第28回SMILE PROJECTレポート

2016年5月17(火)から5月21日(土)にまでの4泊5日の日程で、第28回SMILE PROJECTとして宮城県気仙沼市に行ってまいりました。今回は新卒入社社員7名を含む社員10名(男性5名、女性5名)のメンバーで参加して参りました。伺った先は東日本大震災から5年経過した気仙沼市、陸前高田市 気仙沼大島、南三陸町、女川町です。 以下、今回の活動の内容や現地で考えた事をご報告させて頂きます。

【1日目】 一ノ関に着いてからバスで気仙沼に移動しました。移動時間では、気仙沼観光協会の熊谷さんに震災前後の町のお話や当時感じたとこについてお話を聞きました。昼食後は、米沢さんと菅原さんの語り部お二人から震災当時のお話を伺いました。それぞれ、陸前高田と気仙沼で被災され、津波の高さや火災の有無など被害の違いはありますが、営んでいたお店や家族が流されてしまった方々です。陸前高田は津波の被害が大きく、海に近い場所は未だに更地のまま、地面の嵩上げ作業を行っている最中でした。そんな中、震災当時のまま米澤さんのお店は保存してあり、そこで一体なにがあったのかを目の当たりにしました。 震災後の東北は初めてで、それまでは、津波の映像や記事を見ても映画のようで、現実味が持てないままでいましたが、今回、仮設の商店街や被災した建物を目にし、被災した方の話を聞くことで、初めて震災を現実のこととして受け止めることができました。また、みなさん多くのものを失ったにも関わらず、とても前向きで、将来の話をしていたことから、一生を通して続けていきたいと思える仕事とは何か考えると共に、強いパワーをいただきました。

【2日目】 2日目は、大島で牡蠣の養殖業を営む小松武さんの養殖場の見学とお手伝いをして、夜は大島の方々との懇親会も兼ねたBBQを行いました。牡蠣養殖のお手伝いでは、震災によって流されてしまった大切な牡蠣養殖用のイカダを一から全て作り直し、常に前を向いて働く小松武さんの背中を見て「ただ目の前にある使命に対して信念を持ち本能のままに応える」というメッセージを頂いたように感じました。「働く意義」について今一度じっくり考える貴重な機会をいただきました。 大島の方々は我々を温かい笑顔と新鮮な食事でもてなしで迎えて下さり、企業として繋がりを続けていくこと自体にかけがえのない価値があるのではないかと思いました。また、2日目、3日目の二日間大島のフェリー乗り場から車で5分ほどの明海荘に宿泊しました。 こちらを営んでいるケイシさん、カヨさんご夫婦は心優しく、私たち新卒が夜遅くまで作業をしていても暖かく見守ってくれました。 また仕事だけに関わらずこれからの人生で様々な経験をする中で、"自分が主人公になる"ことの必要性を教えてくださいました。誰かにやってもらい他人任せにするのではなく、自分が主体的に取り組み周りを動かすことの大切さを、ケイシさんは厳しくも温かく教えてくださいました。また毎日のご飯もとても美味しく、大島の料理を存分にふるってくださいました。

【3日目】 小山さんのお宅で田植えのお手伝いをしました。作業自体は稲を運んだり稲箱を洗ったり単純なものでした。この作業途中や作業後に小山さんからお話を伺う機会が何度かありました。そこで感じたことは二つあります。一つ目はブレない自分の考えをしっかりと持っていること。人間関係であれば人を敬愛することの大切さ、他人からモテる時は一度のみ、結婚の時だけでいいなど。また、震災を通して大切なことは今幸せを感じているかどうかということ。たくさんのお話を伺いました。小山さんのその話す姿勢はとても力強く、説得力がありました。長年多くの人に同じことを伝えているからかもしれませんが、誰がなんと言おうと私はこう思っているんだ、という強い姿勢が感じられました。 二つ目はポジティブ思考であること。上記の通りたくさんのお話を伺いましたが、ほぼ全ての話の内容が聞いた人を勇気づけたり、関心させられるものばかりであったと思います。小山さんのお話を聞いているとボランティアとして小山さんを元気にするのではなく、小山さんから私たちが元気をいただけるような、そんな気持ちになりました。 また、三日目はタットン畑のお手伝いもさせていただきました。タットンとは田んぼとコットンを掛け合わせた言葉で、海水に浸かり稲作が不可能となった田んぼに、除塩効果があるという綿花を植えて田んぼを再生させようというプロジェクトです。今回私たちはコットンの種を植える作業を行いました。まだまだ田んぼが再生するには時間がかかりますが、その第一歩として貢献できたことはとても誇らしくもいます。来年、私たちが植えたコットンが成長した姿をぜひ見てみたいと思いました。

【4日目】 4日目は、ipad セキュリティ教室を気仙沼公民館で開催し、30~70代の19名の方にご参加いただきました。日頃PCを使う方や、中には今回初めてPCやインターネット自体に触れる方もいらっしゃいました。また、今回は以前こちらに寄付されていたipadが古くなってしまっていたこともあり、新たに10台を寄贈。寄贈式の後新品のipadに目を輝かせる参加者の方もいました。教室が始まってからの2時間はあっという間。初めて触るipadで、写真を撮ったりアプリで遊んだりで常にどの席からも挙がる歓声、セキュリティについて熱心に耳をかた向ける姿が印象的でした。そして、今まで漠然とPCやインターネットに対して「難しそう」「なんとなく使うのが不安で恐い」と感じていた方が、最後「来て良かった」「教えに来てくれてありがとう」と喜んで帰っていく姿を見ました。 この教室の運営を通じて、これらのツールを使うことは決して恐いことではなく、正しく安全に使えばとても便利で生活が楽しくなるものであるとお伝えし続けていくことは、今後も私たちに強く求められていると感じました。

【5日目】 最終日の初めは気仙沼ニッティングへ訪れました。ここでは港町であるという地域特性を活かし、漁網の扱いに慣れた漁師の妻が編む手編みのニットが並べてあり、震災後、地域再生の為の活動としては興味深く新たな取り組みであると感じました。次に気仙沼を出て向かった先は南三陸町の防災庁舎。この地域の人々は、地震の後は津波が来るとの意識が高かったのにも関わらず津波の犠牲になった方々が多くいました。職員の方々は防災無線でギリギリまで住民に避難を促したそうですが、津波は予想をはるかに上回り建物を飲み込んだとのことです。もしもの時に備えていても想定外のことは起こりうる。ただその意識を持つことや準備を怠らないことを防災庁舎に訪れたことで考えることができました。 その後向かった先は石巻市にある大川小学校。こちらも津波の爪痕が生々しく残っており、もし私が震災時にこの場所にいたらどのような行動を取っていただろうかと考えさせられる場所でした。学校の職員を含め住民の人々は、いざという時の避難所はここだとの認識があり、また山と堤防に遮られ津波の動向が把握できず避難が遅くなってしまったなど、犠牲者が多く出てしまった要因は少なくない現状がありました。しかしここで感じたことは、どんな判断や行動が正しい、正しくないという話ではなく、自分なら周りに流されず落ち着いて状況を把握できたのか?という、日ごろから行動理由を意識する必要があるということでした。 最終目的地では南三陸石鹸工房の厨さんのお話を伺いました。福岡出身の厨さんは震災後の復興支援として、南三陸で女性の雇用を増やすことを目的とした起業家でした。この地域で取れる海藻や食材を生かして良い香りを放つオブジェとしての石鹸を売る活動は気仙沼ニッティング同様、斬新かつただお金を稼ぐためでなく、地域の活性化につながるものだと感じました。

【SMILE PROJECTを終えて】 今回の4泊5日にわたるSMILE PROJECTを通して、色々な方に直接お会いしてお話を伺い、未だに震災の爪痕の残る景色を自分の目で確認することで、ようやく初めてこの震災を現実としてはっきりと認識することができたように思います。 正直に申し上げますと、関東にいてメディアから得る震災の情報だけでは、これまでリアリティーを感じる事ができていませんでした。だからこそ、進んでいると思っていた被災地の復興がまだまだ思うように進んでいない現状を目の当たりにして、被災された方と県外の方との認識のギャップが大きくあるという事実にショックを受けました。なぜこのような現状を今まで私達は「知ろうとしていなかった」のかと。今回出会った方が私達に伝えてくださったとても印象的なメッセージがあります。それは 「過去を変えることはできません。私達が変えることができるのは、今と未来なんです。」 というメッセージです。今自分に何ができるのか。これから自分は何をするべきなのか。
今回のSMILE PROJECTでの経験と、このメッセージを胸に秘めて、これからも活動を続けていきたいと思います。

活動年月日 2016年5月17(火) ~5月21日(土)