Cyber Risk
国家サイバー戦略の実現を支援する:TrendAI™が果たす役割
本稿では、国家サイバー戦略の3つの柱を詳しく取り上げ、政府機関による戦略の安全な実行をTrendAI™の各種機能がどのように支援するかを解説します。
前回のブログ記事(英語)では、ホワイトハウスの国家サイバー長官室(ONCD)が発表した国家サイバー戦略(英語)の最初の3つの柱を掘り下げ、この戦略の実現に取り組む政府機関をTrendAI™がどのように直接支援するかを解説しました。今回はその続きとして、第4、第5、第6の柱に焦点を当てます。これらの柱が扱うのは、重要インフラの保護、新興技術における米国のリーダーシップの維持、そして米国が長期的に必要とするサイバー人材の育成です。
この3つの柱は、現在のサイバーセキュリティにおいて最も影響の大きい長期的課題に関わるものです。重要インフラへの攻撃は加速しています。人工知能(AI)の導入は、セキュリティ対策が追いつかない速さで進んでいます。人材不足も解消に向かっていません。これらの課題への取り組みは極めて重要であり、TrendAI™はその支援において独自の強みを持っています。
第4の柱:重要インフラの保護
戦略では、エネルギー、金融サービス、通信、データセンター、水道、医療が、防御強化を優先すべきセクターとして挙げられています。
課題
これは机上の話ではありません。過去数年、これらのセクターへの攻撃は着実に激化してきました。2021年のColonial Pipelineに対するランサムウェア攻撃は、米国東海岸一帯の燃料供給を混乱させました。医療機関は、一刻も早く業務を復旧させなければ人命に関わるという切迫した事情を熟知するランサムウェア集団に、繰り返し狙われています。フロリダ州などで発生した水処理施設への攻撃は、小規模な公益事業者であっても標的となり、公共の安全に重大な影響が及びうることを示しました。
戦略はまた、サプライチェーンの安全を確保し、可能であれば敵対国家に狙われている製品やベンダーから脱却する必要性を強調しています。これは、SolarWinds攻撃から、国家支援の攻撃者によるものとされる通信インフラへのバックドア設置まで、ハードウェアおよびソフトウェアのサプライチェーン侵害が長年にわたって報告されてきたことへの直接的な対応です。リスクは現実のものであり、影響範囲は広く、対応を誤った場合の被害は個々の組織にとどまりません。
事態をさらに複雑にしているのが、情報技術(IT)と制御技術(OT)のネットワークの融合です。かつては隔離された環境で稼働していた産業制御システム(ICS)や監視制御・データ収集(SCADA)環境が、今では企業ネットワークに、さらにはインターネットにも接続されつつあります。この接続性は効率と可視性をもたらす一方で、アタックサーフェスを大幅に拡大させています。
TrendAI™による支援
OT・ICSセキュリティ: TrendAI™は、OT環境の保護(英語)に関する深い専門知識を有しています。当社の産業用ネットワークセキュリティソリューションは、ICS・SCADAネットワークをパッシブかつ業務を妨げない形で監視し、運用プロセスに影響を与えることなく、資産、通信、異常な挙動を可視化します。容易にパッチ適用や置き換えができないレガシー制御システムを運用する重要インフラ事業者にとって、こうしたパッシブな検知能力は不可欠です。IT環境からOTへ脅威が広がる前にネットワークレベルで特定し、エネルギー、水道、製造業を支える物理プロセスを保護します。
TrendAI™ Zero Day Initiative™(ZDI)とICS脆弱性リサーチ: 世界最大のベンダー非依存型バグバウンティプログラムであるTrendAI™ ZDIは、ICS・SCADAの脆弱性も報奨金の対象としています。長年にわたり、産業制御ソフトウェアおよびハードウェアの重大な脆弱性を数百件発見し、責任ある形で開示することで、攻撃者が重要インフラの侵害に利用しうる手段を奪ってきました。この予防的なリサーチは、攻撃者が既知の弱点を悪用する前にこれらのセクターの防御を固めるという戦略の目標に直接貢献するものです。
医療セキュリティ: 医療は、今日の脅威情勢において最も狙われやすいセクターの一つです。その理由は明白で、機微な患者データ、生命に関わるシステム、そして歴史的に資金不足に陥りがちなセキュリティ体制の組み合わせが、攻撃者にとって格好の標的となっているからです。TrendAI™は、コネクテッド医療機器や臨床用ワークステーションから、病院ネットワーク、クラウドホスト型の電子カルテ(EHR)システムまで、医療分野のアタックサーフェス全体を包括的に保護します。XDR(Extended Detection and Response)機能は、小規模でリソースの限られることが多い医療機関のセキュリティチームが、患者ケアに支障が出る前に脅威を特定し封じ込めることを支援します。
サプライチェーンリスク管理: サプライチェーンは、高度な攻撃者にとって好まれる攻撃経路になりつつあります。当社の脅威インテリジェンス機能は、テクノロジーベンダーのリスクプロファイルを評価し、エンドポイント、ネットワークトラフィック、クラウド環境にまたがるサプライチェーン侵害の兆候を特定するのに役立ちます。ソフトウェア開発パイプラインやマネージドサービスプロバイダーを狙う攻撃キャンペーンを追跡することで、重要インフラ事業者が情報に基づいた調達判断を下し、信頼された第三者を経由して侵入する脅威を検知するために必要なコンテキストを提供します。
重要インフラ向けクラウドセキュリティ: 重要インフラ事業者がクラウド環境へワークロードを移行するなか、TrendAI™は、2025 Defenders Survey Report(英語)で詳述しているとおり、安全な移行に必要なセキュリティ機能を提供します。クラウドワークロード保護およびクラウドセキュリティポスチャ管理のソリューションは、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platformにわたる継続的な保護を実現し、クラウドへの移行が新たな死角を生まないようにします。規制対象のセクターに対しては、FedRAMP認定ソリューションにより、連邦政府のコンプライアンス要件を満たすクラウド導入の道筋を提供します。
第5の柱:重要・新興技術における優位性の維持
戦略の第5の柱は、AIと量子コンピューティングにおける米国のリーダーシップを、国家安全保障の中心課題に位置づけています。
課題
このアプローチは極めて理にかなっています。これらの技術がそれ自体として戦略的に重要だから、というだけではありません。現実に、敵対者はすでにAIを武器化しています。かつてないほど説得力があり、標的ごとに作り込まれたAI生成のフィッシングコンテンツが確認されています。また、攻撃者がAIツールを使って偵察を自動化し、脆弱性の発見を加速させ、数年前ならチーム全体を要したはずの規模でソーシャルエンジニアリングキャンペーンを展開する様子も確認されています。
同時に、官民両セクターにおけるAIの急速な導入は、大半の組織がまだ守る備えのできていない新たなアタックサーフェスを生み出しています。生成AI(GenAI)モデル(英語)、AIのアプリケーションプログラミングインターフェース(API)、モデル学習パイプライン、ベクトルデータベース、AIエージェント、検索拡張生成(RAG)システムは、いずれも新種のセキュリティリスクをもたらします。プロンプトインジェクション攻撃、モデルポイズニング、AIアシスタント経由の機微なデータの持ち出しは、5年前には存在しなかった脅威カテゴリですが、今や現実の懸念となっています。
量子コンピューティングは、これとは別の、しかし同じく深刻な問題をもたらします。今日、事実上すべてのデジタル通信を守っている暗号基盤は、十分に強力な量子コンピュータに対して脆弱です。暗号解読が可能な水準の量子システムはまだ実用化されていませんが、実現までの時間は短くなりつつあります。敵対者は、量子計算能力が手に入った時点で復号することを見越して、暗号化されたデータを今のうちから収集しているとみられます。この「今収集し、後で復号する(harvest now, decrypt later)」という戦略があるため、耐量子計算機暗号(PQC)(英語)への移行は将来の検討事項ではなく、喫緊の優先課題となっています。
TrendAI™による支援
AIスタックの保護: TrendAI™は、AIシステムの保護の理解と実践に多大な投資を行ってきました。TrendAI Vision One™ AI Securityソリューションは、AI導入のライフサイクル全体に対応します。学習データとモデルインフラを保護するとともに、本番環境のAIアプリケーションを監視して、敵対的な入力や異常な出力を検知します。組織が自らのAIシステムの動作、アクセスしているデータ、操作を受けやすい箇所を把握できるよう支援します。連邦政府機関や重要インフラ事業者がAI導入を加速させるなか、このようなセキュリティを最優先するAI導入アプローチは不可欠です。
プロアクティブAIによるAIネイティブな脅威防御: 当社は、他者が利用するAIシステムを保護するだけではありません。自社プラットフォームの中核にAIを組み込むことで、防御側にできることを本質的に変えています。プロアクティブなサイバーセキュリティAIにより、TrendAI™は事後対応型の検知にとどまらず、脅威が現実になる前に先回りします。攻撃パターン、攻撃者の挙動、環境のコンテキストを継続的に分析してリスクを特定し、自律的な保護アクションを実行します。戦略が掲げるAIを活用した防御ツール(英語)の導入を検討する政府機関にとって、これはレガシーセキュリティ製品の上にAIレイヤーを載せるだけの手法とは根本的に異なるモデルです。
AIガバナンスとコンプライアンス支援: 戦略は、セキュアなAI技術スタックの推進と、責任あるイノベーションの確保を求めています。当社はAIガバナンスの領域に積極的に関与しており、業界ワーキンググループへの参加、AIセキュリティ標準への貢献、プラットフォームへのコンプライアンス監視機能の組み込みを進めています。TrendAI Vision One™ AI Securityソリューションは、組織内のあらゆる生成AIサービス、ユーザ、やり取りに対する可視性と制御を提供します。これにより、政府機関は適切な利用ポリシーを実施し、機微なデータが未承認のAIシステムへ流出するのを防げます。
PQCへの備え: 当社は、米国国立標準技術研究所(NIST)の耐量子計算機暗号標準を注視し、PQCへの対応を製品ロードマップに組み込んでいます。当社プラットフォームを利用する政府機関が、移行期間中にセキュリティギャップを生じさせることなく、量子コンピュータに対して脆弱な暗号アルゴリズムからの移行を実行できるようにする、というのが当社のコミットメントです。当社のガイダンスとツールは、現在の暗号利用状況の棚卸し、最もリスクの高いシステムの優先順位づけ、そして連邦政府の要請に沿った耐量子アルゴリズムへの計画的な移行を支援します。
米国の技術リーダーシップへの貢献: TrendAI™は、重要技術における米国のリーダーシップ維持という戦略目標の支援に深くコミットしています。当社のリサーチチームは、脆弱性の開示、脅威インテリジェンスの共有、リサーチの公開を通じてオープンなセキュリティコミュニティに貢献し、新たな脅威に対する共通理解を深めています。また、サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁(CISA)や国家安全保障局(NSA)をはじめとする連邦政府のパートナーと積極的に連携し、当社の機能が国家の優先課題と整合するよう努めています。こうしたパートナーシップを通じて、当社の脅威インテリジェンスは政府の防御活動に活かされています。
第6の柱:サイバー人材と対応能力の育成
サイバー人材への需要が高止まりするなか、米国は人材ギャップへの対応の必要性を認識しています。
課題
サイバーセキュリティ人材の不足は、この業界で最も根深く、解決が難しい課題の一つです。ISC2 Cybersecurity Workforce Study(英語)によれば、世界全体で約480万のサイバーセキュリティ職が埋まっておらず、そのうち米国が相当な割合を占めています。この課題は、この分野に入る人の数を増やすだけでは解決しません(それも重要ではありますが)。より本質的なのはスキルの問題です。脅威情勢の変化があまりに速いため、経験豊富な実務者であっても知識を広げ続けなければなりません。多くの組織が、最新のセキュリティツールを効果的に運用できる人材の獲得と定着に苦慮しています。
戦略が提案する米国サイバーアカデミー(U.S. Cyber Academy)は、訓練を妨げる不要な規制の撤廃や、サイバースタートアップを支援するベンチャーキャピタル・インキュベーターの創設と併せて、この課題への対応には複数のレベルでの行動が必要だという認識を反映したものです。私はこの方向性を全面的に支持します。セキュリティ専門人材の需要と供給のギャップは、現実の被害につながります。この業界で30年近く働き、数多くの組織と関わるなかで、私はその影響を目の当たりにしてきました。
この課題には、あまり語られることのない側面もあります。今日のセキュリティツール環境の複雑さです。多くのセキュリティオペレーションセンター(SOC)チームは、単に人手が足りないだけでなく、業務量に圧倒されています。平均的な企業のセキュリティチームは、数十のポイントソリューションを管理し、毎日数千件のアラートを処理し、本来自動化できるはずの手作業に膨大な時間を費やしています。破綻したワークフローに人を増やしても、問題は解決しません。
TrendAI™による支援
アナリストの力を増幅するAI: 人材不足への最も直接的な対応は、一人ひとりのセキュリティアナリストの力を大幅に高めることです。TrendAI Companion™ AIアシスタントを使えば、アナリストは平易な言葉のクエリで複雑な脅威を調査でき、個々のテレメトリソースに関する深い専門知識がなくても、アタックサーフェス全体から関連するコンテキストを引き出せます。アラートの自動相関分析、攻撃チェーンの要約、AIによる対応の推奨は、SOCチームの手作業の負荷を大幅に軽減します。これにより、小規模なチームでも、これまで潤沢なリソースを持つ大規模組織にしかできなかったレベルの運用が可能になります。これは人間のアナリストを置き換える話ではなく、アナリストを疲弊させ、この分野から去らせてしまう摩擦を取り除く取り組みです。
学習コストを下げるシンプルなプラットフォーム: プラットフォームの統合も、人材問題への意義ある貢献です。数十のポイントソリューションを単一の統合プラットフォームに置き換えられれば、政府機関はトレーニングの負担を減らし、運用をシンプルにできます。アナリストも、多数のツールに浅く触れるのではなく、一つの環境で深い専門性を磨けるようになります。TrendAI Vision One™(英語)プラットフォームは、まさにそのために設計されています。エンドポイント、ネットワーク、メール、クラウド、AI、アイデンティティの各セキュリティを一貫したインターフェースで提供し、共通の脅威インテリジェンスと統一されたデータモデルがそれを支えます。これにより、オンボーディングは速く、アナリストの育成は体系的に、インシデント対応は一貫したものになります。
トレーニング資産としての脅威インテリジェンス: 当社が公開しているリサーチ、脅威ブリーフィング、定期的な脅威インテリジェンスコンテンツは、個別の検知に役立つだけでなく、教育的な機能も果たしています。アナリストは、標的型攻撃(APT)キャンペーンに関するTrendAI™の詳細な分析を読むことで、攻撃者の思考、使われるツール、防御側が取るべき対応を学んでいます。こうした脅威情報に基づく教育は、実務レベルのスキルを育てる最も効果的な方法の一つです。当社は今後も、セキュリティコミュニティ全体の公共財としてリサーチを公開し続けます。
政府のトレーニング・人材育成施策への支援: 当社は、CISAのサイバーセキュリティ人材育成プログラムをはじめとする政府主導の人材育成施策を積極的に支援しており、米国サイバーアカデミーや関連施策が具体化する際には、協力をさらに深める用意があります。政府による次世代のサイバー防御人材の育成を支援することは、民間セクターの責務であると同時に、民間セクター自身の利益にもつながると考えています。TrendAI™は、専門知識、ツール、脅威インテリジェンスをこうした取り組みに提供していきます。
今後の展望
国家サイバー戦略の第4、第5、第6の柱は、全体として根源的な問いに向き合うものです。最も重大なリスクはどこにあるのか。今後10年のセキュリティを規定する技術は何か。そして、来るべき脅威に立ち向かう人材と体制は整っているのか。いずれも容易な問題ではなく、単独で解決できる組織はありません。TrendAI™は、この戦略の実践に取り組む政府機関にとって、意義あるパートナーとなれる立場にあります。
参考記事
Supporting the National Cyber Strategy Part 2: How TrendAI™ Helps
By Jon Clay, Vice President, Threat Intelligence · TrendAI™
翻訳:与那城 務(Platform Marketing, TrendAI Research)