エクスプロイト&脆弱性
2026年10月 セキュリティアップデート解説:Microsoft社は1,417件、Adobe社は174件の脆弱性に対応
Pwn2Own Irelandを無事に終了し、今月も多数のパッチが公開され、Microsoftの月間パッチ数はまたも過去最多を更新しました。
今月も多数のパッチが公開され、Microsoftの月間パッチ数はまたも過去最多を更新しました。Pwn2Own Irelandを無事に乗り切れて何よりです。MicrosoftとAdobeのパッチを合わせると、取り上げるべき内容が山ほどあります。この件数になると、脆弱性をどう整理して示すかについても、新しい方法を模索しているところです。何かよい案があれば、ぜひお知らせください(本当に、もう案が尽きました)。リリース全体を扱った動画版の総まとめは、こちらからご覧いただけます。
2026年10月Adobe社からのセキュリティアップデート
10月リリースの第1弾として、Adobeは11件のセキュリティ情報を公開し、Adobe Dimension、Commerce、Substance 3D Sampler、ColdFusion、Photoshop、FrameMaker、Experience Manager、Substance 3D Stager、Content Credentials SDK、Bridge、Substance 3D Designerに存在する174件の固有CVEに対処しました。
今月の概要一覧は、以下をご参照ください。
表1:2026年10月Adobe社のセキュリティアップデート(PDF版)
最も緊急性が高いと考えるのは、適用優先度が2とされているColdFusionのパッチです。CVSSスコア10の脆弱性に加え、10件の「緊急」のCVEには、無制限のファイルアップロード(CWE-434)、コードインジェクション(CWE-94)、サーバサイドリクエストフォージェリ(SSRF)、不適切な認可が含まれます。インターネットに公開されたサーバ製品で、認証前のリモートコード実行につながり得る典型的な構成です。影響は、任意のコード実行や特権昇格から、任意のファイルの読み書きまで多岐にわたります。次に優先すべきなのは、Commerceのセキュリティ情報です。CVE件数は最も少ないものの、Commerceは価値の高い攻撃対象です。先月は、Commerceのゼロデイ脆弱性「CVE-2026-75650」が実際の攻撃で悪用されました。「緊急」の脆弱性にはテンプレートエンジンインジェクションと不適切な認可があり、コード実行、特権昇格、任意のファイル書き込みにつながる可能性があります。Adobeの一覧にはCVEごとに認証の要否も示されており、対応の優先順位を判断するうえで役立ちます。もう1件の適用優先度2のアップデートは、Experience Managerを対象としており、3件の中で最も広範です。格納型、反射型、DOMベースの多数のクロスサイトスクリプティング(XSS)に加え、OSコマンドインジェクション、SQLインジェクション、XML外部実体参照(XXE)、XMLインジェクション、パストラバーサルといった深刻なサーバ側の脆弱性が含まれます。これらは、コード実行、特権昇格、セキュリティ機能のバイパスにつながる可能性があります。なお、脆弱性の詳細一覧には34行ありますが、CVE-2026-106631が重複しているため、固有のCVEは33件です。
上記を除くAdobeのパッチは、すべて適用優先度3です。今月パッチが公開されたその他のAdobe製品の脆弱性については、リリース時点で一般公開または悪用が確認されているものはありません。
2026年10月Microsoft社からのセキュリティアップデート
今月のMicrosoftのリリースを見ていく前に、今回導入された変更について説明します。Microsoftは「リスクコホート(risk cohorts)」を導入しました。同社によると、これは顧客が独自の分析を整理しやすくするための試験的な手法です。Microsoftの正式な脆弱性分類ではなく、更新プログラムに関する同社のガイダンスを変更するものでも、個々のCVE評価に代わるものでもありません。以前は、これをセキュリティ情報と呼んでいました。1つのコンポーネントに複数のCVEがある場合、それらを1件のセキュリティ情報にまとめていたのです。Microsoftは、この考え方をグループ単位で再導入しています。先月と今月に行った本記事の分析方法とも一致しており、この変更を歓迎します。企業が「コホート」を有効活用できるかは今後明らかになるでしょうが、月例リリースを管理しやすくする取り組みは歓迎すべきです。詳細は、Microsoftの解説(英語)をご参照ください。
それでは、通常どおり分析を始めます。
Microsoftのリリースは、またしても過去最大を更新しました。月間の件数が初めて4桁に達しただけでなく、CVE番号も6桁に入っています。例によって、この規模になると集計は容易ではありませんが、Microsoftが今月公開した新規CVEは1,415件です。これは、Microsoftがこれまで1年間に公開したどの件数よりも多い月間件数です。この「新たな常態」を、さすがに歓迎できなくなってきました。対象製品は、WindowsおよびWindowsコンポーネント、OfficeおよびOfficeコンポーネント、開発者向けツールおよび.NET、SharePoint、Linuxカーネル、Skype for BusinessおよびMicrosoft Lync、SQL ServerおよびDynamics、Azureおよびクラウドサービス、Exchange Serverです。
救いがあるとすれば、実際の攻撃で悪用されている脆弱性が1件だけという点です。「Hot 0-day Summer」と呼ばれた2023年には、1月から10月までにMicrosoftのゼロデイ脆弱性が17件ありました。今年の同期間は15件です。2023年にMicrosoftが公開したCVEの総数は、わずか914件でした。AIが脆弱性の発見、そしておそらく修正にも役立っていることは確かですが、ゼロデイ脆弱性の悪用が同じ割合で増えているわけではありません。少なくとも、今のところは。直近のPwn2Ownで実証されたように、AIを活用したエクスプロイトはすでに現実のものです。ただし、ほかのインシデントは増えているものの、この手法はまだ主流にはなっていません。
かつては、1回のリリースに数百件のCVEが含まれること自体が例外でした。今では、それが基準になっています。原因はAIなのでしょうか。答えは一部に限れば「はい」です。AIは、ベンダと研究者の双方で脆弱性調査を加速させています。ベンダはより多くの不具合を発見して修正し、研究者も以前より早く見つけています。しかし、AIが何もないところから脆弱性を生み出しているわけではありません。脆弱性が存在してから誰かが発見するまでの時間を短縮しているだけです。重要なのは、発見の規模が悪用よりも速く拡大している点です。悪用可能性ではなくCVE件数だけで優先順位を決めると、対応すべき対象を見誤り、時間を浪費します。悪用が確認されているもの、優先度が高いもの、一般公開されているものからパッチを適用し、残りは今月の「新たな常態」として扱ってください。
今回のリリースで一般公開済みとされている脆弱性は2件です。CVE-2026-108398は.NET Frameworkのセキュリティ機能のバイパスで、攻撃者がWindows Defender Application Control(WDAC)の制御を回避できる可能性があります。CVE-2026-92707はMessagePack-CSharpのサービス拒否の脆弱性で、サードパーティが公開した後、今回Microsoftのリリースに含められました。いずれも、実際の攻撃での悪用は確認されていません。今回も、まず悪用が確認されている脆弱性から見ていきます。
CVE-2026-96951 - Windows Shell のセキュリティ機能のバイパスの脆弱性
今回、実際の攻撃で悪用されているとされる唯一の脆弱性です。この種の脆弱性は以前にも確認されています。2024年には、攻撃者がMark of the Web(MotW)の保護を回避するため、複数の手法を利用しました。今回はSmartScreenではなくShellが対象ですが、結果は同じです。実際の攻撃で悪用されている脆弱性である以上、速やかにテストし、パッチを適用してください。
CVE-2026-102866 - Microsoft Office SharePoint の特権の昇格の脆弱性
今月はSharePointの脆弱性が多数ありますが、中でも本脆弱性は注目に値します。SharePointのCVEで唯一「緊急」に分類され(CVSSスコア8.1)、認証されていない攻撃者が悪用できる唯一の脆弱性でもあります。原因は、暗号署名の検証が不適切であることです。攻撃者が標的ユーザの有効な証明トークンを入手すると、その内容を変更してサーバに送信し、当該ユーザとして認証できる可能性があります。ただし、攻撃者は先にトークンを入手する必要があります。その方法は複数考えられます。
CVE-2026-65674 - Microsoft SQL Server のリモートでコードが実行される脆弱性
SharePointと同様、SQLコンポーネントにも多数の脆弱性があります。本脆弱性は今月のSQL Serverの脆弱性で最も高いCVSSスコア8.8が付けられ、悪用可能性の評価も最も高くなっています。信頼できないデータのデシリアライゼーションに起因する脆弱性です。認証された攻撃者が影響を受けるSQL Serverに接続し、細工したリクエストを送信すると、サーバ上でコードを実行できる可能性があります。ユーザの操作は必要ありません。インターネットに直接接続されたSQL Serverがある場合は、必ず確認してください。
CVE-2026-70571 - Microsoft Exchange Server のリモートでコードが実行される脆弱性
技術的には、Exchange Serverでワーム化し得る脆弱性です。ただし、実際にワーム化する可能性は低いと考えます。Microsoftは「悪用には、攻撃者が標的環境を深く理解している必要があり、成功するとは限らない」と説明しています。分かりにくい表現ですが、一般にこれは、この脆弱性を介してExchange Serverを悪用するための条件がすべて整う可能性は極めて低いという意味です。
ワーム化の可能性がある脆弱性
通常はワーム化し得ると考える脆弱性をすべて取り上げますが、今月は件数が多すぎます。要点をまとめると、10月のCVEのうち59件が、筆者の定義するワーム化可能な脆弱性に該当します。このうち57件には、「認証されていない攻撃者が、影響を受けるサービスにネットワーク経由で細工したパケットを送信することで悪用できる」と「認証もユーザ操作も必要ない」の両方が記載されています。さらに、CVE-2026-70147とCVE-2026-88178の2件も表現こそ異なりますが、認証もユーザ操作も必要ありません。該当する脆弱性は以下のとおりです。
- DHCP Server(6件):CVE-2026-96934、88117、88119、88120、96320、69830
- Network Policy Server(4件):CVE-2026-100222、85806、85371、85799
- Windows Error Reporting(4件):CVE-2026-83519、83693、83748、97815
- Remote Desktop Gateway(3件):CVE-2026-70187、100218、84012
- Text Shaping(3件):CVE-2026-102210、83770、97814
- 各2件(計14件):QUIC(CVE-2026-100219、105016)、Schannel(CVE-2026-105008、105005)、DNS Server(CVE-2026-83869、70127)、Media Foundation(CVE-2026-83517、85814)、Microsoft XML(CVE-2026-83935、83914)、RRAS(CVE-2026-85792、85809)、PostScript Printer Driver(CVE-2026-70147、70153)
- 各1件(計25件):Windows Search(CVE-2026-105010)、TCP/IP(CVE-2026-69913)、IIS(CVE-2026-70024)、libarchive(CVE-2026-70062)、Rich Text Edit Control(CVE-2026-70096)、System Information Console(CVE-2026-70157)、.NET(CVE-2026-70197)、Active Directory Domain Services(CVE-2026-70229)、PowerShell(CVE-2026-83578)、CCFFilter Driver(CVE-2026-83780)、Shell(CVE-2026-83782)、Paint(CVE-2026-83844)、Network Load Balancing(CVE-2026-83862)、RPC Runtime(CVE-2026-83910)、PPP EAP-TLS(CVE-2026-84015)、Volume Manager Extension Driver(CVE-2026-85928)、Failover Cluster(CVE-2026-88102)、Failover Cluster Virtual Driver(CVE-2026-96864)、LSASS(CVE-2026-96219)、BitLocker(CVE-2026-96909)、OLE(CVE-2026-96924)、PowerPoint(CVE-2026-88178)、Message Queuing(CVE-2026-108460)、OpenSSH for Windows(CVE-2026-97816)、Partition Management Driver(CVE-2026-97805)
一部については判断が誤っている可能性もあります。説明がいささか曖昧なものもあるためです。とはいえ、2026年にこれだけ多くのワーム化し得る脆弱性が存在することには、相応の懸念を持つべきです。慌てる必要はありませんが、魅力的な攻撃対象がこれほど多く残っている状況は気がかりです。可能な限り速やかに、修正プログラムをテストして適用してください。
Microsoftが2026年10月に公開したCVEの全一覧は、以下をご参照ください。
表2:2026年10月Microsoft社のセキュリティアップデート(PDF版)
先月と同様、今回のリリースに含まれる残りの脆弱性も、できる限り要点をまとめます。ただし、見落とした詳細や、リリース後に改訂される内容があることを前提にしてください。
ローカルでの特権昇格: この種の脆弱性が非常に多いと言っても、控えめな表現です。データに含まれる677件のEoPのうち、606件(90%)はSYSTEM、管理者、またはroot権限の取得につながります。整合性レベルの昇格やサンドボックスからの脱出もいくつかあります。低整合性から中整合性へ移行できるものが10件、Low Integrity LevelまたはAppContainerのサンドボックスから脱出できるものが6件です。アドバイザリに「昇格した権限」としか記載されていないものや、クラウドIDまたはデータアクセスの問題を説明しているものは7件あります。さらに20件近くでは、別のユーザやサービスアカウントとして実行する、特権コンテキストでファイルを作成または削除する、Local Serviceに到達するといった影響があります。CVE-2026-70190では、攻撃者はSYSTEMとしてファイルを作成、変更、削除できますが、SYSTEM権限そのものは取得しません。困ったことに、取得できる権限をFAQにまったく記載していないものが23件あり、その中には利用者の対応が不要なクラウド側の修正も含まれる可能性があります。筆者がすべて読まなければならないのなら、Microsoftにもすべて書いてほしいところです。
Office関連の脆弱性: すでにいくつか取り上げましたが、まだ多くが残っています。Skype for BusinessとBookingsを含めると、Office関連のCVEは前述のものを含め139件です。内訳はRCEが100件、情報漏洩が29件、EoPが9件、セキュリティ機能のバイパスが1件で、「緊急」が35件、「重要」が104件です。特に注意すべきはOutlookです。CVSSスコア9.8の「緊急」のRCEが5件あります。5件とも、メールを閲覧ウィンドウで表示するだけで脆弱性が発動し、クリックも認証も必要ないとされています。Officeで最もワーム化に近い脆弱性です。Excelには69件あり、RCEが51件、情報漏洩が18件です。このうち19件のRCEはスコア8.8で「緊急」に分類されています(例:CVE-2026-100209)。大半は、ファイルを開くとシステムを侵害される種類です。Excelの4件ではプレビューウィンドウが攻撃経路として記載されています。CVE-2026-70254と88145はRCE(8.8)、88154と88175は情報漏洩です。Wordはさらに22件あり、RCEと情報漏洩の大半でプレビューウィンドウが攻撃経路とされています。残りはEoPとセキュリティ機能のバイパスです。AccessにはRCEが12件と情報漏洩が1件あり、Visioにはファイルを開くと侵害される「緊急」のRCEが3件あります。PowerPointでは、「緊急」のRCEが3件あり、いずれもプレビューウィンドウが攻撃経路です。そのほかに情報漏洩が4件あります。
DNSおよびDNS Serverの脆弱性: Windows DNSとDNS Serverには58件のCVEがあります。内訳はDNS Server(役割)が52件、Windows DNSが6件です。58件すべてが「重要」で、CVSSスコア9.8のRCE「CVE-2026-96113」も含まれます。アドバイザリには、認証されていない攻撃者がネットワーク経由でコードを実行できると説明されているものがほかにもいくつかありますが、ワーム化可能と判断する際の定型表現とは一致しません。このうち4件は信頼できないポインタの参照、1件は型の取り違えに起因します。最も多いのは情報漏洩で、31件あります。改ざんが5件、セキュリティ機能のバイパスが1件ありますが、いずれも認証が必要です。
Windows KernelおよびWin32kサブシステム: 異論はあるでしょうが、ここではまとめて扱います。カーネルとWin32kコンポーネントの違いは理解していますが、十分に似ているためです。Windows KernelおよびWin32Kコンポーネントには94件のCVEがあります。内訳はWindows Kernelが46件、Win32 Kernel Subsystemが36件、Win32Kが8件、Win32K GRFXが3件、Win32K ICOMPが1件です。種類別では、特権昇格が71件、情報漏洩が20件、DoSが2件、セキュリティ機能のバイパスが1件です。予想どおり、大半はSYSTEM権限の取得につながります。情報漏洩では、主にメモリの一部が不規則に露出します。明らかに異質なのはCVE-2026-70111です。アドバイザリには、攻撃者が「ネットワーク経由で」特権を昇格すると記載されています。カーネルのEoPとしては珍しい攻撃経路です。
Windows DHCP ClientおよびServer: Windows DHCPには18件のCVEがあります。DHCP Serverが16件、DHCP Clientが2件です。ワーム化し得るものはすでに説明したため、ここでは繰り返しません。残る12件のDHCPの脆弱性のうち、2件は「緊急」です。CVE-2026-88171は、DHCP Serverにおける認証不要の二重解放で、ワーム化可能と判断する条件をわずかに満たしません。CVE-2026-70250は、隣接ネットワークからの攻撃を必要とするDHCP Clientの解放済みメモリの使用です。残りは、認証が必要なRCE、認証不要のDoSが2件、EoPが2件、セキュリティ機能のバイパスが2件です。Microsoftの評価で「悪用される可能性は低い」を上回るものはありません。
SharePoint Server: 前述した「緊急」の脆弱性以外にも、今月はSharePointに34件のCVEがあります。内訳はEoPが13件、なりすましが7件、RCEが7件、情報漏洩が6件、改ざんが1件です。残りはすべて「重要」です。7件のRCEはすべて認証を必要としますが、求められる権限は高くありません。CVE-2026-85900に必要なのはSite Member権限だけで、CVE-2026-88155、88163、88166はManage List権限で悪用できます。CVE-2026-105013と70267には必要な権限レベルの説明がないため、既定の権限で悪用できるものとして扱うべきです。脆弱性の種類はメモリ破損というより、Webアプリのペネトレーションテスト報告書のようです。EoPのうち7件は認可やアクセス制御の不備、さらに3件はSSRFに起因し、なりすましの大半は格納型スクリプトです。ほかに認証不要の脆弱性として、CVSSスコア8.1のなりすまし「CVE-2026-97783」があります。SharePointでは最近、「悪用される可能性は低い」とされた脆弱性が実際の攻撃で悪用される例があるため、認証が必要という理由だけでRCEを見過ごさないでください。
SQL ServerおよびClient: 前述したRCE以外にも、SQL Serverとクライアントツールには23件のCVEがあります。内訳はRCEが9件、EoPが7件、情報漏洩が4件、DoSが3件で、すべて「重要」です。共通するのは、認証を前提とするメモリ破損です。ヒープおよびスタックオーバーフロー、解放済みメモリの使用、範囲外読み取りなどが含まれます。典型的な流れは、ログイン後に細工したリクエストを送信し、メモリを破損させてサーバ上でコードを実行するというものです。攻撃者がすでにデータベースの認証情報を持っている必要があるため、CVSSスコア8.8の脆弱性も数字ほど脅威が大きいわけではありません。ただし、侵害後のラテラルムーブメントとしては典型的な手法です。異質なのはCVE-2026-103572で、データベース自体の脆弱性ではありません。SQL Server Management Studioで、Copilotを介したプロンプトインジェクションがコード実行につながります。管理者向けツールにもAI機能が徐々に入り込むにつれて、この種の脆弱性は増えると予想します。
Windows Installer: まだ取り上げていないコンポーネントではWindows Installerが最多で、38件のCVEがあります。内訳はEoPが35件、情報漏洩が3件です。すべてローカルの脆弱性で、深刻度は「重要」、CVSSスコアは7.8以下です。35件のEoPのうち34件はSYSTEM権限の取得につながります。脆弱性の種類は、よくあるメモリ安全性の問題です。解放済みメモリの使用が20件で最も多く、ヒープオーバーフローが6件、スタックオーバーフローが3件と続きます。Installerでは毎月見られる傾向で、すでに足がかりを得た攻撃者が修復やロールバックの処理を悪用してSYSTEM権限を取得します。個々の脆弱性が大きく報道されることはないでしょうが、ランサムウェア攻撃者がフィッシングでユーザを侵害した後に組み合わせる典型的な手法です。見過ごさないでください。
Windows NTFS: 今月のNTFSには26件のCVEがあります。内訳はEoPが16件、情報漏洩が6件、RCEが4件です。すべて「重要」で、CVSSスコアは7.8以下、26件中21件はローカルの脆弱性です。EoPはいずれもSYSTEM権限の取得につながります。そのうちCVE-2026-96217、96916、96918、96928、96931の5件は、サンドボックス化されたプロセスが作成するリパースポイントに起因するサンドボックス脱出です。侵害されたブラウザやアプリのサンドボックスから抜け出すために悪用される可能性があります。4件のRCEはいずれも権限を持つローカルの攻撃者を前提とするため、実質的には手順の多いEoPに近く、真のリモート攻撃とは言いにくいものです。残りはすべてメモリ破損で、範囲外読み取りが最も多く、解放済みメモリの使用とヒープオーバーフローが続きます。
Remote DesktopおよびRemote Access: Remote Desktopの各コンポーネントには30件のCVEがあります。内訳はRCEが22件、情報漏洩が4件、EoPが2件、DoSが1件、セキュリティ機能のバイパスが1件です。「緊急」は、ワーム化し得る脆弱性としてすでに取り上げたRemote Desktop GatewayのCVE-2026-70187だけです。Remote Desktop Clientには19件あり、そのうち18件がRCEで、ほぼすべてが解放済みメモリの使用に起因します。通常とは攻撃の向きが逆で、攻撃者はユーザを不正なサーバに接続させる必要があるため、ソーシャルエンジニアリングを伴います。Gatewayには、3件のワーム化し得るRCEのほかに、DoS(CVE-2026-70033)と情報漏洩(CVE-2026-84007)があります。Windows Remote Desktop Protocolには、SYSTEM権限の取得につながる2件のEoP「CVE-2026-83861」と「CVE-2026-96322」があります。RRASにはさらに13件あり、4件がRCEです。そのうち2件は、CVSSスコア9.8でワーム化し得る脆弱性です。
Hyper-V Server: Hyper-Vには18件のCVEがあります。内訳はEoPが7件、RCEが4件、DoS、情報漏洩、セキュリティ機能のバイパスが各2件、なりすましが1件です。CVE-2026-102214と105733は、CVSSスコア8.8で「緊急」のRCEです。前者は典型的なゲストからホストへの攻撃で、ゲスト上の認証されたユーザが細工したアプリを実行すると、ホスト上でコードを実行できる可能性があります。マルチテナントのホストや共有仮想化環境を運用する組織にとって、特に重要な攻撃シナリオです。CVE-2026-83716と83931もゲストから発動できるRCEで、スコアはそれぞれ8.8と7.8です。新たに追加されたCVE-2026-108399は、スコア7.2で「緊急」のEoPです。そのほか、CVE-2026-85369はスコア8.2のEoP、CVE-2026-87705は隣接ネットワークから認証なしで悪用できるスコア7.4のセキュリティ機能のバイパスです。悪用可能性は、1件の「悪用される可能性は極めて低い」を除き、すべて「悪用される可能性は低い」と評価されています。それでも、機密性の高いワークロードを処理するHyper-Vホストには、事前にテストしたうえでパッチを適用してください。
ほかにも、簡単に触れておくべき脆弱性があります。Windows Message Queuingには、CVSSスコア9.8で「緊急」の解放済みメモリの使用「CVE-2026-100202」があり、細工したメッセージによってリモートからコードを実行できる可能性があります。ただし、MSMQは既定では有効になっていません。VBS Enclaveの5件も「緊急」で、ローカルの攻撃者がSYSTEM権限を取得できる可能性があります。Imaging Component、libarchive、Media Player、iSCSIにあるスコア9.8のRCEは、ネットワーク内からの攻撃を必要とします。リリースに新たに追加されたものとして、Windows PDF(CVE-2026-108457)、PostScript Printer Driver(CVE-2026-108467)、HEVC Video Extensions(CVE-2026-108400)の「緊急」のRCEと、AD FSの「緊急」のなりすまし「CVE-2026-108131」があります。ExchangeのXSS(CVE-2026-70279)と、VS Codeでプロジェクトを開く際に発動するRCE(CVE-2026-102238)も、スコアの高い脆弱性として挙げられます。
残る約850件の修正は、主に優先度が比較的低いローカルEoP、情報漏洩、サービス拒否の脆弱性です。Windows Search、.NETおよびASP.NET Core、Windows Error Reporting、Broadcast DVR、UDFS、Overlay Filter Driver、AD FS、WebDAV、DWMなどに分散しています。Partner Center、Azure App Service、Dataverse、Azure SRE Agent、API Center、Bookings、Event Gridの7件のクラウド側の修正は「緊急」ですが、利用者による対応は必要ありません。
今月、新しいアドバイザリの公開はありません。
次回の予定
次回のPatch Tuesdayは11月10日です。リリースの規模がどれほど大きくても、あるいは小さくても、次回も必要な情報を見極め、できる限り詳しくお伝えします。それまで安全にお過ごしいただき、パッチ適用を着実に進めてください。再起動もすべて、滞りなく終わることを願っています。
参考記事
The October 2026 Security Update Review
By: Dustin Childs, Zero Day Initiative
翻訳:与那城 務(Platform Marketing, TrendAI Research)