アイデンティティとアクセス管理(IAM)とは、デジタルリソースへのアクセス権限を持つユーザ、そのユーザが行う操作、そしてアクセス権限を付与するタイミングを管理・制御するための一連のポリシー、プロセス、テクノロジーの総称です。IAMによって、従業員、契約業者、第三者など、正当な権限を与えられたユーザだけが、重要なシステム、アプリケーション、機密データにアクセスできるようにします。
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IAMは、企業のシステムやデータを保護するために欠かせないコアテクノロジーの一つです。その概念自体は非常に古く、城の鍵や秘密の合言葉(たとえば「開けゴマ」)のような、アクセスを制限する仕組みの時代にまで遡ることができます。コンピューターにおけるIAMの起源は1960年代にまで遡り、MIT(マサチューセッツ工科大学)が開発したCTSS(Compatible Time-Sharing System:互換タイムシェアリングシステム)で初めてパスワードによるログインが導入されたことが、その始まりとされています。
長年にわたり、IAMシステムの複雑さは変化してきました。特にクラウドへの移行が進むにつれ、要素の追加、用語の違い、多様化する権限制御の方法などによって、IAMは以前にも増して複雑になっています。その結果、現在では、適切なユーザやシステムだけが必要なタイミングで特定のシステムやデータにアクセスできるよう、細心の注意を払って管理を行う必要があります。
サイバーセキュリティにおいて、IAMとは「アイデンティティとアクセス管理」の略称です。組織がクラウド環境へと拡大するにつれ、IAMは多様なシステムやユーザに対するアクセス制御、認証、認可といった新たな課題に対応するために進化してきました。
IAMとは、ユーザやサービスに付与されるアクセス権を識別し、管理・制御するためのプロセスを指します。その中心となる概念がIAAA(識別、認証、認可、説明責任)であり、以下の4つの要素で構成されます。
識別とは、ユーザまたはサービスが「自分が誰であるか」を示すための情報です。最も一般的な例としては、ユーザIDやメールアドレス(例:Jameel@email.com)などがあります。
認証とは、その主張の妥当性を検証することです。たとえばJameel@email.comというIDが入力された場合、その主張を証明する手段として、Jameelの携帯電話でのみ利用できる認証アプリから生成されるワンタイムパスワードを使用することがあります。
認可とは、ユーザがどの操作を行えるかを決定するプロセスです。たとえばJameelに対して、読み取り、書き込み、一覧表示といった権限を付与することが認可にあたります。この際、彼女が業務を遂行するために必要な範囲に限定し、過剰な権限を与えないようにすることが重要です。
説明責任を確立するためには、Jameelがシステムにアクセスした後に行うアクセス要求や操作(場合によってはキー入力まで)を追跡する監査ログを作成する必要があります。この監査ログによって、彼女はシステム内で行った操作に対する責任を負います。
最新のIAMソリューションは、自動化、人工知能(AI)、および機械学習を統合することで、セキュリティの強化、ユーザエクスペリエンスの向上、アクセス制御プロセスの効率化を実現します。
IAMは、セキュリティの強化、効率性の向上、および規制標準への準拠を目指す組織にとって多くの利点を提供します。
IAMは、RBAC(ロールベースアクセス制御)と呼ばれる集中管理されたルールとアクセス権限を適用することで、ユーザが業務に必要なシステムのみにアクセスできるようにします。RBACでは、あらかじめ定義されたユーザロールと権限に基づいて、各ユーザに付与すべき適切なアクセス権を決定します。これをIAMシステムに実装することで、不正アクセスの防止、認証情報の盗難リスクの低減、さらには内部脅威の軽減にもつながります。
IAMは、SSOと適応型認証によってパスワード入力の煩雑さを解消することで、サインイン/サインアップの手順を簡素化すると同時に、ユーザエクスペリエンスを向上させ、強力なセキュリティを維持します。
IAMは、ユーザのプロビジョニングやプロビジョニング解除、ロールベースのアクセス管理を自動化します。オンボーディングなどの自動化されたワークフローを活用することで、IT部門の手作業による業務負荷を大幅に削減し、生産性を高めることができます。
いくつかのIAMソリューションは、組織がデジタルアイデンティティを管理し、セキュリティポリシーを効果的に適用するのに役立ちます。主要なIAMプロバイダーには、次のようなものがあります。
Microsoft Azure Active Directory (Azure AD) – SSO、MFA、および条件付きアクセスポリシーを備えたクラウドベースのIAMソリューションです。
Okta – 適応型認証、IDガバナンス、ゼロトラスト機能を提供するクラウドネイティブのIAMプラットフォームです。
Ping Identity – 連携したID管理とSSOのための柔軟なIAMソリューションです。
CyberArk – 管理アカウントを保護するための特権アクセス管理(PAM)を専門としています。
組織は、以下の方法でこれらの課題を克服できます。
最小権限アクセスの実装:ユーザには、業務遂行に必要な権限のみを付与します。
多要素認証(MFA)の導入:認証情報の盗難やブルートフォース攻撃から保護します。
定期的なアクセス権限レビューの実施:ユーザのアクセス権限を定期的に監査し、不要な権限を削除します。
IAMプロセスの自動化:AIを活用したIAMツールを使用して、本人確認とアクセス管理を効率化します。
IAMとゼロトラストセキュリティモデルの統合:リスクベース認証に基づいて、継続的にIDを検証し、アクセスを制限します。
IBM Security Verify:AIを活用したIDガバナンスおよびアクセス管理ソリューションを提供します。
プロビジョニングには、ユーザまたはシステムの識別と審査が含まれます。適切なアカウントを作成するためには、まずユーザが誰であるかを正確に確認する必要があります。また、作成したアカウントには、その役割に必要な最小限の権限のみを設定することが不可欠です。
アカウントは、その運用期間を通じて継続的にメンテナンスされます。ユーザの業務内容や担当プロジェクトに変更が生じると、必要となる権限も変化します。したがって、アカウントは常に最新のアクセス要件を反映している必要があります。この領域は、多くの企業で改善の余地が残る部分でもあります。
プロビジョニング解除は、アカウントライフサイクルの最終段階です。アクセスが不要になった時点で、ビジネスやそのデータを保護するために、該当アカウントを速やかに無効化または閉鎖する必要があります。
IAMシステムは、デジタルアイデンティティを保護し、アクセス権限を効率的に管理するために連携して動作する、複数の重要なコンポーネントによって構成されています。
認証とは、リソースへのアクセスを許可する前にユーザの身元を確認することです。一般的な認証方法には以下のようなものがあります。
パスワード:従来から使われているが、パスワード管理の不備により、ますます脆弱性が高まっています。
多要素認証(MFA):2段階目の認証手順(SMSコード、生体認証など)を要求することで、セキュリティを強化します。
生体認証:指紋スキャン、顔認識、または網膜スキャンを使用して本人確認を行います。
パスワードレス認証:パスワードを廃止し、ハードウェアトークン、プッシュ通知、または生体認証要素を利用します。
認証後、IAMは認可ポリシーを適用して、ユーザがアクセスできるリソースと実行できるアクションを決定します。アクセス制御モデルには以下が含まれます。
ロールベースアクセス制御(RBAC):職務または役割に基づいてアクセス権限を割り当てます(例:人事担当者は給与計算システムにはアクセスできますが、財務口座にはアクセスできません)。
属性ベースのアクセス制御(ABAC):場所、デバイスの種類、アクセス時間などの属性を使用してセキュリティポリシーを適用します。
ポリシーベースのアクセス制御(PBAC):組織のセキュリティポリシーに基づいてアクセスの決定をカスタマイズします。
SSOは、ユーザが一度認証するだけで複数のアプリケーションにアクセスできる仕組みであり、認証情報を繰り返し入力する手間を省くことで利便性を大幅に向上させます。また、フェデレーションID管理(FIM)は、このSSOの仕組みを複数の組織間に拡張し、ビジネスパートナー、サプライヤー、クラウドサービスプロバイダーなどとの間でシームレスなアクセスを実現します。
PAMは、特権アカウントや管理者の認証情報を保護するための専用IAMコンポーネントです。IT管理者など、高い権限を持つユーザに対して厳格なアクセス制御を適用することで、内部脅威の抑止やサイバー攻撃を防ぐのに役立ちます。
IAMは、セキュリティポリシーの適用、アクセスログの監視、そしてセキュリティチームやコンプライアンス担当者向けの監査証跡の生成を通じて、規制遵守を確保します。アイデンティティガバナンス機能には、次のような要素が含まれます。
アクセス権限レビュー:ユーザが適切な権限を持っていることを確認するために、定期的な監査を行います。
職務の分離(SoD):重複するアクセス権限を制限することで、利益相反を防止します。
コンプライアンスレポート:規制監査のための文書作成を自動化します。
IAMは、サイバー脅威に対抗するための重要な防御メカニズムです。IAMを適切に導入・運用することで、組織のセキュリティ体制は次のような点で強化されます。
不正アクセスの削減:IAMは厳格な認証およびアクセスポリシーを適用し、権限のないユーザが機密データにアクセスすることを防止します。
インサイダー脅威の防止:IAMはユーザの活動を継続的に監視することで、悪意のある意図や認証情報の不正使用を示す可能性のある異常を検出します。
クラウドセキュリティの強化:クラウドIAMソリューションは、集中型アクセス制御を適用することで、マルチクラウド環境およびハイブリッド環境を保護します。
規制コンプライアンスの確保:IAMソリューションは、セキュリティのベストプラクティスを徹底することで、企業がGDPR、HIPAA、その他の規制基準を遵守できるよう支援します。
IAMには多くの利点がある一方で、以下のような課題も伴います。
パスワード管理の問題:脆弱なパスワードは、依然としてセキュリティ侵害の主な原因の一つです。
アクセス権の管理ミス:過剰な権限を持つアカウントは、内部脅威のリスクを高めます。
ユーザの抵抗:従業員は、使いやすさに関する懸念から、MFAやその他のIAMセキュリティ対策に抵抗する可能性があります。
統合の複雑さ:IAMは、既存アプリケーション、クラウドサービス、およびサードパーティツールとシームレスに統合する必要があります。
IAMは、新たなサイバーセキュリティ上の課題やデジタルトランスフォーメーションの進展に対応するため、急速に進化しています。主なトレンドとしては、次のようなものが挙げられます。
パスワードレス認証:従来のパスワードを、生体認証、FIDO2セキュリティキー、プッシュ認証に置き換えます。
AIを活用したID分析:機械学習を用いて異常なユーザ行動を検知し、本人確認詐欺を防止します。
ブロックチェーンベースのID管理:ユーザのプライバシーとセキュリティを強化する、分散型IDソリューションを提供します。
ゼロトラストの統合:IAMは、ユーザやデバイスが本質的に信頼されないゼロトラストセキュリティモデルの基盤になりつつあります。
Fernando Cardosoはトレンドマイクロのプロダクトマネジメント担当バイスプレジデントとして、進化を続けるAIとクラウドの領域に注力しています。ネットワークエンジニアおよびセールスエンジニアとしてキャリアをスタートさせ、データセンター、クラウド、DevOps、サイバーセキュリティといった分野でスキルを磨きました。これらの分野は、今なお彼の情熱の源となっています。