行い、そのために多くの人が身を挺して犠牲になったという、本当に立派な方々を弔っています。
昼食を頂いた牡蠣小屋では、大きくで味の濃い牡蠣と帆立を頂き、気仙沼の素晴らしい海産物を体験できました。10年経ち、元通り….にまでは戻っていないのかもしれませんが、それでもだんだんと漁業が回復しつつあるのは嬉しいですね。美味しい海産物は日本の宝なので、是非このまま回復を続けて欲しいです。
米沢商会の米沢さんの語り部はかなり強烈なお話です。子供を育てた事がある人なら分かると思いますが、初宮参りは家族で最も幸せを実感できる時期・行事の一つです。それが午前にあったのに午後には震災でご両親や弟さんを亡くすというのはまさに天国から地獄に突き落とされるようなものです。その悲しさを乗り越え、一生懸命私たちに当時の体験を細かく説明して再現する米沢さんの気持ちが伝わって来ました。どうしたらその奇跡の体験を生かせるのか、自分のように辛い思いをする人を1人でも減らせるのか。常日頃から災害を想定し、備えつつ、実際に起きたら冷静に行動し、心も強く保つべし…と、お話を伺っていて思った事ですが、いざとなったら本当にそんな事が出来るのかとも思ってしまいます。米沢さんの言葉には日常を普通に生きていた人の気持ちが沢山入っていて、そこを見直したり(常識を)疑ったりする必要があるという、本当に難しいテーマを教えて頂きました。
100年以上続いているというすがとよ酒店で菅原さんは米沢さんと同じく、肉親を目の前で失った辛さを乗り越えて何とか次の天災の時に同じ辛い思いをする人が少しでも減れば…という優しい思いが伝わって来ました。印象的だったのは、やはり地震が起きるまでは当たり前の日々を過ごしていたのに、地震と津波と共にそれが一切変わってしまったという事実を100年も前からあったお店でも経験する事になってしまったという事です。
伝承館では海の間近にあった水産高校が受けた大きな被害と、逆に建物や設備への被害とは裏腹に1人も亡くならなかったという素晴らしい避難結果を教わりました。被災した建物や内部が保存されている事で津波の破壊力が生々しく分かり、周囲を見渡して如何にその威力を事前に想像するのが難しいのかを実感しました。目の前でパターゴルフをしている方々の風景は平和そのもので、遥か彼方に見える高台まで(徒歩で)移動しないと助からないと言われるとそのギャップに考えさせられます。東京で、旅先で、海の近くにいて大きな地震に見舞われた時に、果たして十分に安全な高所に時間内に移動できるのか、そもそも見知らぬ土地で避難場所を正しく認識出来るのかどうか、色々と考えてしまいました。
そして今回のメインの活動となります、桜ライン311の植樹活動への参加でした。11人で5本の千年桜の植樹を行ったのですが、コロナ禍の影響で運動不足な事もあり、この二時間あまりの慣れない作業が十分に体に応えました。自分達が植えた桜が今後数百年間、津波の怖さと対策の大切さを伝えてゆく手助けになればとの思いで作業を行いました。天気予報は雨であったものの、何と作業が終わるまで降らずに終わった途端に降り出すという何とも運がいい活動でした。しかし、いざ地震や津波が発生したら、天気は容赦無く悪い可能性も大いにあり得る、そんな事も考えさせられました。
二日間を通して思った事ですが、今回の活動のテーマは「震災で被災された方々と共に歩み、トレンドマイクロも成長していきます」でありました。これは実際にプロジェクトに参加してみてなるほど、と非常に強く実感した事であり、トレンドマイクロの社員として、あるいは日本に住む1人の人間として私たちの役割や世の中に貢献する意義というものを改めて考える良い機会であったと思いました。もっとも印象的だったのは、語り部の方々は勿論のこと、お店や旅館でお世話して下さった方々までお会いした全ての方々が、私達の訪問を非常に温かくお迎え下さり、嬉しそうな笑顔で対応頂いた事です。震災から時間が経ち、復興も支援も形が変わる中、「一緒に」いる事 、 人間である以上は触れ合い・話し合い・交流する事が1番のベースであり、それを継続している事やその継続しようという姿勢が何より元気を分ける事につながり、支援につながっているのだと感じました。また会社としてスマイルプロジェクトの継続を支援している事を示す事により、東北の方々に取っては支援に関心がある人が増えるのは元より、もう一つ大事な事としてより多くの人が震災の事を学んで、知って、後世に役に立つ事に繋がる….そんな風に思ってもらえているのではないかと、今回の活動を通じて思いました。また機会があったら植えた桜の成長を確認するために気仙沼や陸前高田を訪れ、そこの人達と触れ合う事ができればと思います。あるいは次は別の場所も訪れてみてもいいですね。
最後に、この場を借りて、気仙沼・大島・陸前高田の皆様、スマイルプロジェクト事務局の皆様、そしてプロジェクトに参加したメンバーに深くお礼を申し上げます。本当に、ありがとうございました!
[第51回スマイルプロジェクト活動日程]
3月27日(土)
午前:東京から一ノ関市を経由して気仙沼市へ移動
午後:気仙沼消防団の慰霊碑訪問
観光コンベンション協会 熊谷さんの語り部
陸前高田 米沢商会 米沢さんの語り部
すがとよ酒店 菅原さんの語り部
明海荘 宿泊
3月28日(日)
午前:岩井崎見学
気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館見学
高田松原津波復興祈念公園見学
午後:陸前高田にて桜ライン311千年桜の植樹活動
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