Artificial Intelligence (AI)
AI導入に伴って出現するエンドポイント・リスク
AIの導入に伴い、エンドポイントは人、機密情報、AIが交錯する場となります。非承認AIを含むリスクに対処するには、可視化、事象分析、レジリエンス強化の対策が必要です。
- AI時代の到来により、エンドポイントの安全確保に向けた取り組みがかつてないほど重要になっています。今こそ、組織のエンドポイントセキュリティを抜本的に見直すタイミングと考えられます。
- 現代のエンドポイントは、ただのデバイスではありません。人間、認証情報、データ、AIツールのすべてが交差する場であり、重要な監視対象とみなせます。
- 従業員が会社に無断で使う「シャドーAI」と、攻撃者が詐欺活動などに悪用するAIの双方が、侵害のリスクに繋がります。
- AIが悪用される現代の脅威に対抗する上では、エンドポイントセキュリティにおける「可視化」、「事象間の関連付け」、「レジリエンス強化」という3つの課題を解決することが重要です。
はじめに
2026年も半ばを迎え、「AI導入の速度」と「セキュリティ強化の速度」の差が、ある場所で明確に現れ始めています。それは、「エンドポイント(従業員のPCやスマホをはじめとする端末)」です。この認識についてはまだ、セキュリティ担当者の間で十分に共有されていないように見受けられます。
2026年度のセキュリティ分野で最も注視すべき動向は、ランサムウェアの巧妙化でも、フィッシング詐欺の迅速化でもありません。もちろん、それらも事実ですが、本当に深刻な問題は、もっと静かに企業や組織のすぐ足元で生じているのです。
現在、多くの企業が何らかの形でAI導入を進めています。その取り組みにおいて、組織は特定のAIエージェントやコパイロット、AI開発ツール、社内専用の大規模言語モデル(LLM)を戦略的に導入し、統制、管理しています。しかし実際には、「管理外」にあるものも、多く利用されています。たとえば従業員が先週ダウンロードしたばかりのAIチャットボットに顧客データを貼り付ける、マーケティングチームがIT部門に無断でAIエージェントを設定する、開発者がセキュリティ審査を待たずにAI任せのアプリを次々リリースする、といったケースが挙げられます。こうした企業の把握していないAI(本稿では「シャドーAI」と呼ぶ)は、未来のリスクではなく、すでに組織の端末内で、実際に動いているのです。
同時に、サイバー犯罪者をはじめとする攻撃者も、独自にAIを導入し始めています。AIの特異な能力により、最高財務責任者(CFO)などの経営幹部に扮した巧妙なフィッシングメッセージを自動作成し、低コストで迅速に送りつけることが可能になっています。また、実在する人物の「声」をAIで複製し、ヘルプデスクの「本人確認」を突破した事例も報告されています。かつて高度な専門知識が求められた「認証情報の悪用による侵入活動」も、今では自動化が進んでいます。さらに、組織が自身で環境内に導入したAIエージェントも、それ自体が広範なAPIキーや長期間有効なシークレットを保持し、機密データにもアクセスできるため、「価値の高い攻撃目標」として狙われ始めています。
こうした脅威のすべてが、今では一つの場所に集まっています。それが、「エンドポイント」です。
エンドポイント:もはや単なる「端末」ではない
ここ数年にわたり、セキュリティチームの間で「エンドポイント・セキュリティ」と言えば、「定番の対策がすでに確立された分野」と見なされる傾向にありました。「EDR(エンドポイントでの検知・対応)」の技術が成熟し、「MDR(それを外部から監視・運用)」のサービスも広く普及したためです。結果、予算は新しい分野に回されるようになり、多くの組織内でエンドポイントは「優先的に見直すべき対象」から外され、「現状維持で管理するもの」と見られるようになりました。
しかし、2026年現在、その前提は根底から覆されています。脅威の情勢が大きく変化しているためです。
AIを活用する企業内の「エンドポイント」では、以下の4要素が複雑に交錯しています。
- 利用者
- 利用者の識別情報(認証情報など)
- 利用者がアクセスするデータ
- 利用者が動かすAIツール
これらのすべてが集まることで、エンドポイントは、AI不正利用の重要な監視対象となります。反面、エンドポイントセキュリティをただのルーチン化した管理作業と見なし、「対策済み」のチェック欄を埋める程度のものと捉えるならば、実態の見えない危険なブラックボックスに様変わりします。
また、TrendAI™の最新レポート「AI化されるサイバー脅威:トレンドマイクロが予測する2026年のセキュリティ動向」で述べた通り、エンドポイントそのものも、攻撃の標的になっています。2026年現在、攻撃者が標的ネットワークに長く潜伏する手段として、「EDR無効化」の手口が横行しています。守る側の「目」であるEDR自体が狙われている中、エンドポイントを完全個別で動かし、単独の管理画面だけでバラバラに運用するという「古い習慣」は、通用しません。これからのエンドポイントは、より大きなセキュリティ監視体制の中に組み込んで管理していく必要があります。そうすることで、仮にあるエンドポイントでEDRが無効化されたとしても、それを「気づかれない失敗」で終わらせることなく、「異常警報」としてシステム全体で検知することが可能です。
セキュリティチームが答えるべき「3つの問い」
もし今年、エンドポイントのセキュリティ体制に関する見直しを検討中の場合、従来の「EDR評価基準(チェックリスト)」だけでは不十分です。代わりとして、以下に示す「3つの問い」が、現実に即した有意義な評価基準になります。
- エンドポイント上での「AIの動き」を可視化できているか?:不審なプログラムやバイナリファイルをブロックするだけでは不十分です。加えて、「AIツールやブラウザ型コパイロット、承認済み/非承認AIエージェントの利用状況」、「それらを利用する際に、端末からどのようなデータが送られているか」を把握する必要があります。「プロキシでフィルタリングしているから安全」ということにはなりません。それではアクセス先URLが見えているだけで、具体的な行動を把握できないためです。
- エンドポイント上での出来事を「認証情報(誰が)」や「データ(何を)」と紐づけられるか?:「1台のノートPC上でアラートが出た」というだけでは、気がかりな事象の断片に過ぎません。そうではなく、「普段と違う地域からのログインがあり、機密ファイルへのアクセスが行われ、長期間有効なAPIキーを通してAIエージェントが呼び出された」となれば、明確なセキュリティインシデントとして分析することが可能です。こうした一連の細かなイベント群を紐づけ、全体像を浮かび上がらせることが重要です。
- エンドポイントの防衛手段として「AI」を活用し、攻撃者によるAI悪用の速度に追従できるか?:実態として、攻撃者と防御者の間には「不均衡」が存在します。従来のシグネチャに頼った防御方法では、AIで増幅された攻撃者のスピードについていけない可能性があります。そして、今やEDR自体も攻撃目標として狙われています。レジリエンス(回復力)は「想定する」のではなく、「設計して実装する」ことが重要です。
多くのセキュリティチームが、これら3つのうち「1つ」には答えられますが、すべてに答えることは難しいでしょう。こうした「理想と現実のギャップ」こそが、2026年に直面しているエンドポイント・セキュリティの重要課題です。そして、セキュリティプラットフォーム「TrendAI Vision One™」は、まさにそうした課題を解決する設計となっています。
「TrendAI Vision One™」による解決策
「TrendAI Vision One™」は、2026年に求められるアプローチを軸に、エンドポイントを分析します。つまり、エンドポイントをただの独立した一装置と見なすのではなく、「ユーザ行動・挙動情報」の重要な情報源と位置づけており、それをメールやクラウド、ネットワーク、モバイル、識別情報、OT(Operational Technology:運用技術)、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)に至る広範なデータとリアルタイムに紐づけ、分析します。また、脅威の検知・調査・対応に及ぶ全プロセスで、AI技術を搭載しています。
「TrendAI Vision One™」が現代型の巧妙な脅威に対抗できる理由を、以下に示します。
- セキュリティ担当者に配慮した「単一プラットフォーム」:現代のビジネスでは、クラウドや社内サーバ、レガシーシステム、主要ネットワークから切り離されたOT制御機器など、あらゆる環境が混在しています。「TrendAI Vision One™」は、これらすべての環境に対して一貫した保護、EDR、セキュリティ無効化防止の機能を提供します。これらをひとつのポリシーで一元的に管理するため、端末のログが孤立(サイロ化)し、その合間に攻撃者が別システムに侵入するなどの事態を防ぎます。解析チームでは、ひとつの画面で攻撃の全体像を把握し、そこで優先課題の選定や対応、定型業務の自動化までを完結できます。本プラットフォームの目的は、専任者をAIに置き換えることではありません。バラバラの画面を行き来する時間をなくし、専任者が本来の業務に集中できるようにすることです。
- 進化し続けるインテリジェンス:「TrendAI Vision One™」による脅威検知の技術は、35年以上にわたる研究実績に加え、世界最大の脆弱性発見プログラム「TrendAI™ Zero Day Initiative(ZDI)」の知見に支えられています。「TrendAI™ ZDI」は、メーカーが脆弱性パッチを公開するより「最大96日前」の時点でお客様を保護し、攻撃者に狙われる隙を遮断します。こうした取り組みを通して得られた知見は、AIを駆使した検知や分析にも活用されており、攻撃者が触れる全領域で効力を発揮します。
- リスクのスコア化と攻撃ルートの予測:単に「アラートを鳴らす」だけではありません。「TrendAI Vision One™」による「Cyber Risk Exposure Management(CREM)」の機能により、システムの弱点や設定ミス、認証情報漏洩のリスク、管理外資産などを、影響度や悪用のしやすさに応じて継続的にスコア化し、どこから対処すべきかを明示します。また、「攻撃ルート予測」の仕組みにより、攻撃者がそうした弱点をどのようにつなぎ合わせて機密データにたどり着くかを予測し、先回りして封鎖できます。さらに「Extended Detection and Response(XDR)」により、検知と対応が同じ領域内に統合されます。これらの全てを合わせることで、「危険領域を予測して削減」→「すり抜けてきた脅威を検知して対応」→「得られた教訓を次のリスク予測に活用」という防衛サイクルを確立します。
エンドポイントセキュリティを現代の脅威に合わせて再構築すると、次のような効果が得られます。まず、収集するデータは単なる「点のアラート」を脱却し、「一連のユーザ行動/活動」に組み上がります。また、脅威の検知は「攻撃者のスピード」に合わせて実行できるようになります。結果としてセキュリティチームでは、ビジネスにおいて問われる難しい指摘や質問にも、自信を持って答えられるようになります。
未来を見据えて
2026年において考えるべきことは、「エンドポイントの戦略が、現実の環境に即して組まれているか」という点にあります。ここで言う「現実の環境」とは、人や認証情報、データ、AIエージェントが同じ端末(エンドポイント)内で交錯し、AIのスピードを得た攻撃者がその全域に及んで活動しうるという実態を指します。
セキュリティプラットフォーム「TrendAI Vision One™」は、まさにそうした環境を見据えて設計されており、単独の管理画面に閉じこもらないエンドポイント保護や、世界中の何百万に及ぶ保護端末から得たデータに基づく脅威検知を提供します。そして、単一製品という枠組みでは扱えなかった課題を、プラットフォームという大局的なアプローチによって解決します。
2026年の先を行くセキュリティチームは、もはやエンドポイント・ツールを単体では評価していません。より広い視点に立ち、セキュリティ戦略全体における「エンドポイントの位置づけ」を根本から見直し、同じ未来を見据えているベンダーと提携しているのです。
TrendAI™に対する業界アナリストの評価を、こちらからご参照いただけます。
セキュリティプラットフォーム「TrendAI Vision One™」の詳細について、こちらからご確認いただけます。
参考記事
The Hidden Risk in Your AI Rollout: Your Endpoints
By: Dereus Caldwell
翻訳:清水 浩平(Platform Marketing, Trend Micro™ Research)