データセキュリティとは、ガバナンス、階層化された技術的および管理的対策、そしてさまざまな環境におけるリスク情報に基づいた継続的なプロセスを組み合わせることによって、機密性の高いデジタル情報をライフサイクル全体にわたって管理および保護することを指します。
目次
分散コンピューティングの世界では、企業の運用対象がオンプレミスシステム、マルチクラウド環境、そして「サービスとして提供」されているサービスと広範囲にわたります。そのため、データセキュリティでは、どの環境においても機密データを保護できなければなりません。リスクを把握できている組織は、データの保護が単にファイアウォールの問題ではなく、統一されたポリシー、監視、および測定可能な統制策の問題であることを認識しています。
米国国立標準技術研究所(NIST)は、情報ライフサイクルを作成、処理、使用、保存、廃棄を含む段階として定義しており、このモデルは現代のデータセキュリティ戦略の基盤となっています(NIST、2016)。同じ研究によると、効果的な保護の実現の基盤は、データの流れや対策が適用される対象をしっかりと把握することにあります。
政府機関は、悪意のあるサイバー活動による経済的影響が1年あたり570億米ドルから1,090億米ドルにのぼると推定しており、ビジネスリーダーがデータセキュリティを単なるITの問題ではなく、企業全体のリスクとして捉えることがいかに重要であるかを強調しています(ホワイトハウス、2018年)。
強固なデータセキュリティの出発点となるのが、ポリシーです。ポリシーとは、データの種類、分類体系、ライフサイクルにおける責任範囲を明確に定義したものです。NIST SP 800-64などの標準や、その他ライフサイクル指向のフレームワークは、組織がアセットの保護と効率的な運用のバランスをどのように取るべきかを明確に示しています(NIST、2008)。
その基盤の上に、組織は階層的な統制を構築していきます。具体的には、保存中および転送中のデータの暗号化と鍵管理、各プラットフォームでのIDおよびアクセス管理、各種活動のログ記録と監査証跡の確保、SaaSやクラウドを含めた各種環境の発信監視です。
ポリシーは、企業のリスク戦略と整合し、ハイブリッドインフラストラクチャ(オンプレミス、ハイブリッド、クラウド)全体に適用され、かつ、継続的に更新されることがベストプラクティスとされています。プラットフォームの垣根を越えた標準化は、規制の整合性、運用のレジリエンス、さらには自動化と測定に向けた基盤となります。
データセキュリティの前提は、クラウドの導入の有無やサービスモデルによって変化します。クラウド環境では、データが複数の地域に分散していることもあれば、さまざまなSaaSアプリケーションの間を移動したり、モバイルデバイスやリモートデバイスを介してアクセスされたりすることもあるため、規模とエクスポージャーの両方が増大します。また、企業はハイブリッドインフラストラクチャに多数のコピーやサイロ化されたデータを抱えていることが多く、この点もガバナンスや管理が複雑化する原因になります。
現代のフレームワークはデータのライフサイクル管理を重視しており、あらゆるストレージおよびサービスプラットフォームにわたって統一された検出、分類、アクセス制御、および監視が必要とされています。NIST Research Data Framework (RDaF) バージョン2.0は、ライフサイクルの6段階を概説しており、企業およびハイブリッド環境全体でデータを管理するための戦略策定に役立ちます(NIST、2024)。
情報漏洩防止(DLP)、ポリシーベースの監視、転送中および保存時のデータ暗号化、ID駆動型アクセスをコンピューティングプラットフォーム全体に統合すれば、ワークロードが変化および進化してもデータを自社でしっかり管理していくことができます。重要なのは、環境だけでなくデータも保護すべきアセットとして扱うことです。
従来の境界セキュリティは、ネットワークの境界の防御に焦点を当てたもので、「城」に脅威が侵入する事態を防ぐことを目的としています。これに対して、現代のデータセキュリティは、脅威がどこからでも(エンドポイント、クラウドサービス、サプライチェーンのどこからでも)発生する可能性があるということを前提としています。つまり、場所に関係なく、データ自体を保護します。
この変化は、ゼロトラストアーキテクチャに沿ったものです。ゼロトラストとは、デフォルトでは何も信用せず、すべての接続を検証し、あらゆるオブジェクトを保護していくという考え方です。データ中心のセキュリティとは、ネットワーク境界の内側だけでなく、ITインフラストラクチャ全体でデータがどのようにアクセス、使用、移動、廃棄されるかに焦点を当てることを指します。
組織は「自分たちの境界線はどこにあるのか?」という問いから脱却しなければなりません。重要なのは、「環境やサービス全体で、自社のデータがどのように管理、アクセス、保護されているのか?」です。つまり、場所ではなく、管理、可視化、説明責任の3点がどうなっているかが重要なのです。
側面
データセキュリティ
従来の境界防御
セキュリティの範囲
システムやプラットフォームを問わず、保存中、転送中、使用中のデータのすべてに適用される。
ネットワークの境界(ファイアウォール、ルーターなど)のセキュリティ確保が中心。
アプローチ
システムやプラットフォームを問わず、保存中、転送中、使用中のデータのすべてに適用される。
広範囲にわたり、位置情報に基づく。さらに、不正アクセスを阻止することが中心。
コンプライアンスガバナンス
各種のデータ保護規制(GDPR、HIPAAなど)に準拠。
データに特化したコンプライアンス要件には完全に対応できない可能性あり。
技術の例
暗号化、トークン化、DLP、ゼロトラスト、IAM(Identity Access Management)。
ファイアウォール、VPN、IDS/IPS、DMZ(非武装地帯)。
コンプライアンスフレームワークは有益なものです。保護のための最低限の基準がわかるほか、監査のエビデンス確保や、規制の遵守にも役立ちます。しかし、コンプライアンスだけでは十分ではありません。コンプライアンスだけを考えていては、運用上の抜け穴、技術的な見落とし、レジリエンスの不足が生じる可能性があるからです。
データセキュリティは、単にチェックリストを埋めていく作業ではありません。戦略に組み込むべき重要な要素です。組織がデータセキュリティ対策をビジネスリスクと整合させ、成果を測定し、ポリシー、プロセス、技術を動的に更新していけば、パフォーマンスと保護を両立することが可能になります。すると、時が経つにつれ、ポリシーがベストプラクティスへと進化し、システムも測定可能で説明責任を果たせるものへと変わっていきます。
側面
データセキュリティ
コンプライアンスのみのアプローチ
主な目標
データの漏洩や不正アクセスからデータを保護する
規制要件をクリアし、罰則を回避する
焦点
リスク軽減とプロアクティブな防御
文書化と監査準備
主な活動
暗号化、アクセス制御、脅威監視、パッチ適用
ポリシー、手順、報告、認証
結果
サイバー攻撃に対する高いレジリエンス
法的なコンプライアンスは確保できるものの、潜在的なセキュリティ上の欠陥が残るおそれ
リスク
侵害のリスクが比較的低い
コンプライアンスを最終目標としていると、リスクが高まる
ガバナンスは、ポリシー、統制策、システムが事業戦略、技術の変化、脅威の進化と常に整合している状態を維持するための取り組みです。NIST SP 800-37(リスク管理フレームワーク)などのフレームワークは、組織が準備、アセスメント、監視、継続的な改善を進めていくための指針として有用です(NIST、2019)。
主要な指標は、機密に分類されたデータの割合、暗号化の範囲、鍵ローテーションの遵守状況、平均復元時間、異常アクセスまたはデータ流出の検出時間の可視化に役立ちます。これらはいずれも、経営層や取締役会がリスクと進捗状況を把握するための情報となります。
データセキュリティの責任を企業のリスク管理のプロセスに組み込めば、データセキュリティをコストセンターではなく、戦略的な推進力として位置づけることができるようになります。プラットフォーム全体にわたる一元的な監視、一貫したポリシー適用、そして測定可能な成果が、信頼と継続性の構築につながっていくのです。
データは現代ビジネスの生命線です。お客さま記録、知的財産、分析データ、クラウドワークロード、SaaSサービスのすべてが、価値を生み出す源泉となります。しかし同時に、データはランサムウェア、サプライチェーン攻撃、クラウドの誤設定の悪用など、現代の攻撃者の標的として狙われる存在でもあります。データ管理が断片化している組織、サポートされていないインフラストラクチャを使用している組織、旧式の対策を採用している組織は、それだけでリスクにさらされています。
ポリシー、インフラストラクチャ、アクセス、制御、分析、ガバナンスを連携させる包括的なデータセキュリティのアプローチを採用すれば、リスクを抑えてレジリエンスを確立しつつ、イノベーションを実現できます。また、規制上の義務を果たすことにより、利害関係者の信頼も獲得できます。これは、データを負債ではなく戦略的な資産へと変えている証にほかなりません。
データ環境においては、コンプライアンスチェックリスト以上のものが求められます。あらゆる環境で機密情報を保護するためには、リスクを考慮したプロアクティブなアプローチが必要です。TrendAI Vision One™ は、AIを活用したエンタープライズサイバーセキュリティプラットフォームを通じて、保存場所に関係なくデータの保護を実現します。
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プロダクトマネジメント担当バイスプレジデントのScott Sargeantは、サイバーセキュリティとIT分野で25年以上にわたりエンタープライズクラスのソリューションを提供してきた、経験豊富なテクノロジーリーダーです。
データは物理ドライブ、クラウドサーバ、またはネットワークシステムに保存され、検索および分析に対応できるよう、データベースに整理されます。
いいえ。倫理的なデータ保管という観点から、保存期間には制限が設けられています。具体的には、データは不要になった時点、または法的に保管が義務付けられなくなった時点で、削除または匿名化されます。
アクセス制御、暗号化、監視を通じて情報を保護し、不正使用、紛失、破損を防止することです。
技術、ポリシー、そして責任ある人間の行動により、デジタル情報を窃取、破損、または不正使用から保護することです。
機密性、完全性、可用性、認証、説明責任の5つです。これらが一体となって、データの正確性、アクセス可能性、信頼性が確保されます。
機密性、完全性、可用性の3つです。CIAトライアドとして知られ、安全なシステムすべての基盤となる要素です。
暗号化、データマスキング、脅威の検出、エクスポージャー管理などがあります。いずれも、機密性の高いデジタル資産の保護に役立ちます。
組織が個人のデータを収集および使用する方法を個人が管理できるようにすることを目的とした欧州連合のプライバシー法「一般データ保護規則」の略称です。
「合法性、公平性、透明性」、「目的制限」、「データ最小化」、「正確性」、「保存制限」、「完全性および機密性」、「説明責任」の7つです。
不正プログラム、フィッシング、認証情報の不正使用、デバイスの物理的な紛失の4つです。いずれも、機密性とシステムの信頼性を損なう脅威です。