サイバー脅威
FIFAワールドカップ2026に便乗するネット詐欺
2026年6月11日、アメリカ・カナダ・メキシコの3カ国共催によるFIFAワールドカップ2026が開幕し世界中の注目を集めました。このような大規模なイベントは、サイバー犯罪者にとっても格好の標的となり、大会に便乗したネット詐欺が世界中で確認されています。
はじめに
2026年6月11日、アメリカ・カナダ・メキシコの3カ国共催によるFIFAワールドカップ2026が開幕し世界中の注目を集めました。このような大規模なイベントは、サイバー犯罪者にとっても格好の標的となり、大会に便乗したネット詐欺が世界中で確認されています。本記事では、トレンドマイクロが確認したネット詐欺の手口を解説し、インターネットの利用者が注意すべき点を紹介します。
※本記事で解説する詐欺は、FIFAや大会の公式パートナー、放送局・動画配信サービスなどの正規の事業者になりすましたものであり、FIFAおよび関連団体、記事中で名称に言及する正規の事業者がこれらの詐欺に関与している事実はありません。
偽サイトや詐欺サイトの増加
米国連邦捜査局(FBI)のインターネット犯罪苦情センター(IC3)は、2026年5月に大会に便乗した詐欺への注意喚起(I-052726-PSA)を公開しました。
トレンドマイクロの調査では、2026年1月から6月までの間に、「fifa」「worldcup」というキーワードを含む詐欺・フィッシング等の不正サイトおよび安全性が確認できていない不審サイトを35,538件確認しました。また、これらのサイトへの日本国内からのアクセス数は約148万件にも及ぶことを確認しています。これらは大会の開催時期に急増しており、日本の利用者も主要な標的となっています。
以下では確認された偽サイトや詐欺サイトの詳細について解説します。
偽ショッピングサイト
トレンドマイクロの調査では、2026年1月から6月までの間に、「FIFA」「ワールドカップ」「W杯」「日本代表」というキーワードを含む偽ショッピングサイトを6,251件確認しました。大会の開催よりも早い時期から、複数の偽ショッピングサイトが作成されていました。偽ショッピングサイトへの誘導には、インターネット検索エンジンの検索結果を汚染するSEOポイズニング攻撃の手法などが使われています。
偽ショッピングサイトにはサッカーのユニフォームや関連グッズなどが並んでいますが、攻撃者は様々な手口で利用者から個人情報や購入代金を騙し取ろうとします。これらの商品を購入しても、商品が届かないことが多く、届いたとしても偽物や粗悪品の場合もあります。
偽チケット販売サイト
公式サイトの偽サイト
FIFAワールドカップの観戦チケットや観戦パッケージを購入できる公式ホスピタリティサイトを、ほぼ完全に複製した偽サイトを確認しました。偽サイトは、公式サイトのブランドロゴやページデザインを模倣しているだけでなく、公式サイトのサーバから動画や画像を直接読み込み、FIFAの公式SNSアカウントや規約文書へのリンクも掲載することで信憑性を高めています。さらに、この偽サイトには自動翻訳機能が組み込まれており、日本語を含む様々な言語の利用者が標的となり得ます。
この偽サイトにはログインページがありますが、FIFAのアカウントシステムとは一切関係がありません。騙されてメールアドレスとパスワードを入力すると、認証情報はすべて攻撃者に直接送られます。
リアルタイムフィッシングでクレジットカード情報とワンタイムパスワードを詐取
この偽サイトから決済手続きに進むと、クレジットカード情報が漏えいし、直接的な金銭被害につながる恐れがあります。通常のオンライン購入と見た目も操作も同じように設計されており、気づきにくくなっています。
- 利用者が偽サイトの決済ページでクレジットカード情報を入力する
- 攻撃者は入力されたカード情報をリアルタイムで入手する
- 攻撃者はそのカード情報を使って、別の場所で不正な決済を試みる
- 利用者にカード会社や銀行から、SMSなどで本人確認用のワンタイムパスワードが届く
- 利用者が偽サイトの決済画面でワンタイムパスワードを入力する
- 攻撃者は入力されたワンタイムパスワードを即座に使用し、不正な決済を完了させる
- 利用者には偽の注文完了画面が表示される
ワンタイムパスワードによる本人確認(多要素認証)は不正決済への有効な対策ですが、この手口では利用者自身が偽サイトにワンタイムパスワードを入力してしまうため突破されてしまいます。
偽ライブ配信サイト
日本の利用者を狙った偽ライブ配信サイトへの誘導
トレンドマイクロの調査では、日本語の検索キーワード「fifa ワールドカップ 2026 無料配信」の検索結果から、偽ライブ配信サイトへ誘導されることを確認しました。インターネット検索エンジンの検索結果を汚染するSEOポイズニング攻撃の手法が使われており、動画検索の結果の上位には、改ざんされた米国の大学の研究機関のWebサイトが表示されました。検索結果には日本の放送局や動画配信サービスの名前をかたる日本語のタイトルが並び、1つの改ざんサイトに試合ごとの偽ページが複数埋め込まれていました。
偽ライブ配信サイトの攻撃者の目的は?
インターネットの検索結果をクリックすると、改ざんされたWebサイトから、ブログサービス上に設置された中継ページなどを経由して、偽ライブ配信サイトへ誘導されます。誘導先の偽ライブ配信サイトは、スポーツ専門の配信サービスを装っており、実際の大会日程に合わせた試合名のページが用意されています。ページ上では動画プレイヤー風の画面表示によって、あたかも試合の配信が始まるかのように見せかけていますが、調査では実際に試合の映像が配信されることは確認できませんでした。
偽ライブ配信サイトには悪質なアドネットワーク(広告配信ネットワーク)が組み込まれており、偽の再生ボタンをクリック(タップ)すると、その都度異なるサイトへ誘導されます。誘導先には、正規の金融取引サービスの口座開設ページや大手ECサイトも含まれていました。 これらは正規の事業者がアフィリエイト広告などを通じて意図せず悪質なアドネットワークで広告詐欺(アドフラウド)の被害に遭っていると考えられます。
また、一部のライブ配信サイトでは「視聴には登録が必要」と表示され、アカウント登録ページに個人情報やクレジットカード情報を入力させて詐取したり、実際には関連性のないサブスクリプションに加入させて継続的に課金しようとするものもあります。攻撃者は大規模な大会やコンサート等のイベントがある度に、インフラや手口を入れ替えて、同様の偽ライブ配信の詐欺を繰り返しています。
被害に遭わないためには
サイバー犯罪者は、人々の関心を集めやすく話題性の高いテーマやニュースに便乗して利用者を騙そうとします。「無料」「公式」といった言葉をうのみにせず、冷静な判断と適切なセキュリティ対策で、大切な個人情報と資産を守りましょう。
- チケットやグッズ等の購入は、検索結果やSNS広告などのリンクからではなく、公式サイトへ直接アクセスして行いましょう。
- 検索結果からアクセスする際は、URL(ドメイン)を確認しましょう。また、記号を多用したような不自然なタイトルの検索結果には注意が必要です。
- 動画の視聴は、日本国内の公式な放送局や動画配信サービスを利用しましょう。「無料配信」をうたう非公式サイトでアカウント登録やクレジットカード情報の入力を求められても、応じてはいけません。
- 正規の決済でも、本人認証(3Dセキュア)のためにカード会社のページへ移動し、SMSのワンタイムパスワードの入力を求められることがあります。届いたSMSに記載された利用先や金額が、自分がいま行っている購入内容と一致しているかを確認しましょう。心当たりのない金額や利用先が記載されている場合は、入力せずに操作を中止し、カード会社や銀行に確認しましょう。
- サービスごとに異なるパスワードを設定しましょう。複数のサービスで同じパスワードを使い回していると、偽サイトに入力してしまった1つのパスワードから、他のアカウントの乗っ取りにつながる恐れがあります。
- 信頼性の高いセキュリティ対策ソフトを導入し、先進的な技術による「詐欺対策機能」を活用することも有効な手段です。
トレンドマイクロ製品を活用した「プロアクティブ」なセキュリティ対策
詐欺対策に特化したスマホ向け防犯アプリ「トレンドマイクロ 詐欺バスター」は、より先進的なAI技術を組み合わせることで、巧妙化する詐欺の脅威からあなたを守ります。
「Web脅威対策機能」では、偽サイトや詐欺サイトなどの不正なWebサイトへのアクセスをブロックします。また、「詐欺チェック機能」では、生成AIによる詐欺判定ができます。不審なメールや広告、SNS投稿などのスクリーンショットから、詐欺サイトの可能性を判定することができます。
また、パソコンを利用する場合には、「ウイルスバスター トータルセキュリティ」の「Web脅威対策機能」で、不正なWebサイトへのアクセスをブロックすることができます。
トレンドマイクロのセキュリティ対策製品は、常に変化し巧妙化する「詐欺」を未然に防止することを支援します。守る側の対策もAIを活用した「プロアクティブ」なセキュリティ対策へと進化させることができます。
調査協力:トレンドマイクロ株式会社
松ヶ谷 新吾(TrendLife Threat Research)
嶋村 誠(TrendLife Threat Research)
執筆:本野 賢一郎(詐欺対策チーフアナリスト)